検察官の定年を65歳に引き上げる検察庁法改正案が国会で審議中だ。既に検察庁法ではなく国家公務員法に基づいて東京高検の黒川検事長の定年延長は閣議決定された(過去の大臣答弁と矛盾する脱法的解釈変更による)のだが、国会が関与できるのは初めて(閣議決定に国会は関与できない)のため、大きく取り上げられている。反対の方は後付の正当化と言っているが、このことは興味深いので最後に記す。

 

検察庁法とメインの国家公務員法の改正をセットにした法案のため衆議院では内閣委員会に付託されているようだ。検察官の定年延長を全面に出すと、批判が出ることがわかっていたこと、過去の答弁で問題をおこした森法務大臣が専属で対応する法務委員会での法案審議を避けたのだろう。国会ではままある話だ。

 

このことにSNSなどで反対の声をあげている人も多いようだ。芸能人が実名で反対したり抗議していることも取り上げられている。アメリカでは俳優やアーティストが支持政党を明らかにしたり、政治献金をすることは何ら珍しいことではないが日本では珍しい。今回も「事務所に止められる」と書いていたタレントがいた。そうだろう。過去にこうした話題を何度か取り上げたことがあるが、個人的にはやはりどうしても作曲家の三枝成彰さんを思い出してしまう。結論は仕事で干されるという話だった。政権交代がない国のデメリットの一つだろう。干すなどというのは健全とは言えない。

 

私もこの問題については過去から何度か取り上げてきた。下記リンクの週刊プレイボーイの解説に黒川検事長と司法修習生同期の若狭弁護士が詳しく解説していてよくわかる。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200512-01112830-playboyz-pol&p=1

 

興味深いのは、強引に国会運営をすればするほど広島の公職選挙法違反事件で捜査の現場を応援することになるということだ。これで検察が捜査を諦めたり、いい加減な落とし所をみつけてしまうと、金丸事件の再来になってしまうだろう。これは黒川検事長とて望んではいないと思う。結果的に今後の人事も含めて贔屓の引き倒しになってしまうかもしれない。

 

また、検察庁法改正案を今国会であげることを読み違えたのかもしれない。「後付の正当化」と言っているのは反対派の方で、現政権は黒川検事長の定年は既に現行法でも可能と判断し閣議決定もしており、検察庁法をいま改正して「後付で正当化」しようなんて考える必要は全くなく、いま検察官の定年延長を法整備する実益もない。

 

つまり、不急の検察庁法改正を今国会であげよう(あげるは国会用語で成立させること)としたことで改めて著名人らの「寝た子を起こした」ということではないか。最近の読み違えの繰り返しからもう驚かないが、一度ズレだすとなかなか修正できないということか。

 

昨日アップしたつもりができていなかった…。