代表質問原稿と新聞記事を紹介します。答弁も出揃いました。質問原稿はあくまで案で、答弁等により現場で変更を行っていますのでご了承下さい。

神戸新聞で取り上げていただいた「国の出先機関の関西広域連合への移管」や「NHK大河ドラマ『軍師官兵衛』を活用した観光振興」などのほか、平成25年度決算における実質公債費比率が18%を切る可能性があることを認める知事の答弁もありました。これは一般受けしない質問ではあると思いますが、兵庫県財政において重要な点だと思っています。


神戸新聞兵庫面

第315回定例会代表質問

                 質 問 日: 平成24年12月7日(金)
                 質 問 者: 民主党・県民連合 竹内英明
質問方式:一問一答方式

1 国と地方のあり方について
(1)国の出先機関の特定広域連合への移管について
11月21日に公表された自民党政権公約(案)の中に「(民主党が進める)国の出先機関の特定広域連合への移管は断固反対」「道州制基本法を早期に制定し、その後、5年以内に道州制の導入を目指します」と井戸知事の目指す方向性と違う政策が掲げられました。
後段の道州制はともかく、前段の国の出先機関改革については、関西広域連合全体で強力に推進してきたものであり、特定広域連合への移管という具体策にようやくたどり着き、国会提出を控えていた政策であります。
京都府、滋賀県の両知事をはじめ、大阪市の市長らも強く反発していますが、公党の公約であり、特に『断固反対』という表現は、かなり強い否定であります。
関西広域連合として、11月27日に自由民主党総裁に対して
「いかなる政党であろうと地方分権を進める見地に立てば、これは中央集権的行政に固執する勢力を容認することとなり、ようやく一歩を踏み出そうとしている分権改革の流れを断ち切るだけでなく、中央集権の強化につながり、極めて遺憾である。よって、政権公約の当該部分を撤回するとともに、国の出先機関の事務・権限の関西広域連合への移管を積極的に進められるよう強く求める」という撤回の申し入れをされましたが、報道によりますと、対応した甘利明政調会長は修正に難色を示したとのことであります。その後、公表された総合政策集では「民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管には反対し、地方出先機関の広域災害対応力の一層の強化を図るとともに、国と地方のあり方と道州制の議論を整理します。」と「断固反対」が「反対」に改められたようです。しかし、いずれにしろ反対です。知事はこの「国の出先機関の特定広域連合への移管」という政策を「改革の試金石」として位置づけてこられました。このことに対して改めてどのように考えておられるのかお伺いします。

(答弁)(井戸知事)
国から地方への権限移譲は、分権改革の根幹であり、とりわけ国出先機関の地方移管は、その取組みの第一歩として求めてきた課題であります。民主党政権になり、国出先機関の原則廃止が打ち出されたことを受け、従来のように、単に国に要求するだけでなく、関西は自ら主体的に行動し、その受け皿として関西広域連合を設立し、広域課題への対応とあわせて、その実現をめざしてきました。
   先般、ようやく関連法案が閣議決定されたものの、衆議院が解散されたこともあり、国会へ提出されなかったことは誠に残念です。
   このような中、公表された自民党の政権公約の案に「民主党が進める国の出先機関の特定広域連合への移管は断固反対」との記載があり、あたかも、国の出先機関の移管そのものに反対である旨主張されているおそれがありましたので、直ちに、甘利政調会長に対し、真意を正すとともに、遺憾の意を伝えたものであります。甘利政調会長からは、特定広域連合への移管という現在の手法に反対しているが、地方分権の推進自体に反対している訳ではない、との回答でありました。
   もとより分権改革は、いかなる政権においても積極的に推進すべき課題であります。関西広域連合としては、総選挙後に成立する政権に対し、これまで積み重ねてきた国出先機関改革の議論を後退させることなく、政治主導の下、具体的な取組を進めるよう強く要請してまいります。また、市町が懸念する大規模災害時の対応や市町意見の反映についても、さらに理解が得られるように努めてまいります。
ぜひとも、国出先機関の移管を実現させ、分権改革の先導モデルとしての役割を果たしていきたい。これが関西広域連合の連合長である私の信条でございます。


