香港経由タイのバンコク。

タイ・ミャンマー経済ミッションの派遣について(兵庫県HP)

上記リンクに参加する県幹部、県内民間企業の方々とタイ日程のみ合流する。半日先にタイ入りし、バンコク市内のメディカルツーリズムを大規模に行っている病院を視察。


サメティヴェート スクムビット病院。現在改装中。




理事・日本部門長の松尾さんに病院施設をご案内頂き、その後、病院概要の説明を受ける。そのまま意見交換。

(病院の特徴/日本との違い)
完全自由診療。日本では、公的保険の効かない自由診療は美容、陽子線治療、審美歯科などで認められているが、タイでは政府の関与はない。ただし、政府の関与がないので、(経営不振等で)我々が潰れようが政府は関係ない。

タイには完全自由診療で公的医療保険の使えない病院(民間医療保険や全額自己負担)が3つある。タイの日本人の97%がこの3つを使っており、いずれも日本語の話せるスタッフや窓口がある。

タイには、公的医療保険制度もあり、それで診てもらえる病院はある。ただし、大きな病院でも老朽化していたり、街中の小さな診療所では待ち時間も多いなど、快適に診てもらえるとは言えないだろう。

(経営形態)
当病院グループは3つの病院を運営する株式会社で証券市場にも上場している。一般の方も市場で株式投資ができる。大株主のオーナーはいる。

(国別の患者数と売上)
患者を国別に見るとタイ人が60%、外国人が40%。日本人患者の割合は約20%。年間12万人と日本国外の世界の病院の中で日本人患者が最も多いのが当病院である。とはいえ、患者数は20%のシェアだが、売上割合では14%に落ちる。これは日本人は企業の駐在社員が中心でお金持ちではないから。タイ人患者の方がお金持ちが多い。日本に続いては、イギリス、アメリカ、フランス、オーストラリア。これらの国も大半は医療目的でタイに来たのではなく、在住者である。

(規模とスタッフ数)
当院の病床数は240。医師数は480人(うち常勤医は260)。※外来も含む。看護師は500人、スタッフは500人。

病床稼働率は72%。損益分岐点はクリアしている。 日本の病院の中には稼働率が100%近いところもあるようだが…。
平均入院日数が、4日程度と短い理由は、タイでは基本は家で療養するという文化である。お金持ちは、自宅に看護師を雇うということをしたりする。

(治療費や入院費など)
入院は全室個室で最低の部屋代が1日6500バーツ、約2万円。治療費は別である。治療費は医師によって異なる。医師が決め、患者が払う。1時間5~10万円のこともあるし、極端に言えば100万円でもいい。医師と患者の契約である。病院は医師の代わりに患者から治療費を受け取り、その一定割合を手数料として引いて、医師に渡している。患者の約半数が医師を指名して診療を受けている。医師の評判や技術は噂やネットに情報として流れている。

医師の決めたお金に文句を言う患者は(当病院では)まずいない。

(医師の評価)
患者は医師を選ぶことができ(指名)、嫌だったらいつでも他の医師に変えられる。指名のない場合は病院側で決めるが、タイ人の大半は指名する。外国人を含めた全患者の指名する患者の割合はほぼ半数となる。
医師の評価については、病院が年1回、医師ごとの年間売上等を評価し、人気のない医師は解雇することもある。

(患者に人気のある医師の確保)
当病院にも医師の待機室 医局があるが、航空会社のラウンジのようなもの。いつでも食事やお茶を用意しており、好きな時に食べることができる。また、優秀な医師確保についてはヘッドハントの専属部署を設け、常にスカウトをしている。一方、要らない人は切る。

(タイの医師の待遇)
タイでは日本以上に医師と看護師の待遇格差はある(看護師になるのは難しくない)。近年は介護士の方が看護師より待遇がいい)。
しかし、公的な大学病院の医師の給与は笑ってしまうほど安い。ある大学病院のトップの医師で国王の担当医でもある医師でもそれほどもらっていないと聞いた。ただ、医師の場合、親も医師とか生まれがお金持ちという場合が多いので、大学病院の安月給でも生活できるという人も多い。そうではない貧しい出身の場合、大学病院の給与だけではいい生活ができないので、当病院で非常勤で働いている人もいる。また、当病院には365日毎日勤務している医師もいる。全く休まないので理由を聞いたところ、診察が好きなんだと聞いて驚いたこともある。

(最近の医師)
治療費の請求を見ていると、近年の若手医師は高く要求する傾向がある。腕がいい医師ほど安いという傾向もある。30歳ぐらいで渡米し、MBA(経営学修士)をとって、医師ではなく経営者として医療に関わろうとしている人が増えている。
MBAといえば、余談だが、医師はどうしても製薬会社や医療機器メーカーと癒着ができてしまったり、情実人事をしてしまう場合がある。前社長(非オーナー)は公認会計士でそうした癒着にメスを入れ、そうした医師を入れ換えるなどした。経営的にはかなり改善された。

