神戸の県庁。早くに出勤。副議長候補として擁立する「石井秀武」県議の他会派への挨拶に同行。副議長候補については先の4年は公明から擁立したが今年度は第二会派となった我が会派から擁立する。予め何度もお願いしているが最後のお願い。

過日、自民党を除く全4会派連名で自民党に対して正副議長独占は議会制民主主義のもとでの公平な議会運営の原則からもおかしい旨、申し入れを行っている。

今期、自民党は過半数を割っているのに、正副ともに独占しようとしている。個々の役職について議会内で選挙をすれば多数を占めているものが全て獲得できるかもしれない。とはいえ、常識的に抑制する。とりわけ正副議長の独占はやらない。これはやり過ぎ、厚かましいと言える。私、個人的にも厚かましいのは嫌いだ。

その後、最後の新議会世話人会。本日の本会議の議事の確認。本会議以降は同じメンバーで議会運営委員会(議運)に鞍替えする。

その後、会派の役員会。その後、会派総会。その後、本会議。まず議長選挙。自民党の長岡県議に投票。第一会派から議長、その他の会派から副議長との過日の申し入れ内容に沿って投票。

その後、副議長選挙。実は1週間前あたりから名前無しの「石井」票が入り、事務局がそれを無効と判断するという噂が複数から入っていた。

これは兵庫県議会の議員では意味がわからない話だろう。公職選挙法の解釈は議員経験から多少できてもこの話を即座に理解できる人はいない。また「入れ知恵」か…。少し前にブログで入れ知恵駄目と書いたばかり。目に余る。

月曜に釘を刺したが時既に遅し。案の定、「石井」だけの票が入り、事務局が無効といったので議場壇上で紛糾。

選挙の立会人には私がいこうかと思っていたが、M政調副会長で正解だった。元衆議院議員の経歴、押しの強さと、私と違って柵のなさ。

議会で選挙をする際に「公職選挙法を準用し」という説明がある。議会の役職の選挙も公職だから公職選挙法が適用されるんだと考えるが全く違う。

○公職選挙法
第一章 総則
(この法律の目的)
第一条 この法律は、日本国憲法の精神に則り、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長を公選する選挙制度を確立し、その選挙が選挙人の自由に表明せる意思によつて公明且つ適正に行われることを確保し、もつて民主政治の健全な発達を期することを目的とする。

(この法律の適用範囲)
第二条 この法律は、衆議院議員、参議院議員並びに地方公共団体の議会の議員及び長の選挙について、適用する。


つまり、公職選挙法は国会議員と地方議員、首長を有権者が選ぶルール、法律。議会内の選挙について定めたものでは全くない。

一方、地方議会制度等を定めた地方自治法において議会内部の選挙のうち特定の事項については公職選挙法を準用しなさいと書いてある。それだけのこと。

○地方自治法
第百十八条 法律又はこれに基づく政令により普通地方公共団体の議会において行う選挙については、公職選挙法第四十六条第一項及び第四項、第四十七条、第四十八条、第六十八条第一項並びに普通地方公共団体の議会の議員の選挙に関する第九十五条の規定を準用する。
その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する。


自治の最高法規である地方自治法に今回のように同じ姓がいる場合の按分等の規定は存在しない。県議会の会議規則にも規定はない。

にもかかわらず、按分の規定がないことをもって、全く別個の法律である公職選挙法の「第六十八条第一項の八」を使って無効にすると。ネットを見たのか、どこかの団体に聞いたのか。ここは自治体、自分たちで決めろ。