(2)社会保障と税の一体改革が本県財政に与える影響と消費税について
社会保障と税の一体改革法が成立しました。誰しも増税を喜ぶ人はいません。しかし、先月発表された国の983兆円という過去最高の借金や先進国の中で最も少子高齢化が進むという人口構成等を考えれば、事業仕分け等による既存事業の歳出の見直しだけでは財源は足りず、いずれ何らかの形で国民の皆さんに負担のお願いをしなければ財政はもたなかったということも事実でしょう。
一方、この間、社会保障の財源となる消費税について、国と地方の配分、つまり地方消費税の比率や地方交付税の割合などについて、法制化された「国と地方の協議の場」等を通じて、その配分を地方に求める要請等がなされてきました。結果として、全体の消費税率が10%となる平成28年度以降は、地方消費税分が現在の1%分から2.2%と倍増、交付税部分が現在1.18%の配分が1.52%と地方への配分は増加することになりました。
地方消費税は現行の1%配分でも県分は年間約500億円(半額を市町交付済)ですが、消費税率が10%となるとこれが2.2倍になり、1100 億円と年600億の増となります。一方で、法人関係税が消費低迷により落ち込むことも考えられます。また、本県の場合、地方交付税の交付団体であり、臨時財政対策債も発行しているため、地方消費税が増加しても、その全額がそのまま増収となるものではありませんし、岡山県などの自治体は既に「地方消費税引上げに伴う増収に見合った地方一般財源総額の確保を図ること」を国に対して要望していますが、地方財政計画全体がどうなるかを考慮しなければ、その影響を見極めるのは難しい面があります。
富山県の試算では、交付団体全体では地方消費税は1.2%分1兆3100億円増収となりますが、臨時財政対策債が5,300億円の減少となることで差し引き7800億円の歳入増となるものの、歳出の社会保障関係費の増加を同額の7800億円と見込み、不交付団体にとっては地方消費税の増税は全て社会保障関係費の増で吸収されてしまうとの試算もあります。
いずれにしろ、予定どおり消費税の増税等が実施されるとすれば、本県の歳入増となることはほぼ間違いないと思いますが、知事は、社会保障と税の一体改革に伴う消費税増税が本県財政に与える影響をどのように考えておられるのかお伺いします。
また、消費税の全てを地方税とし、その一部を地方共有税として地方自治体に財政調整機能を含めて委ね、国の地方交付税制度を廃止するという選択肢もあります。財政状況は自治体間で大きく異なりますが、自治体同士の話し合いで消費税の配分を決定していくことがはたしてできるのか。私たちは地方交付税制度を評価し、その充実を求めてきたものですが、地方税制に詳しい知事は、地方共有税を導入し、財政調整権限を自治体に委ねて地方交付税制度を廃止することについてはどのような考えをお持ちでしょうか、併せてお伺いします。

(答弁)(井戸知事)
今回の地方消費税を含む消費税の引上げに伴い、地方消費税の増収分は、基本的に医療・介護、子ども・子育て対策など国の社会保障制度の充実に伴う地方負担の財源とされ、また、地方交付税の増収分については、地方単独の福祉施策の財源及び財政力の弱い団体の財源として活用される見込みである。
 本県の増収分としては、平年度ベースで、地方消費税分(1.2%) が全国計で約3.24兆円となるうち本県分は約1,200億円、ただし、市町交付金を除いた実質ベースでは約600億円と見込んでいる。 また、地方交付税分(0.34%)については、全国計で0.9兆円となり 本県分は約100億円と見込まれる。
 しかしながら、地方消費税の増収分は100%基準財政収入額に算入される予定であり、そうすると地方交付税と相殺されてしまい、財源不足額が減収するにすぎないことになるのではないかと考えている。地方交付税の増収分は、増嵩する本県の社会保障支出に活用せざるを得ないことから、本県財政の改善には現時点において多くを期待できないのではないかと考えられる。
しかも、社会保障制度の具体的な内容は、11月末に初会合が開かれた社会保障制度改革国民会議で今後検討されるが、地方の代表が参画できなかったことから、会議の動向を注視しつつ地方の立場を積極的に提言する必要がある。
 「消費税の全てを地方税とし、その一部を地方共同税として財政調整機能を含めて地方自治体に委ね、地方交付税制度を廃止する」という基本的な考え方については、一理あるのではないかと考える。地方分権を確立する観点から、国税の一部を地方の財源とした上で地方自ら配分する仕組みとするという意味では、地方の自立的財政調整制度ではないかと考えている。
ただし、税源の多い地域と少ない地域の間での利害対立が調整できるシステムを前提とせず、単に消費税を地方税とすれば地域間の税源の偏在性が是正されにくい。その意味でよく見極める必要があると考える。
 私は、国・地方税の抜本的な再編のもと、地方税への配分を増加させ、地方の自主財源である地方税の割合が相当程度増加する場合に、その一部を地方共同税なり地方共有税と位置づけ、これを第三者機関である地方財政調整機関に供出し、財源調整される仕組みを構築することが望ましいと考えている。
国・地方の役割分担を明確にし、権限、財源、責任の所在を一致させる税財政の抜本改革を進める中で、総合的な検討が行われる必要がある。


