林道義『主婦の復権』 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

林道義『主婦の復権』

まじめなまじめな心理学者だった林教授。

『父性の復権』(中公新書)という衝撃的なこの著作で、フェミニズム、ジェンダーフリー思想と対決する闘士として生まれ変わりました。本書はその続編です。

主婦とは最も人間的な、進化した社会的な仕組みだ、というのがこの本の中心思想です。

そして、フェミニスト、「ジェンダーフリー」論者の変な論理に対して丁寧に反論していきます。いかに変かは本書を読めば納得できます。また、性的役割分担についての考察が厚いのも職業柄、なかなか役立ちます。

特に共感できたのは、男と女は後天的な(教育などにより得る)差異を取り除いてもかなり違う存在なんだよ、というところです。

違う存在だからこそ、「つがい」となって生きていくんですよね。両性は本質的に平等だけれども、同じような存在である必要はないと思います。でないと、異性を異性としてとらえる意味がないです。

本書では、情緒的な話もかなり織り込まれているのですが、フェミニストの学問的な浅さを突く、その鋭さはさすが「まじめな研究者」です。

私は日本のマルクス主義者、フェミニスト(両者には共通項が多い)には胡散臭さを感じています。本書を読んで、その感を強めるのですが、著者が論理的になったり、感情が前面に出たりという振幅がかなりある本なので、読み終えた感想はなかなか複雑です。非常に誠実で日本の将来を憂慮している立派な人」だが、フェミニストにからかわれてしまう、「隙」みたいなものが見て取れます。なにしろ、相手は斜に構えた人々です。

また、私が強く感じたのは情緒的に以下と同じような内容を語ってはいるのですが、本書に決定的に足りないものがあるということです。民主主義とは自分の自由のために相手の自由を認める我慢のプロセスであり、フェミニストにはその我慢を甘受しようという考えがないという指摘であり、批判であると思います。

ちなみに、民主主義の自由社会において、最も問題となるのは私人間の調整であると思います。林教授の根本には、現在ある家庭という社会機構はそれなりにいいものなんだよ、古いと攻撃してつぶされてしまってはかなわない、という良い意味での保守性が感じられます。

また、まじめに物事に取り組むことの清らかさ,さわやかさを私は林教授の活動から感じています。日本にはふまじめな、嘲笑的な人が多すぎます。