ブログを書き進めるにあたって、まずは彼氏の話をしようと思う。

話は10年前の年末に遡る。
俺は全国転勤のある仕事をしているのだが、年末ということもあり地元に戻っていた。
そんなとき、当時少しやり取りをしていた友人から連絡が入る。
「31日、焼肉でも食いにいかん?」
特に予定もなかった俺は二つ返事で了承する。するとすぐさま返事が来る。
「友達ひとり連れて行って良い?最近知り合った人!」
多少困惑したものの、断る理由も見当たらず、こちらも了承する。

余談だが、この連絡をくれた友人とは、同年お盆の帰省中にアプリで出会った。双方友達募集としてリアルし、一度食事に行った。その後たまにやり取りはしていたが、実際に会うのはこの焼肉が2回目である。
そこに最近知り合った友達(あとで聞いたら彼らも2回目だったらしい)を連れてくるというのもなかなか距離感バグっている気もするが、今思えば感謝でしかない。

話を戻そう。
約束の日の昼頃、友人の運転で郊外の焼肉屋へ行った。そこで、友人の友人として、彼と出会う。
後に付き合うこととなる、トオルくん。当時30代半ば。比較的薄めの顔に、爽やかな短髪と筋肉質な身体。「あぁこれはモテるゲイだな」と思ったことを覚えている。
3人ともあまり人見知りしないタイプということもあってか、会話は弾んだ。初対面とは思えないほど、トオルくんとも和やかに話ができた。

一通り食べ終わり、店を出る。外は雪が降っていた。
行きと同様に友人の車に向かおうとすると、トオルくんが俺に声をかけてきた。
「帰りは俺が送って行こうか?」
戸惑う俺を友人が後押しし、俺はトオルくんの車に乗った。

街中へと車を走らせる。車中も和やかな会話は続いたが、お互い若干緊張していることが伝わる。
「まだ時間ある?」
彼は俺にそう聞くと、少し遠回りして帰ることを提案してきた。更に会話を重ねる。緊張は解けていたと思う。少し踏み込んだ会話もできていたから。

遠回りと言うには些か長過ぎるドライブが続く。そして彼が、タイミングを見計らったようにこう話しかけてくる。
「どこか別の場所でまったりしたいね」
食い気味に「俺もしたい」と答える。彼は「意味分かって言ってるよね?」と笑いながら聞いてきた。
当時俺は20代半ば。その確認は、一応の配慮だったのだろう。

それから俺達はホテルに入り、身体を重ねた。
全くゲイというのは話が早いものだと、我ながら思う。ただ、このとき俺は彼と付き合う未来など全く考えていなかった。
彼はきっと、引く手数多だろう。だからこそ、ワンナイトで終わると考えていたし、それで満足とも考えていた。

楽しい時間というものはあっという間だ。気付けばもう夜だった。
まだ一緒にいたい気持ちはあったが、今日は大晦日。実家で家族が待っている手前、帰らないわけにはいかなかった。

実家の近くまで送り届けて貰い、彼に別れと礼を告げる。いつかまた会えたら良いな、次夏に帰省したときに会えるかな、なんてことを考えながら。

そして時は少し進み、年が明ける。1月1日の0時少し過ぎ、スマホが震える。
「あけましておめでとう」
「明日、初詣に行かない?」