(3)社会福祉法人に関する事務の受託について
第2次地域主権改革一括法の施行に伴い、都道府県から一般市に移譲される権限に「社会福祉法人の指導監督権限」があります。
10月11日付の神戸新聞を見て驚きました。「社会福祉法人の監査 市に権限移譲のはずが…逆戻り? 21市、県に事務委託」。専門人材を確保しにくい市の事情を考慮し、『県が提案した』とありました。
「社会福祉法人の指導監督権限」が市に移譲される一方、法人が運営する施設の指導監督権限は引き続き県が担うこととなっており、指導監督は法人・施設ともに一元的に担うことが望ましいことなどから、市が人的体制を整備するまでの間、自ら実施する4市を除き21市については、引き続き県が事務委託を受ける方向という説明を受けました。
市がこれまで担当していなかった法人の指導監督という事務で経験を積んで行く中で、いずれ施設についての権限も移譲していくと考えるならば、国のこの措置は理解できますし、県の立場に立てば、指導監督は法人・施設ともに一元的に担うことが効率的だと考えること、これも理解できます。卵が先か鶏が先かのような話です。しかし、市によっては仕事が増えるだけで事務の移譲は不要と考えているところもあります。これでは地方分権は進みません。
市がやりたくないからといって県が受け続ければ、「法人監督すら受けられない、できない体制の市がある」という国側の評価になり、分権自体が難しいのではないかという結論になりかねません。県にとっては指導監督事務が市に移譲されれば、それまでその事務を担当してきた県職員の処遇も含めて考えなければなりません。簡単な話ではありませんが、そうした苦労の末、地域主権改革をやろうという方向性で兵庫県は国に対して強く権限移譲を求めてきたのではないのでしょうか。
本県では、平成11年に事務処理特例条例を制定するなど、これまでから市町への権限移譲に取り組み、24年度には「県から市町への権限移譲検討会議」を設置するなど、積極的に市町への権限移譲を進めようとしてきました。地域主権改革やこれまでの地方分権については、国の取り組みの成果というよりも、むしろこれまで国に対して権限移譲を強く働きかけてきた地方自治体及び地方議会が勝ち取った大きな成果であります。
今回、疑問に思うのは法律上、市が行うこととされた事務を県が引き続き担うことを「県が提案した」という点であります。先の出先機関改革の話でも触れましたが、こうした事例で地域主権改革の方向性に疑問符がうたれないように、法人の負担や行政効率の面を考慮しても、法律どおり市に委ねるべきが分権改革の方向性ではないでしょうか。現実に市側と合意していますので、今から変更できるものではありませんが、県の権限移譲の方向性について明確にしていただきたくお伺いします。

(答弁)(金澤副知事)
社会福祉法人本体に関する指導監督の権限と、法人が運営する施設に関する指導監督の権限は、行政効率や監査を受ける法人の負担を考慮いたしますと、本来であれば、同一の主体が担うことが望ましいと考えております。
 今回の権限移譲については、厚生労働省における社会福祉法人を所管する局と、高齢者、障害者、児童等の施設を所管する局が異なることもあり、統一的な対応がなされておらず、また、施設に関する権限を移譲する行程も示されていない状況でございます。
 したがいまして、県では、権限移譲を着実に進める観点から、国に対して施設に関する権限の早期移譲を強く要望してまいります。
現行の制度内で、法人とその運営する施設に関する指導監督権限が一体的に行使できるよう、一部の市を除いて、暫定的に市の法人に関する事務を県側で受託いたしますけれども、同時に円滑で早期の移譲が果たせるよう、市の担当者を対象とした研修を実施しますとともに、市に対して、分権に関する理解のもとで体制整備をしてもらうよう働きかけてまいります。
 今後とも、住民に身近な行政サービスは基礎自治体である市町が担うということを基本に、積極的な権限移譲を進めて、県と市町の連携を強化しながら、一層の分権改革を進めてまいりたいと考えております。


