事務所を起点に諸活動。昼食時に安倍総理の体調問題や野党の統合関連の政策軸について尋ねられたが、外出先から事務所に戻ると驚きのニュース。
 
14時過ぎ、NHKから安倍総理辞職表明へのニュース速報だ。夕刻17時の会見は見なければと思っていたがまさか辞意表明とは…。大いに驚く。

神戸女学院大学の内田樹名誉教授が安倍総理が辞職した場合の寄稿を新聞社2社から求められたと昨日Twitterで明らかにしたと報じられていたが、あくまで万が一の予定稿だし、それをオープンにするのもどうかと思っていた。

そして何より今朝の読売新聞が一面トップに安倍内閣の新しいコロナ対策方針を大々的に報じていた。これは今日の辞職表明は絶対にないなと。それが一般的な永田町の感覚だったろう。

体調の本当のことは安倍総理ご本人か担当医しかわからない。一方、前回の2007年の辞職(参院選惨敗直後に国会日程も決まった上での辞職。投げ出しと批判された)のことがあるから、今日辞職表明することによる政治日程等の変更や政局に与える影響については、事前に想定した上で決定しているだろう。政治日程等について総理だけで判断できることでは無理で、今井補佐官には相談しているはずだ。

ちょうど一週間前の8月21日、テレビ朝日の報道ステーションに菅官房長官が生出演していた。何故いまの時期にこの番組に出るのかと訝しく思って見たので覚えている。従来から政権に一定の批判もする番組だが嫌々出ているのではなく時折笑顔もあった。総理が重い病気で辞意があると知っていたら官房長官は出演していないはずだ。

3月のコロナ感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言の発出に際して、官房長官抜きで安倍総理と今井補佐官らが方針を決定したとの話が報道されていた。官房長官が重要事項の決定から外されているようになったことに驚いたが、蜜月が終わったというより、検事総長・検察人事問題や河井夫妻問題、和泉補佐官のスキャンダルなど周辺でトラブルを多く抱え、影響力を低下させる官房長官に対して、秘書官から補佐官に昇格し、重要事項の決定に須く関与する今井補佐官の方が頼りになるという判断からのこと。当然といえば当然と受け止めた。

こうした官邸内の権力の構図の変化、総理と官房長官の隙間風については以前当日記にも書いたが、6月19日には、修復の機会があったことも報じられた。

緊急事態宣言以降控えていた夜の会合を3カ月ぶりに再開したのだが、そこに集まったのは、麻生太郎副総理、菅官房長官、甘利自民党税制調査会長の面々だ。第二次安倍内閣を成立させた政治家である。虎ノ門のHアンダーズ東京の「ザ・タヴァン・グリル&ラウンジ」。ホテル名もお店も聞いたこともないが、名前を聞くだけで高級感が漂ってくる。これだけを聞いても何とも思わなかった。

ところがである。私のところに定期的に永田町の様々な情報を提供してくれる人がいる。6月30日には、この19日の会合について、総理と官房長官の不仲が解消したこと、医師も同席していたとの話があった。また総理は歩けないほどの体調不良で解散総選挙は打てない。幹事長の交代と副総理への禅譲を検討しているとか。

先方も怪文書の類というので、びっくりしたが、とはいえ、永田町にはこうした情報が回っていたようで、8月に入った4日、週刊誌「FLASH」が「安倍総理が7月6日に首相執務室で吐血した」と報じた。同日の記者会見で週刊誌報道をもとに質問された官房長官は「全く問題ない」と否定した。

そんな中、8月17日に安倍首相が慶応義塾病院で6月の定期検診の追加検査を受けると報道された。結果的に7時間以上「検査」を受けたことに…。

8月22日には、同じ人から
「『検査』を受けたことになっているがそうではない。実際には持病の潰瘍性大腸炎がかなり悪化していて、5時間にわたって血液を入れ替える大治療(顆粒球交換療法)が施されていた。この治療は毎週1回かなりの日数が必要だという」

以前のこともあるのでガセではないと思う。

24日に3度目となる病院を訪れたことで、「検査」という説明では難しくなり、2007年の退陣の理由となった持病の潰瘍性大腸炎の名前が出されるようになり、病状を説明する責務が発生していた。こうした中での28日の辞任表明である。

10代の頃から抱える持病の記者会見での説明は相当嫌なことだったのではないかと推測する。辞職表明後、麻生副総理が辞職せず入院加療を勧めたが、総理の決意は固かったとも報じられているが、病状を逐一説明するときは辞めると考えていたのかも知れない。それはお父さんの影響と書いているメディアもある。その辺りも総理本人しか分からない。

また、辞意表明会見の前に党役員らに電話をした際に発した「余力のあるうちに辞める」という言葉も気になる。

会見では次期総裁についてはその選出方法も含めて二階幹事長に一任すると言っていたが、丸投げとはしないはずだ。国会議員以外の党員らを総裁選挙に参加させることが何を意味するかは報道されている通り。これは石破元幹事長が有利になるということ。これは絶対に飲めない話だろう。国会議員と県連幹部だけの投票にすることがまず基本だ。

その上で、意中の岸田政調会長を後継とし、自身の影響力を保持することがベストだが、表に出たり、影響力を裏から発揮していると報じられるだけでも強い批判を受けるだろうから、次善の策として菅官房長官を総裁とし、岸田政調会長に2位をとらせることで来年の総裁選挙後に向けて今回の政局を落ち着かせるのではないか。

二階幹事長にかなりの権限が集中する中で、幹事長と官房長官との最近の関係が会食等をみていてもかなり良好なだけに、官房長官は二階幹事長の留任で二階派の支持をもらうだろうとみるのが順当な見方だ。これは流れになる。

安倍総理は今回の病気の再発がなければ現幹事長を田中角栄幹事長の在職日数を超えさせた上で副総裁に格上げし、政調会長を幹事長にして名実ともに後継者としたいと考えていたはず。このシナリオは崩れたということだ(余力があってもこの動きに介入することは無理だろう)。

(この日記は30日に書いていますが、政治評論家の田崎史郎さんが30日の朝のテレビ朝日のサンデーLIVEで菅官房長官が政治の師と仰ぐ梶山静六元官房長官が総理・総裁になれなかった理由を本人に聞いた話として『梶山静六に梶山静六なし』と言っていました。

これは橋本龍太郎内閣で官房長官をつとめた梶山が黒子に徹して、政局や内閣を守ってきたこと、梶山静六は黒子役、軍師のような役割はしたが、自身にそのような役割の子分がいなかったたから総裁選挙では敗れた。菅官房長官も黒子・軍師役は務められるが、はたして派閥に所属せず、有能な子分がいるのか。過去の子分は…。のように受け止めました。

今回は緊急事態だけに梶山の事例が当てはまらないとはいえ、就任後は本気で支えてくれる人が少ないという状況が生まれてくるのではないかという指摘ではなかったかと思う。

政権と近すぎるなどと批判があっても田崎氏を番組に招くのは理由があるのだと今日は『梶山静六に梶山静六なし』の一言で納得しました。勉強になりました。

町田の平野家でかつ丼セット。