ブラジルの、現在はサンパウロに拠点をおくシンガー、ジジ・ポッシは
以前にも2作のアルバムを記事にしたことがあります。
上が91年の11作め。
下が93年の12作め。
そんなわけで今回は96年の13作めを。
上下にリンクしたアルバムはプロデューサーが同じで、
発表した年は2年ほどのちがい。
今回の盤は前盤から3年たって、プロデューサーもアントニオ・ダンカンから、
ウッドベースとしても参加しているマルチプレイヤーの
Jether Garotti Junior に代わりました。
前盤ではクラリネットとキーボードを弾いていた人物ですね。
以下、長々と前盤との比較が続くので、興味のない方はすっ飛ばしてください。
楽器編成は前盤がパーカッションと鍵盤楽器、
それ以外にはクラリネットくらいのシンプル編成だったのに較べ、
本盤は91年盤の編成に戻り、ルイ・コインブラのチェロや
マルコス・スザーノのパーカッション(パンデイロ)が再び登場しました。
また、91・93年盤になかったウッドベースもチェロとともに
本盤に登場&共演していて、サウンドの厚みを重視。
採り上げた楽曲はクラシック系を1曲含むレジェンドなSSWの作品と、
新人ではないにせよアルバムデヴューして5・6年ほどのキャリア、
まさにこれからが旬という上り調子のSSWの作品とに、ほぼ別れますね。
つまりは新旧に目配りしたという…。
前2盤に共通して採り上げていたシコ・ブアルキやジルベルト・ジル、
エドゥ・ロボなど(当時の)中堅SSWの曲はほぼ消えましたが、
ゴンザギーニャの書いた曲は本盤を含む3作をとおして採り上げています。
おそらくジジはゴンザギーニャの曲がお気に入りなんでしょう。
ともあれジジの張りと透明感のある歌声、ボーカルの上手さは揺るぎもなし。
名盤と謳われた前2盤に較べても、まったく見劣りのしないレベルと感じました。
タイトルの " Mais Simples " は収録曲から採ったもの。
ジジのシンガーとしての実力を見せつけてくれます。
ジジ・ポッシ (Zizi Possi)
ブラジルの女性MPBシンガー。
1956年 同国 イタリア移民の典型的な拠点であるサンパウロのブラース地区 ★ で生まれた。
ナポリ出身のイタリア人の子孫。
5歳から7歳までピアノと歌を学び、1973年に兄のジョゼ・ポッシ・ネトとともに
サルヴァドール(バイーア州)に移り、音楽学校(UFBA)の
作曲・指揮科の入学試験を受ける。
サルバドール市のプロジェクトで、子どもたち(ペロウリーニョの売春婦の子どもたち)に
音楽の先生として働き、コマーシャル・ジングルを録音し、地元のテレビ番組に出演した。
彼女の兄がニューヨークへの就労奨学金を得てブラジルを去り、
ひとりバイーアに残ったジジはリオデジャネイロに向かい、
イタリア語をポルトガル語に翻訳することで生活した。
のちにフィリップスからの依頼があり、同社と契約することでプロシンガーの道を選んだ。
1978年 初ソロ・アルバム "Flor do Mal" ★ ★ ★ ★ を発表。
女性ポップ・シンガー、ルイーザ・ポッシ (Luiza Possi) ★ ★ の母親でもある。
Melodia Sentimental
オープニングはブラジルのクラシック音楽を代表する作曲家、
H.ヴィラ=ロボス(1887~1959)が書いた情感のある曲。
歌詞が付いて馴染みやすいメロディなので、ジャヴァンをはじめ
多くのシンガーに歌われています。
本盤では透明感あるジジの歌声と、凛とした端正なボーカルに
背筋が伸びます。
Filho de Santa Maria
イタマール・アスンサォンと、パウロ・レミンスキが書いた曲。
最初の歌声はパンデイロ(タンバリンに似たブラジルのフレームドラム)
で参加しているマルコス・スザーノ。
リズミカルな楽しさがある曲です。
Mais Simples
サンパウロのSSW、ホセ・ミゲル・ヴィズニッキが書いた曲。
「よりシンプルに」という意味の、上品な感じのする曲。
Explode Coração
曲を書いたゴンザギーニャは北東部音楽を代表するシンガー、
ルイス・ゴンザーガの息子。
チェロに代えて情感のあるギターと、くぐもった小声になっても
ニュアンス豊かに歌いきるボーカル。
トーキングドラムが効果的なアクセントをつけています。
♪ タイトルをクリックすれば曲を聴くことができます。
♪ () 表示のない曲は ジジ・ポッシ の作詞/作曲。
(Villa-Lobos ★, Adpt. Dora Vasconcellos ★)
(Itamar Assumpção ★ ★, Paulo Leminski ★ ★)
(Haroldo Barbosa ★, Janet de Almeida)
13. Brasil (Benedito Lacerda ★ ★, Aldo Cabral) 3:46 ★ ★ ★
☆ YouTube (全曲) 【Spotify に表示された収録時間】 45分36秒
1. Melodia Sentimental
Marcos Suzano ★ ★ ★ ★ : Pandeiro ★
Rodolfo Stroeter ★ : Double bass
Lui Coimbra : Cello
Jether Garotti Júnior : Piano, Keyboards
2. Beradero
Marcos Suzano : Pandeiro, Vocals
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Cello
Jether Garotti Júnior : Piano, Keyboards
Guello (Luiz Carlos Xavier) ★ : Zabumba
3. Filho de Santa Maria
Marcos Suzano : Pandeiro, Voice
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Cello
Jether Garotti Júnior : Piano
Guello : Zabumba
4. Olho de Peixe
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Charango
Jether Garotti Júnior : Piano, Keyboards
Guello : Djembê, Congas
5. Mais Simples
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Cello
Jether Garotti Júnior : Piano
Guello : Djembê, Congas, Dishes
Marcos Suzano : Pandeirão
6. Um Beijo Meu
Jether Garotti Júnior : Piano
7. Se Meu Mundo Cair
Lui Coimbra : Cello
Jether Garotti Júnior : Piano
8. Explode Coração
Lui Coimbra : Guitar
Jether Garotti Júnior : Keyboards
Guello : Talking Drum
9. Mundo Cruel
Marcos Suzano : Pandeiro
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Guitar
Jether Garotti Júnior : Piano
Guello : Djembê, Congas, Dishes
10. Eu Quero Um Samba
Lui Coimbra : Guitar
Jether Garotti Júnior : Keyboards
Guello : Pandeiro
11. Só Pra Chatear
Marcos Suzano : Cuíca
Guello : Cuíca
12. Provei
Lui Coimbra : Guitar
Guello : Djembê, Congas
Marcos Suzano : Repique de Mão
13. Brasil
Rodolfo Stroeter : Double bass
Marcos Suzano : Moringa, Tabla Grave, Can, Cymbals
Guello : Dishes, Cashier
Jether Garotti Júnior : Keyboards, Piano
Lui Coimbra : Guitar
14. Juízo Final
Rodolfo Stroeter : Double bass
Lui Coimbra : Cello, Guitar
Jether Garotti Júnior : Keyboards
Guello : Djembê, Congas
Marcos Suzano : Cymbals, Can
Produtor: Zizi Possi, Rodolfo Stroeter
♪ "Mais Simples" の詳細は →