2 兵庫県財政の今後について
(1)平成 25年度に起債許可団体から協議団体へ移行する可能性について(財 政)
平成23年度の決算に占める借金返済の割合を示した実質公債費比率(単年度)が16.6%となり1年間で19.8%から3.2ポイントも低下しました。今年2月に修正した第2次行革プランにおける財政フレームでは、23年度単年度の実質公債費比率を20.0%と想定していましたから、その比較では3.4ポイントも改善したことになります。その大きな要因は、県債管理基金の積立不足分のペナルティ分が22年度に5.1%あったものが4.3ポイントも下がって、0.8%となったことです。
実際の県債管理基金の積立不足は2782億円(不足率53.1%)と依然大きいままですが、ペナルティの算定は県債の元金償還額と前年度の積立不足率を掛けて計算することから、積立不足率が大きく改善されなくても、県債の元金償還額が大きく減少したことで、制度上、ペナルティも大きく改善されています。これは制度上の問題点であります。
23年度は県債の借換による借金を当初の財政フレームより前倒しすることで(平準化)、実質的な借金返済つまり償還を先送りした形となったため、ペナルティの算定において有利になったということです。
先の決算特別委員会の上野議員の総括質問に対して知事は「実質公債費比率などはかなり下回った水準で決算をうつことができました 」と答弁されていましたが、全国の都道府県間の位置でも制度スタート時の全国ワースト2から4位となっています。
また、平成23年度から25年度までの3カ年でみますと借換債の平準化によって当初比約1650億円の県債償還の減少と1206億円(486+720)の基金増額が見込まれています。今年3月に議決した最新の財政フレーム上25年度の実質公債費比率は20.8%と見込んでいますが、フレームの歳入・歳出見込みを前提に試算すれば、24・25年度も23年度同様、現在の財政フレームよりかなり低くなることが見込まれることから、3カ年平均で18%を切るのではないでしょうか。実質公債費比率が18%を切ると起債についての総務大臣の許可団体ではなくなるということになります。平成25年度には実質公債費比率が18%未満になり、起債許可団体から協議団体へ移行するという見込みについてお伺いします。

(答弁) (井戸知事)
結論から申し上げますと、起債許可団体から協議団体へ移行する可能性はあります。
本県は中長期的な視点に基づく8つの財政運営の目標を掲げ、財政の健全化を計画的に進めてきました。こうした中で人件費や行政経費、投資的経費の改革はもとより、義務的経費である公債費についても縮減を行っていく必要があります。このため、県債発行額の抑制に加えて、有利な条件での資金調達にも意を用いています。
借換債の平準化対策は、23年度の最終予算の編成に際しまして、26年度の借換債を含む県債発行額が、23年度と比べ3,000億円以上増加し、このまま放置しておきますと、調達金利が上昇することによる公債費の増嵩が見込まれましたので、4年間トータルの借換率を固定する中で借換債を平準化し、26年度の発行額を1,650億円縮減しようとするものであります。
23年度の実質公債費比率は、計画どおり借換債を490億円増額できた結果、基金積立不足に対する加算が減少することとなり、前年度(3カ年平均)から1.5ポイント低下することになりました。ご指摘のとおりであります。
24年度以降の実質公債費比率については、どのように見込むかという技術的な課題がありますが、一定の前提を置き、金利状況なども想定し、平準化対策の規模を、先ほど申し上げました1,650億円としながら、なだらかにトータルの発行額が増加するという配分を前提にして試算をしてみますと、24年度でも現行フレームで見込む20.2%(3カ年平均)から2.5ポイント程度低下し、17.7%程度になるのではないかと見込んでいます。平準化対策に伴う一時的な数値であります。25年度も18%を若干下回る数値になろうかと思います。しかし、26年度は18%を上回り、27年度は平準化対策の効果がなくなりますので、3カ年平均で20%程度に戻ると見込んでおります。今申しましたように、毎年度の借換規模の調整を行った結果の数値に過ぎませんので、財政体質が改善したものではありません。財政構造が良くなったという数値ではないということを強調させていただきたいと思います。
従いまして、引き続き第2次行革プランに基づく改革を進め、持続可能な行財政基盤の確立に取り組んでいかなければならないと決意しております。


