安倍総理辞意表明を受けて、海外の投資家などから注目されているのが日本の経済政策が継続されるかどうかという。とりわけ金融政策だ。

海外の投資家なんて関係ないと考えてはいけない。日本の上場企業の株主を会社四季報で調べても、創業者やその一族、信託口と表記される国内の年金資金や大口の金融機関が保有上位に見えるだけ。確かに保有自体に限ると外国人投資家は3割程度に過ぎないという。

しかし、売り買いされたこともない創業者保有や旧財閥系の持ち合い株式、長期保有を前提とする年金保有株式に価格構成力はない。実際に取引所で売買されている株式に値段が付くからだ。こうした売買の主体となると外国人の投資家の割合は6割以上になるという。

売買しない保有者は値付けに関与できないので、実際に現物の取引に大きな影響を与えているのは外国人投資家ということになる。

また、株式現物の取引に大きな影響を与える先物取引などのデリバティブ取引になると外国人投資家の取引量はさらに多くなり7割を越えるという(東京証券取引所が公表している)。個別の株価の動向は別として、日本の株価のトレンド、日経平均株価などに大きな影響を与え、実際に価格を形成しているのは海外の投資家ということだ。

そうした大口の海外投資家の中でも投資の神様などとも言われるバフェット氏には及ばないが、世界的に有名な投資家ジム・ロジャース氏が日経に登場してインタビューを受けていた。

https://r.nikkei.com/article/DGXLASFL07I16_X00C20A9000000?s=4

世界の中央銀行がこぞって金融緩和を行い、マネタリーベースを拡大させ株高を招いていることは、自身を含めた現在の投資家に有利だと指摘。

しかし、日本の人口減は歯止めがかかからない。一方で米国の人口は移民が支えていく。日本は人口減少の中で債務が拡大するという最悪の事態をいずれ迎えるので、来年も日本株を買おうとは思っていない、と。


日本の人口が減ることは誰もがわかる。現在の海外労働者受け入れは移民政策に近いとはいえその人数から焼け石に水だ(野放図に増やせと言っているわけではない)。

また、日本の政府の国債などの債務残高はコロナ禍で更に悪化し、対GDP比で250%にも達する。先進国の中では最悪の状況だ。

一方で、個人部門の貯蓄が多いこと、消費税が他の先進国に比べて低いため、今後租税負担率を上げることによって国の債務を減らせる余力が高いと見られることから、円の価値は下がらず高いままで市場金利もあがらない状況が続いている。

円の信任懸念の声は過去からも聞こえるが、実際に市場による円安や金利上昇もないことから円の価値は日銀のコントロール下(イールドカーブ)にあるということだろう。ロジャース氏のいうように今年一杯で株価はともかく円の信任までが崩れるという感じはない。

とはいえ、株価が下落すればどうなるか。毎日、各テレビ局のニュースで、今日の日経平均株価がいくらであり、前日比どうなっているかなどの報道がある。株に投資しているかどうかに関係なく、株価が高ければ信用は拡大し、下がれば信用は収縮する。日本の景気や経済のためには株は高いほうが良いに決まっている(株高による資産効果により消費を誘発するなどの効果もある)。

株価を維持するためにどうするのか。もちろん株式は企業の価値そのものなのだから企業がその価値を高める、つまり企業が儲けることが大切だ。

しかし、現在の株価は従来基準のPER(株価収益率)などの指標では明らかにその価値より割高。むしろアメリカの株高につられていたり、金融緩和による金余りの影響が大きいと見る。

そんな中で、いまや日本の株式や先物取引の過半を取引する海外投資家の代表格がまず見たのは、安倍政権で推し進めた日銀と連携しての金融緩和・マネタリーベース(通貨量)の拡大路線を継続するかどうか。

第一の答えは菅新総理は継続するとの判断だ。見立ての通りだろう。石破さんや岸田さんは選挙戦略上も安倍路線を完全に引き継ぐとは言えないし、事実そうしたニュアンスを出している。株価にはリスクオフだ。

しかし、金融緩和などの方法を続けて円安・株高誘導を引き続き行うにしても、これ以上の緩和が財政ファイナンス(通貨発行機関 日銀の引き受け)の拡大という結果になることは明らか。いつか、何らかの形で限界を迎えることを考えると先行き不安というのがロジャース氏の話だろう。