(外国人医師)
医師資格は海外の資格では駄目でタイの国家試験をタイ語で受かる必要があり、ハードルが高い(近くのカンボジア、ベトナム、ミャンマー、ラオスなどは外国の医師免許も認めているが、タイの医師会が反対している)。現在、当院にも日本の医師資格を持った人が1人いるが、タイの免許を持っていないため、セカンドオピニオンや相談など医療行為以外の仕事をしている。

(医療ミス/訴訟)
タイでも産婦人科などリスクのある分野の訴訟はある。もし医療ミスがあったとして当病院は患者と医師の契約だから病院は関係ないということもできるが、そうした対応だと良い医師は集まらない。裁判や賠償等が発生した場合は支援している。こうしたことが医師の間での当病院の評判をあげることにもなる。

(民間医療保険)
全額自由診療だが、(全額現金で支払う患者もいるが、アメリカのように)民間の医療保険に入っている場合が多い。同じ治療内容で医師により請求額の差が大き過ぎる場合、保険会社から苦情が来る。医師に直接そうしてことが話しにくい場合、ベテランの先輩医師から指導してもらうこともある。タイは年功序列、先輩をたてるという伝統があり、この点では日本と似ているかもしれない。当医院では、メディカルスタッフオーガニゼーションという組合があり、そこの代表は大ベテランの医師。その人の言うことは皆聞くと思う。

(薬)
薬は全て製薬会社等と交渉して仕入れているが(日本と同じ) 、患者が払う薬の料金は、日本のような国による統一の薬価制度ではなく、我々が決めている(当然のこと)。当院の場合、治療費は、医師によって変わるが、薬代と検査代は医師が違っても、同じ料金である。

(ジェネリック医薬品)
患者にジェネリックは使わない。ただし、当病院のスタッフの治療には使っている。スタッフが当院で受ける治療費は全額無料(スタッフにまで高い薬を使う必要はない)

(救急車)
当病院の救急車は軽症で使ってもらってもいい。日本と違って全て有料だから。救急車が高いことは知られており、お金のない人は頼まない。近くで3~4000円。あとの診療のこともあるのでこれは安くしてある。この病院には12、3台ある。ドクターが乗って現場に出るドクターカーだと3~5万円かかる。

(医療費未払い対策)
入院の場合、デポジット(仮払)として7万5千円、ICU(緊急手術室)の場合は15万円預かっている。とはいえ、取り漏れる場合もある。保険に入っていれば問題ないが、入っていない患者がいる。例えば、外国人観光客がタイで交通事故に巻き込まれ、意識不明で当病院に搬送された場合など。1ヶ月で約1000万円の治療費となったが、(意識が戻っても)高額な費用を払えないという。そうした場合は、国立病院に転院してもらったりする。未払分がどうしても払えないという場合は、病院が医師に頼んでディスカウントをお願いすることも。総じて医師は快くディスカウントしてくれる。


(メディカルツーリズム)※医療目的の外国人を誘致すること
日本からの患者誘致は当院としても取り組みをしてきたが、日本は国民皆保険の国であり、海外に行く必要性に乏しい。また、タイという国に対して後進国というイメージもあり、下に見ているところがある。簡単ではない。現在は、中近東をメインに誘致している。中近東のお金持ちは、従来アメリカで先進医療を受けてきたが、アメリカ同時多発テロ以降、ビザの発給が難しくなっており、アジアに目が向いている。また、近隣でも、ミャンマーが解放されたが、病院のほとんどないミャンマーからタイに来る富裕層も多い。タイ政府はメディカルツーリズムを国策として、外国から患者を呼び込むと言っているが、観光展示会などへの出展を勧誘される程度で、他の直接的な話はない。

私は医者ではなく専門はマーケッティング。アラブの方はハラル料理など食事をはじめ、宗教的な制約がある。中国という国をどう考えるかという課題や他の国とのバランスもある。

(英語)
当病院は運転手や傘をさす係のスタッフまで全職員にTOEIC(英語試験)の受験を義務付けている。例えば、750点とらなければある役職につけないとかの昇進基準を設けている。これは簡単な取り組みではなくようやく10年かかってできたことである。

(日本の医療の問題点)
日本の民間病院や厚生労働省、国土国交省の官僚、駐タイ公使らの視察を受けたこともある。日本の大きな民間病院は自由診療を望んでいると思う。

日本語が使えない外国人が病院に行って、満足に症状や処置の希望が伝えられる病院は東京や横浜でもない。たまに英語が使える医師はいても、看護師やむスタッフも含めて、そうした対応できるところはない。だからわざわざ横浜在住のカナダ人が当院に来て手術を受けて帰っていったこともある。日本の病院を視察することもあるが、現在の患者で手一杯で外国人まで手が回らないという。東京は国際都市と言っているし、2020年には東京オリンピックもある。こんな状況は改善したほうがいいと思う。

(日本へのメッセージ)
CTなどの高額医療機器はタイでもGE、フィリップス、シーメンスの3社に独占されている。内視鏡はオリンパスが独占しているものの。うちではトイレをTOTO、ベッドをパラマウントベッドに変えた。営業の成果によるもの。日本企業もいい製品を作っているのだから貪欲に進出すればいいと思う。


病院の基本理念


主な沿革


診療科一覧


病院概況

施設見学















病院内には定食屋の大戸屋も

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