情報を知る権利~会計の「重要性の原則」の知恵 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

情報を知る権利~会計の「重要性の原則」の知恵

会計には重要性の原則という大切な基本原則があります。

 

簡単に言うと、金額的にある程度以上重要か、あるいは質的にある程度以上重要な場合のみ、公表する財務諸表(決算書)への記載を義務付けられるというものです

 

会計に限らず、情報開示にはコストがかかります

 

②ある程度の情報が無いと赤の他人にはお金を託せない

一方で、ある程度の情報が開示されなければ、会社の株を買う気がしないでしょう。団体への寄付も同じです。

 

③細かすぎる情報は意味を持たない場合がある

また、あまりに細かい情報開示は、かえって情報の分析を困難にするという側面もあります。

 

重要性の原則は、開示コストと知る権利の確保のバランスを確保するものなのです。

 

④ディスクロージャー(情報開示)は不特定多数を相手にする場合の信頼関係を補完する

会社の株主について考えて見ましょう。株式を公開している企業はより詳細な情報開示が求められています。理由を考えてみましょう。公開企業の株主は、不特定多数の人々です。よって、株主と経営者には元々の信頼関係が一切ありません。その辺りに配慮しつつ、赤の他人を信頼させられる程度の情報こそが、情報開示の到達点なのです。

 

では、役所はどうでしょうか。

Tomiyaさんの『群馬ではたらく社長のブログ(笑』の記事「選挙=株主総会 ?」は経営者の問題意識でこのテーマに切り込んでいます。引用しましょう。

「政治に経営感覚を

 

というのは、私のひとつの意見です。

政治は公共性の高いもの、社会福祉政策なども含みますので、すべてを「経営と同じ感覚」では出来ないのだと思うのですが、大枠は「経営」に通じる部分はあると思います。

 

「首相は社長」で、「与党は取締役(会)」、「国会議員は社員」とは簡単に例えられないのが「経済界と政界の差」なのでしょうが、少なくともお客さんでもあり、株主でもある「国民」の利益を考えた「経営(政治)」を行ってくれる人たちを選出する「選挙」に今回行ってみて、なんだか「株主総会」みたいな印象を受けました。

 

このトピックについては、今後もいろいろと考えていこうと思っています。皆さんの意見もお聞かせいただけたら幸いです。」

いかがですか。

 

⑤資本主義と民主主義は双子の兄弟

実は、この株式会社と民主主義は双子の関係にあり、そういう意味で、Tomiyaさんの印象は的確だし、示唆に富んでいるのです。資本主義(市場)と民主主義は片方だけではなかなか上手く働かないのです。中国はその辺りをいろいろと工夫していますが、資本市場がこれ以上大きくなると、共産党支配は長くないかもしれません。

ちなみに、国会議員は社員というより、中身としては社外重役ですね。

 

⑥市民と株主の決定的な違い

ただ、市民と株主では決定的な違いがあります。

それは、経営上の秘密と、知る権利です。

経営上の秘密を守ることは、企業の競争力維持には欠かせません

一方で、役所の情報は、原則として、何を表に出しても経営上困ることはないはずです。困るのはプライバシー情報や入札の積算などに限られています。

基本は開示、例外は墨塗り、といったところでしょうか。

 

⑦開示コストの考え方

ただ、開示にコストがかかるのは会社も役所も同じです。墨塗りなんてものは本当に大変な作業です。一部の人の熱意の結果を他の人が金銭的に負担するのかどうか。その意味で、どこかで情報公開にも歯止めが必要なのではないか、そう思っています。あるいはコピー代10円と言わず本当にかかっているコストをご負担いただくか。

 

⑧説明責任と重要性の原則

説明責任について当ブログ「誰のための会計か 」で先日言及しました。この概念は、アカウンタビリティという英語です。

私は説明責任を果たすに当たって、重要性の原則への配慮は欠かせない思います。何でもかんでも知りたがる議員がいます。それは、市民への責任感から来る熱意かもしれません。しかし、それが行政本来の仕事を妨げるのであれば、ちょっと待て、と言いたくなります。

もっとも、その配慮のしかたは行政が内部で決めるものではない思います。

納税者が選んだ政治家が参加して決めるべきです