要するに、円安を温存する政治の本音は、選挙と支持率だ――私はそう見ます。円安は短期的に株価と企業収益の見かけを押し上げ、景況感の数字も良く見せる。
一方、利上げは即座に株価調整や景気減速を招きやすく、選挙期日が近いほど政治はブレーキを踏みにくい。
ここに**「政治の時間」と「経済の時間」のねじれ**が生まれます。
かつてのバブル期、利上げを先送りした結果、資産価格は膨張を続け、過剰なレバレッジと誤配分が積み上がりました。
**引き締めは遅いほど“強く・長く”必要になり、結果として景気の代償も大きくなる。**バブル崩壊の教訓は、「小さく早く」の正常化こそが最終的な痛みを最小化する、という単純で厳しい現実です。
いまも構図は似ています。円安は家計の可処分所得をじわりと削り、実質賃金の回復を妨げる隠れ増税のように効きます。
それでも政治が緩和を好むのは、短期の“見える成果”が欲しいからです。だからこそ、次の三点で設計を変える必要があります。
1.段階的な正常化(循環型利上げ)
25bp刻み・四半期ごとのデータ連動で、行き過ぎた円安を**“なだらかに”**是正する。遅れて大幅に上げるより、早く小さくが痛みは小さい。
2.家計を守る選択的財政
ばら撒きではなく、低所得層・エネルギー・食料の逆進性対策に限定。可処分所得を底支えしつつ、成長投資(人材・DX・脱炭素・安定電源)に集中。
3.為替のボラ抑制と輸出緩衝
水準目標は掲げず、過度な変動に対してのみ明確に対応。輸出企業にはヘッジや税制で移行期のクッションを用意する。
補助輪として、資本コストの開示と投資方針の説明責任を強め、溜まりがちな内部留保を設備・人材投資へ流す規律も欠かせません。
金融を“主役”に戻すのではなく、金融は補助輪として、賃上げ・生産性・規制/税制改革の本筋を走らせること。これが、家計を守りつつ景気を持続させる唯一の近道です。
結語。
政治は利上げをためらいがちです。しかし、痛みの先送りは、より大きな痛みの前借りに過ぎません。
円安を選挙向けの演出として放置すれば、やがて通貨・金利・物価の三つ巴の揺り戻しが来る。
小さく早い正常化と、選択と集中の財政へ舵を切れるか――それが、短命の循環から抜け出せるかどうかの分水嶺です。