加えて過去には複数在職の同じ姓のみの記載で有効となった事実を本県議会でしかも私の在職中に確認している。

○公職選挙法
(無効投票)
第六十八条 衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙以外の選挙の投票については、次の各号のいずれかに該当するものは、無効とする。
 一 所定の用紙を用いないもの
 二 公職の候補者でない者又は第八十六条の八第一項、第八十七条第一項若しくは第二項、第八十七条の二、第八十八条、第二百五十一条の二若しくは第二百五十一条の三の規定により公職の候補者となることができない者の氏名を記載したもの
 三 第八十六条第一項若しくは第八項の規定による届出をした政党その他の政治団体で同条第一項各号のいずれにも該当していなかつたものの当該届出に係る候補者、同条第九項後段の規定による届出に係る候補者又は第八十七条第三項の規定に違反してされた届出に係る候補者の氏名を記載したもの
 四 一投票中に二人以上の公職の候補者の氏名を記載したもの
 五 被選挙権のない公職の候補者の氏名を記載したもの
 六 公職の候補者の氏名のほか、他事を記載したもの。ただし、職業、身分、住所又は敬称の類を記入したものは、この限りでない。
 七 公職の候補者の氏名を自書しないもの
 八 公職の候補者の何人を記載したかを確認し難いもの


有権者の投票を無効にすることに積極的な運用は控えるべきことは理念や法解釈から明らか。地方自治法や会議規則、普遍的原理に従って決めればよいということだ。

地方自治法第百十八条には末尾に「その投票の効力に関し異議があるときは、議会がこれを決定する」とある。

結果としては、本会議を休憩とし、各派代表者会議、立会人の会議を行い、法に基づき投票の効力に関し異議があるものとして本会議を再開して、議決を行うこととなった。

「石井」票の効力つまり賛否を問う採決だ。通常の起立採決ではなく、(無記名の)投票による採決が選択されたと聞く。動きも早い。ここまでは想定していたようだ。

無効票の扱いで異論があることは議会の始まる前、月曜に出向いて伝えておいた。議会が始まる前に、変な投票があるだろうと前もって話し合うなんておかしいが全くの事実だ。事前にこちらの主張を話しておいたのは私なりの仁義だったかもしれない。

とはいえ、ことここに至って「無記名」で議員の意思を隠すという話ならば、記名投票の動議で対抗するしかない。

ということで緊急に議場内で記名投票にする動議を提出。会議規則に10人以上の賛成規定があることは事前に確認していた。実は記名要求動議は昔、国会会期末などによく作った経験がある。まさか自分が出す立場になるとは思っても見なかった。


話を戻すと今回の有権者である議員が書いた票を無効とせよと主張する議員がいる訳ないだろ、と思ったらそうではなかった。無効の議決がなされた。

採決では自民党ではない、意外な人が投票を無効を主張する青札で投票していた。驚きの声があがっていた。

また、それを見て「人間不信になる」と言っている人がいた。

いずれにしろ、結果的にも二票足らず大事は成就しなかった。有権者の皆さんの判断をうけたものならそれでいい。記名投票がその判断に資したなら、対有権者にとっては有用な情報提供となったと思う。代議制の基本である代弁者が選挙の負託と違う判断をしているならそれは有権者への裏切りだろう。

たった二ヶ月後に変節することを投票時に有権者が知るのは無理。しかし、それも有権者の責任なんだという、過日日記に書いた小泉衆議院議員の全て有権者の責任、論。こういったこことをその論理で肯定していたら負のスパイラルだ。


そういえば後に、記名投票を奇襲という人がいた。後刻、事務局に強く抗議した人もいたという。議員が自らの意志を明らかにできないとは何か。それが何かに悖るものだからだろう。

月曜の日記に高杉晋作のことを書いた。高杉が創設した奇兵隊は正規軍ではないという意味もあるが、そもそもの語源は奇襲。奇襲によって青札が照らされた。

とはいえ、奇兵隊を率いた高杉は後に藩内の保守派を追い出し、明治維新を行う原動力となった。が、ここではそうはならなかった。力不足だ。

高杉の言葉として伝えられるものに
『人は旧を忘れざるが義の初め』
というものがある。

大物にはなれないが、お世話になった人を裏切るような生き方はしたくないと改めて思う。

昼食時間なし。疲労困憊。