(2)新たな「将来負担比率」の目標設定について
しかし、一方で、将来世代が標準財政規模の何%を負担しなければならないという「将来負担比率」は、行革のスタートした平成19年度の決算時に361.7%でありましたが、23年度は351.7%でほとんど改善されておりません。当面のフロー指標は改善されていますが、将来負担比率は全国ワーストを続けています。財政運営の目標として、震災影響を除く将来負担比率の目標設定はあるものの、震災分を含んだ全体の「将来負担比率」の目標設定がありません。しっかり将来世代への負担を減らすという点で震災の影響も含んだ「将来負担比率」の目標設定を新行革プランの総点検にあわせて導入すべきだと思いますがいかがでしょうか。

(答弁)(井戸知事)
阪神・淡路大震災からの復旧・復興のため発行した県債:約1兆3,000億円の残高が、平成23年度末においても約6,700億円にのぼっております。従いまして、この分だけ将来負担比率が同規模の府県に比べ高い状況にあります。
将来負担比率の目標を設定するにあたりまして、平成22年度の第2次行革プランの策定に際して、今後、震災関連県債残高が減少していくわけでありますが、この減の効果と他の行革努力の効果とを区分する方がいいのでないかということがありましたので、現在の行革プランでは、各般の改革効果を明らかにしていくという見地から、本県独自の要因である震災関連県債残高の影響を除いた将来負担比率を他府県水準並みに縮減していくということを目標としたわけであります。震災関連分は別途努力という形にしたわけであります。
ご提案のように、震災影響分を含めた将来負担比率の目標設定は、県債残高の総量管理という意味では検討すべき指摘であります。来年度予定している3年目の総点検において十分に検討してまいります。


3 教育の機会均等について
学力の国際比較(PISA調査)における日本の学習到達度は、かつて国際的にトップクラスでありましたが、ゆとり教育などの影響もあって平成18年調査時までは低下傾向となっていました。国では、子どもたち一人ひとりに応じたきめ細かで質の高い学習指導を行うために、23年に、30年ぶりに40人学級を見直す法改正を実施し、段階的な少人数学級を実現するとともに(もちろん本県は国に先立ち独自に少人数教育を実施してきたことは皆さんご存知のとおりで高く評価するところです)、ゆとり教育を見直し、授業の内容を質量ともに増加させた新学習指導要領を24年度から本格実施しています。
また、PISA調査では、特に学力の低位層が増加していることや親の所得と学力の相関も見られることもわかってきました。学校教育法等では「経済的理由により就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対して、市町村は、必要な援助を与えなければならない」とされ、具体にはノートや問題集などの学用品費、修学旅行費、給食費などを支給することとなっており、子どもに必要な教育の機会を与えることやその環境を整備することは公の責務となっています。
昨今、生活保護のことが話題になっていますが、県内の生活保護受給比率は高い自治体でも3%台ですが、県内の自治体の公立の小中児童生徒数のうち就学援助を受けている比率を調べると、23年5月1日現在で、尼崎市の26.9%、神戸市の23.5%、明石市の20.8%。3割近い比率の児童生徒が就学援助を受けている自治体があることに驚きました。一方、比率の低い自治体ではたつの市3.4%、太子町4.5%、香美町の5.1%。県全体の平均は17.3%となっています。10年前の平成13年度の県平均が12.2%でありましたから5.1ポイント悪化しています。この数値は生活保護法の定める要保護者と準要保護者の世帯の子どもを合わせたものですが、準要保護者の就学援助については、市町による援助条件の差もあるようです。いずれにしましても親の収入等により受けられる教育環境の差を少しでも少なくしなければならないと考えます。
ところで、高校について欧米の先進諸国では日本の高校にあたる後期の中等教育の無償はある意味で当然であり、学びたい人が家庭の事情で学べないというのは不幸であります。OECDの調査では、日本のGDP国内総生産に占める公の小中高の学校教育費の割合は2.5%となっています。これは加盟32ヵ国中30位と最低レベルであります。この調査は平成20年のものなので、同22年度からスタートした「公立高校授業料無償化」「私立高等学校等就学支援金」、義務教育の少人数学級を含めると幾分かは改善されると思いますが、日本のような資源のない国が世界の中で生きていくとき、教育は国の要諦であります。
そこで、「県立高校授業料の無償化」ですが、これについて導入時から現場の声を含めてどのような評価をされているのでしょうか。また、授業料の無償化が導入されましたが、依然として経済的な事情により就学が困難な家庭もあると聞いています。こうした経済的な面も含めて、高等学校の教育の機会均等を確保するうえで、県としてどのような取り組みをされているかお伺いします。