日銀は東京証券取引所に上場している企業の株式で構成される東証平均株価のETF(上場投資信託)を株価が下がるたびに買い続けている(日銀はその事実や購入額を日々公表している)。

金融機関が保有していた国債の購入、いわゆる国債の間接引き受けだけでなく、民間企業の株式についてもETFという名前の出ないかたちで間接引き受けを行っているということだ(加えてJ-REITという不動産投資信託も同様に購入し、地価も間接的に買い支えている)。

問題は、資産が市場に正当に評価されていないというデフレ解消の観点で買い始めたのだとしても、この買い支えをいつまで続けるのかということだ。

万が一、株価が外的要因などで大幅に下落し、評価損を計上するとなると日銀自身のバランスシートが崩れ、資本が毀損する。日経平均株価が19,000円を切って大きく崩れるようなことになると債務超過に陥るという試算もある(平均買入れ価格は19,500円当りと国会答弁)。こうした間接的株式保有に対するリスクは黒田日銀総裁も国会で認めているほどだ。

いつまでもこの路線を取り続けることができないということだろう。いつかETFを売らないと日銀が買い続ければ日本の上場企業は国有企業のようになってしまう(日銀は国の認可法人で東証JASDAQ上場。国の出資証券保有比率は55%。残りは民間で売買あり)。まさか国有企業を増やして社会主義国になるつもりもなかろう。

世界的な株高の一方、本来なら株高により下がるはずの超安全資産の金の価格が上がっている不気味な状況もある。コロナバブルとも言われる世界的株高がいつまで持続されるのか。世界の中央銀行のバランスシートが史上最高にまで拡大している中でどんな結果をもたらすのか非常に心配している。

日経平均株価の動きはアメリカのダウ平均株価の後を追っているだけで、トレースとも言っていいくらい驚くようなアメリカ追随だが、日米比較でいうと少なくとも中央銀行、日銀とFRBのバランスシートをみると日本よりアメリカのほうが追加施策を含めて余裕があり、今後の潜在成長率、人口予測から考えても日本がアメリカに当面勝ることはない。ロジャース氏の指摘は日本経済が真の意味で成長しなければいつか正しくなる可能性が高い。

短期的には、コロナ禍の中で、まかり間違っても新総理が財政再建や金融緩和路線の出口戦略の検討などという話を出せば、年内どころか、日本の株価は暴落に見舞われるだろう。株価の暴落は信用の毀損。国民全体の損失だ。金融や財政の舵取りは、極めて難しい。

また、こうしたことを見透かされ、追い込まれた時に、過去ハゲタカファンドに売り崩されたときのようなことが起こるかも知れない。今のうちに成長産業を育てなければ、人口減少が不可避なだけに日本経済は売り方にもつけこまれる可能性があるということだ。

金融や財政の健全化の話をすると、インフレをおこして過去の債務を帳消しにすれば良いと言う人がいる。日本の国債は大半が国内保有だから対外債務ではなく心配は不要ともいう。

資産そのものの普遍的価値が変わらないのに、価格だけ上がるというのがインフレだ。円の価値が名実ともに下がる真のインフレは普遍的価値のある資産を持たない低所得層にとっていきなり生活困窮を招く。昔、教科書で勉強した通りだ。

こうした簡単に解を見いだせない困難な課題に立ち向かうのが国のリーダーだろう。自民党のほか野党でも新党首選挙が行われている。テレビ討論も行われている。切磋琢磨して困難な状況を切り抜けられるように。頑張らなければならない。

事務所を起点に諸活動。続いてきた夏の天候も幾分か和らいだ。ときににわか雨も。車の汚れを拭ってくれる(苦笑)。掃除嫌いの私には恵みの雨だ。

夜、元会派の同僚、川西市のK市長が叫ぶように訓示をする姿がNHKニュース845で流れていた。立て続けに市幹部職員の交通事故があり、いずれも逮捕されたようだ。こうした予期すら出来ないときの対応が危機管理として問われる。職員組織を率いる公務員の代表なのか、市民によって選ばれた市民の代表なのか。いずれも兼ねる難しい問題。結果を出してほしい。

昼食は和庵いっしんで日替りランチ。大将はタレント、ぜんじろうさんと高校の同級生らしい。