神戸の県庁。決算特別委員会。近年、審査初日は財政状況と決まっている。2番目として質問60分。

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いずれにしろ結論はパネルにした下記1の県債管理基金の資金の流れに書いた通り、基金が抱える債務については残高から控除して、実質公債費比率の計算をしなければならないということだ。

地方財政法や総務省令に抵触することに加えて、地方財政健全化法の立法趣旨を否定する立場だと言わざるを得ない。他府県の財政担当者から見ればこんなことが認められるのかと驚かれるだろう。他府県でもやり始めたらもう実質公債費比率という財政指標の積立不足という考え自体がなくなる。もうこんなことはやめよう。

[質問通告]
財政調整基金100億円の知事公約について

1 財政フレームで捕捉されていない1549億円の簿外債務について
(1)貸付金債権320億円のみ計上し、債務を計上していない企業庁との貸借関係について
 ①年度をまたぐ基金の貸付けを実質公債費比率の算定から除外する「地方債に関する省令」規定について
 ②債権債務の相殺による320億円の貸付債権の消去について
(2)土地開発公社・住宅供給公社の預託金155億円を県債によらず借入し、債務を計上していないことについて
 ①解消すべき土地開発公社の預託金100億円について
 ②「公有地の拡大の推進に関する法律」「地方住宅供給公社法」の規定、両公社の定款、預託の経緯について
 ③預託金を将来負担比率の算定に含めていない理由について
 ④地方債によらない借金を続けること、公益財団法人兵庫県体育協会による県への貸付け1億円について
(3)企業庁の一般会計に対する「長期未収金」105億円について
 ①決算審査意見書に個別明記して注意喚起することの必要性について
 ②県債管理基金には現金が2313億円(2020年度決算)もあるのに企業庁に支払いを行わない理由について

2 行財政運営方針最終年度に実質公債費比率が「17.9%」になると試算している理由について

3 齋藤新知事に期待すること
(1)指摘してきた方法を用いたこれまでの財政運営に対する新知事の受けとめについて
(2)財政課題を「オープン」にした上での知事公約の見直しについて


1.県債管理基金への資金の流れの表、結論

 
2.資金の内訳、実質公債費比率との関係など。
1.2.とも竹内作成。
 

県債管理基金の内訳(通常分+特定目的基金・外郭団体集約分) ※2表右下の基金残高の内訳

 

 

県債管理基金の区分別内訳。出納閉鎖後の4,975億円が上表の数値と一致する。

 

私が2009年の決算特別委員会で指摘した県債の償還に充当できない美術品や土地を県債管理基金に含んでいた課題は2017年に解決し、同時に一部の債権債務の整理は実施したが、それだけにとどまっていた。

 

今日は、県債管理基金の「負債」未計上問題は全て明らかにするために図示を行った。他会派の委員からも「図があって初めてわかった。言葉だけではわからなかった」という声を聞いたが、質問の中で触れた通りで私も最初からそう思っていた。

 

今回の財政問題については、2009年から12年目の総決算とも言える質問にした。あとは知事に直接確認する場を持つのみとなった。それで終わりにしたい。今日はそんな意味を込めたつもりだ。



基金(貯金)の一方の県債(借金)残高。

※総務省で公表されている地方財政調査方式による県債残高(参考2)は、県債発行総額から県債管理基金(減債基金)を控除したもの、つまり今後償還が必要な県債残高である。しかし、本県の場合は、県債管理基金の残高に今回指摘した債務分を含んでいるため、他府県との比較するときに用いてはならないので注意が必要である。

総額として県債残高は減っていないが、その内訳として「臨時財政対策債」の残高やその占める割合が増えている。当初こそ臨時であったがずっと続いている。

国と地方の折半財源とされたものの、財源責任の曖昧さから発行額が累増している。

下記のニッセイ総研のHPでは『臨時財政対策債の償還費を地方交付税で賄いつつ、他の歳出に対する充当することができる地方交付税の額が実質的に減額されるという形を採らないとは言えないだろう』と記されている。将来恐らくそうなる。

地方財源が抜本的に増やされることがあれば別だがそんなことをするわけがない。長期金利の急上昇など国債の信認性に疑問がつくようになったとき、プライマリーバランスを本当に考えなければならない状態に国が追い込まれた時に、地方への縛りがかかる。その時の予想がこれだ。

臨時財政対策債の元利償還金は約束通り出すが、既存の交付税の総額は減らす。じゃあいま活用しないほうがいいのか。いや活用するほうが得となる。

結局のところ財源は国持ち。過去の臨財債活用を大きく不利に扱うことは出来ないだろうと読まれている。昔の地方交付税特会の借金と結局同じだ。形だけ地方債にして赤字地方債の形態にしても財源が国持ちならつかわないほうが損ということになるのである。起債抑制効果は全くなかった。