京都市防災マップに関する京大防災研 林春男教授の講演 at GISコミュニティフォーラム | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

京都市防災マップに関する京大防災研 林春男教授の講演 at GISコミュニティフォーラム

今年もGISコミュニティフォーラムの講座をいくつか受講しました。

この林教授の基調講演はその目玉の一つ。

京都市の防災マップの生みの親とも言える林春男教授 、すっかりその筋ではおなじみですが、講演を聴いたのは初めてです。

12月の定例会で市のハザードマップに関する質問をする予定なので、参考にしようと参加したものです。

 

 

京都市の防災マップ は、既存の洪水ハザードマップと地盤災害ハザードマップ、地震ハザードマップを組み合わせ、さらに一工夫したものです。

前提として、国の洪水情報は一級河川に限定されており、その他の河川については独自に情報収集しなければならないというのが一つのポイントです。

それをやっているかどうかは市町村でまちまちのようですから、注意が必要です。

 

1.洪水マップの視点から

さて、まず洪水マップについて、この地図の特徴は3つの視点による4つの色分けがなされているということです。

一つは、予想される浸水の高さ50センチを境にした色分けです。50センチとは、床上浸水と床下浸水を分けるポイントであり、両者を比較すると、床上は床下の7倍の被害をもたらすと言われているそうです。

また、統計も50センチを境に分けられています。

ということで、この色分けは業界の基本的な分け方のようです。

ちなみに、水深33センチでクルマは走行不能になります。これは、コンピュータの浸水が起こるからです。また、水深が50センチあると、地面が完全に見えなくなります。その結果、歩行にも支障をきたします。

高知水害(1999年)では、マンホールの開口部に三人で並んで歩いていた女子高生の一人が転落して死亡するという事故があったそうです。

 

もう一つは水深が3メートル超かどうかという色分けです。これは2003年の新潟水害の教訓によるもので、これを超えると、木造住宅が流されたり倒壊したりするそうです。

 

また、もう一つ、上記に該当しないものの、古文書などの記録による水害の実績がある地域も別の色で示されています。(この視点は重要です。レーザープロファイリングでは計り知れない何かがあるのでしょうね。)

 

これらの観点から洪水対策面のマップを作ったわけですが、その中で活躍したのがP社の航空写真データであり、ここのレーザープロファイリングにより、一級河川以外の30以上の河川にかかる洪水のリスクを把握したそうです。

 

2.その他の視点から

そもそも京都市は1662年に動いた花折断層を意識した対策を検討していました。

しかし、そのリスクが小さいことがわかり、この面の検討は一段落しているそうです。

また、当然のことながら南海地震への対応は京都でも必要だという認識があるようで、その面からの検討もされています。

また、土石流、地滑りのリスクについても示されています。

 

3.広報戦略

これらのデータを集めた防災マップは三段階で配布されました。

・全市版の配布

まずは、全市版。ここで意識したのは危険を感知するという第一段階のポイントです。

これは、タブロイド版にして市民新聞に折り込みました。マップとしては最大の震災のケースと軽微な震災のケースに分け、「震災被害の抑止と軽減の視点+水災害の視点」という視点で作成されていました。想定の範囲内だということですが、ほとんどがあまり市民に活用されることもなく、ゴミ箱に直行したとされています。教授はこれを「コマセ(魚の撒き餌)」と表現しておられました。注意を惹くために配ったという趣旨です。

・各区版の配布

 

次が各区版でした。

これは、縮尺3万分の一に統一され、区ごとという単位で作成されていました。

そして、全市版と同様に折込で配布されました。

・冊子版の配布

 

次は冊子版です。冊子版はこれまでのマップを含んだ保存版として作成されました。

ここでは、「全体の水系を知ってもらう」「水位の変化の見方を知ってもらう」「雨の降り方と水位の関係を知ってもらう」などの工夫が凝らされていました。

具体的には豪雨のとき「地下街にいたら即刻逃げる」「50センチ浸水の地域なら家から出ない」「3メートル以上という地域なら、降雨の状況により、即刻避難」などの基準が示されています。

また、川があふれる以外に下水があふれるという可能性についても言及しています。

このように三段階にすることで、市民への着実な意識の浸透を図ったのです

 

4.その他

私が印象に残ったのは3メートル以上の深さで浸水する地域についての考え方です。まず、長期的にはここに住んでいいのかという問題があります。特に木造家屋に住むことは自殺行為かもしれません。

ということで、この基準により、土地利用の方向性を考えることができます。

次に、短期的な対応ですが、その地域の住民、特に木造家屋の住民は降雨時、早めの避難が必要だということがわかります。

このように、このマップにより、まちづくりの方向がある程度見えてきます。

もとより、このような深く沈む地域にずっと人を住ませておくことのリスクは計り知れません。

(土地が売れなくなるという意見があるかもしれませんが、人の命を優先すべきなのは言うまでもありません)

 

私も和光市の防災マップについて、京都市の防災マップの事例を参照しながら考察していきたいと思いました。

なお、続きがあるのですが、後日非公開記事として一旦アップしたいと思います。