1月1日、午後。
彼はまた家の近くまで車で迎えに来てくれた。昨日と同じく助手席に座る。
「あけましておめでとうございます」
LINEでも伝えていたが、直接言えることが嬉しかった。

少し離れた神社へと向かい、初詣を済ませる。
このとき何を願ったのか、覚えていない。もしこの先も彼と一緒にいられることを願っていたのだとしたら、きっと神様はその願いを叶えてくれたのだろう。

それから新年の街を少し歩き、解散。
過ごした時間は決して長くはなかったが、2日連続で会えたことが嬉しかった。

そして翌々日の1月3日、俺が帰る日。
駅まで送って貰い、新幹線の時間まで彼とお茶をしていた。そこで彼は言った。
「今度は俺が遊びに行っても良いかな」
もちろんと俺は答えたが、正直社交辞令だと思っていた。自分に自信がなかったし、彼が自分に惚れるだなんて思えなかった。

彼に見送られ、新幹線に乗る。
ああ今回は楽しい帰省だったな、なんて思いながらの帰路。俺の中で彼のことは既に思い出になっていた。今思えばこれは自己防衛だったのかもしれない。

実はこのとき、失恋してから日が浅かったのだ。失恋というより、自分を恋愛対象として見てないなと悟っての不戦敗のようなものなのだが。
だから、また淡い希望を抱いて打ち砕かれるのを恐れていたのだと思う。

1月5日。
休みが終わり、日常に戻る。また一週間が始まる。
楽しかった連休とのギャップで憂鬱になりそうなものだが、今回は違った。理由は彼からのメッセージ。
「週末遊びに行っても良い?」

見たときは目を疑った。
本当に会いに来てくれるの?新幹線の距離を?
別れて1週間も経っていない今週末に?
何のために?他に何か用事があってそのついで?
たくさんの疑問符が頭に浮かびながらも、俺は「大丈夫」と返事した。

そして週末。
ここにきても半信半疑だったが、彼は本当に来たのだ。新幹線の距離を、長時間かけて車で。

本当に会いに来てくれたことが嬉しくてたまらなくなり、思わず抱きついてしまった。彼も抱きしめかえしてくれた。

家の近くのお気に入りの飲食店でご飯を食べた。
よく行く雑貨屋を見てまわった。
近所の有名なドライブスポットに出かけた。
家でテレビを見ながら一緒に笑った。
新しく歯ブラシを買って並べた。
狭いベッドでくっついて寝た。

実感した。俺はこの人が好きだ。
そしてきっと、彼も俺のことを好きでいてくれている。

どちらから告白したかは覚えていない。
もしかしたら告白らしい告白はしていないのかもしれない。

ただこの日、俺たちは確かに結ばれた。
俺に初めての彼氏ができた。遠距離恋愛が始まった。