『これは相手のためか。』
『自分が良い人だと思いたいだけではないか。』
『一年後も助けになっているか。』
『私がいなくても続くか。』
サディク。
「面倒だ。」
マキ。
「智慧は面倒なんです。」
マタイが問う
翌朝。
「先生。」
「はい。」
「愛と智慧を、もっと簡単に言えないか。」
マキ。
少し。
考える。
「愛は。」
「苦しんでいる人へ近づく力。」
マタイ。
書く。
「智慧は。」
「近づいた後、何をすれば本当に助かるか考える力。」
シモン。
「愛だけなら?」
マキ。
「助けたい気持ちが暴走することがある。」
「智慧だけなら?」
マキ。
「正しく分析しても、誰も助けに行かないことがある。」
マタイ。
筆。
止まる。
三つ
マキ。
「愛が、人へ近づかせる。」
「智慧が、助け方を選ばせる。」
「慈悲が、その二つを苦しんでいる人へ向ける。」
マタイ。
大きく。
書く。
シモン。
「難しくなってきた。」
マキ。
「だから、いつか簡単にします。」
「いつ。」
マキ。
「まだ分かりません。」
でも種はできている
水。
半拍。
一行。
一手。
まだ。
ない。
でも。
そこ。
向かう。
考え。
積み。
重なる。
別れの日
サディク。
金。
袋。
三人。
渡す。
「旅費だ。」
シモン。
すぐ。
受け取ろう。
する。
マキ。
止める。
「多すぎます。」
シモン。
「何を言ってる。」
マタイ。
「旅には必要だ。」
サディク。
「無料だぞ。」
三人。
止まる。
そして。
全員。
笑う。
マキ
「では。」
必要。
分。
だけ。
取る。
残り。
返す。
サディク。
「全部持っていけばいい。」
マキ。
「無料は市場を壊しますから。」
サディク。
「もう言うな。」
最後の問い
サディク。
「マキ。」
「はい。」
「結局。」
「慈悲とは何だ。」
マキ。
村。
見る。
店。
開く。
畑。
耕す。
子。
食べる。
老人。
支えられる。
若者。
働く。
そして。
答える。
「苦しんでいる人を放っておかないこと。」
少し。
間。
「でも。」
「助け方まで考えること。」
さらに。
「そして。」
「自分がいなくても続く形を残すこと。」
サディク。
長く。
頷く。
三人、東へ
マタイ。
歩き。
ながら。
読む。
「愛には智慧がいる。」
次。
「慈悲には境界がいる。」
次。
「善意は、結果を免罪しない。」
そして。
「支援は、自分がいなくても続く形へ。」
シモン。
「最後のは役人みたいだ。」
マキ。
「でも大切です。」
西と東
マキ。
歩く。
西。
学んだ。
愛。
東。
学び。
始めた。
智慧。
二つ。
別。
では。
ない。
愛。
だけ。
では。
暴走。
する。
智慧。
だけ。
では。
冷たく。
なる。
だから。
両方。
いる。
マキ
小さく。
「愛だけでは足りない。」
シモン。
「冷たいな。」
マキ。
「だから。」
少し。
笑う。
「智慧だけでも足りない。」
マタイ。
「では。」
マキ。
「両方です。」
三人。
また。
一歩。
東。
進む。
第六十七回 終
次回 第六十八回「正しいことを言えば人は救えるのか――『生きたくない』と言う老人に、マキが初めて黙って話を聞いた夜」
次回。
三人は山道の宿で、重い病を抱える老人と、その娘に出会う。
老人は、
食事を拒む。
薬を拒む。
水まで拒む。
娘は必死に言う。
「食べて!」
「治療を受けて!」
「生きなければ駄目!」
どれも間違ってはいない。
マキも最初は娘に加わる。
食べるべきだ。
水を飲むべきだ。
治療を受けるべきだ。
しかし老人は、ついに怒鳴る。
「お前たちは、私を生かす話ばかりする。」
そして。
「なぜ私が生きたくないのか、誰も聞かない。」
マキは言葉を失う。
正しいことを言うだけでは、人間は動かない。
愛には智慧がいる。
しかし智慧にも、
相手の言葉を聞く時間がいる。
そこでマキは、すぐ答えることをやめる。
初めて長く黙り、
老人の人生を聞く。
第六十八回では、後の**「怒ったら半拍」「まず聞く」「結論を急がない」**へつながる、対話の思想がさらに深まっていきます。