(答弁)(大西教育長)
高等学校は進学率が約98%に達しています。こうした数字の面からは、実態的には義務教育に近い国民的な教育機関であることを踏まえ、ひとりひとりの学ぶ機会を社会全体で支えるという考え方に基づき、平成22年度から、公立高校へのいわゆる授業料の実質無償化と私立学校への就学支援金制度が導入されたところです。
導入当初の平成22年11月に実施した県立高校1年生の保護者へのアンケート調査結果では、約75%の保護者が家庭の教育費負担が軽減されたと感じています。経済的な理由による県立高校の退学者数を見ると、平成21年度に17人であったが、22年度は14人、23年度は11人と減少しています。また、定時制高校の定員充足率も平成21年度の82.8%から24年度の84.9%に向上しています。最近の県立学校への聞き取り調査によると、生徒の心理的負担が軽減した、あるいは、不登校生徒など長期欠席者に対して授業料を気にしないきめ細やかな指導が学校でできるようになった、あるいは、授業料未納者に対する督促事務が軽減した、などの意見があり、「教育にかかる費用を心配することなく、安心して勉強に打ち込めている」という面では、効果があったものと考えています。
教育の機会均等とのお尋ねであるが、知事部局で実施している私学助成もその意味では、効果があったと思っています。教育委員会では、通学交通費を含めた奨学金の資金の貸与、勤労青少年の修学促進のための奨学金・教科書の給与、あるいは、定時制課程における夜食の提供、こうした経済的な面のほか、生徒の幅広いニーズに対応する多部制単位制高校の設置、日本語の指導が必要な外国人生徒を支援する多文化共生サポーターの派遣などを実施しています。
今後も、どの子どもたちにとっても個性や能力に応じて安心して教育を受けられるよう、知事部局とも連携しながら、教育の機会均等を図る取組の充実を図ってまいります。


4 観光振興に係る大河ドラマ平清盛の効果と『軍師官兵衛』(黒田官兵衛)への期待について(産業労働)
先ごろV6の岡田准一さん主演で平成26年の放送決定が決まったのはNHK大河ドラマ「軍師官兵衛」です。軍師官兵衛というのは戦国時代の武将 黒田官兵衛のことであります。私の地元姫路市では姫路城生まれということで、今回の放送決定について大変大きなニュースとして取り上げられました。官兵衛は姫路に生まれ、後に織田信長や豊臣秀吉の家臣・軍師として、また、九州は福岡藩黒田家藩祖として活躍しますが、兵庫県との関わりは実は姫路だけではありません。
①官兵衛の妻・幸圓(こうえん)は加古川・志方城主・櫛橋氏の出身であり、
②西脇市の荘厳寺(しょうごんじ)では黒田家系図が見つかり官兵衛の出生地を西脇市黒田庄町とする説もでて、
③三木市では、三木城主 別所長治との戦い。兵糧攻めで有名。
④伊丹市の有岡城では、荒木村重に捕らえられ、1年以上牢に幽閉されたり、
⑤宍粟市では、初めて1万石の大名となったともいわれ、
⑥佐用町では、上月城攻めに際して、戦国時代を代表する秀吉のもうひとりの軍師 竹中半兵衛と共に戦い
⑦朝来市では日本のマチュピチュとも呼ばれる竹田城を攻め、生野銀山を支配下に置き、南は淡路島にわたり、
⑧南あわじ市の志知城を攻め、拠点としたり
⑨神戸では、有馬温泉へ赴き、湯治のため過ごしたとの記録が残っています。
ざっとあげただけでも県内の多くのところで活躍しています。
現在の大河ドラマ「平清盛」の放映に伴う兵庫県内経済への波及効果を昨年8月に日本銀行神戸支店が発表しましたが経済効果は150 億円。効果額の150億円は、県内総生産(2010年・名目)の0.08%、県内観光消費額(2009年度)の1.3%に相当するものとされていました。
そこで、「平清盛」の放映によって本県観光にどのような効果があったものと考えておられるのか、また、「軍師官兵衛」の放送決定後、ゆかりのある自治体、例えば姫路市では副市長を本部長とした13人体制の庁内プロジェクトチームを設置すると共に、姫路商工会議所、観光関連団体などと(仮称)ひめじ官兵衛プロジェクト推進協議会を設立する予定と聞いていますが、こうした取り組みに対する補助金等の支援をはじめ、あいたい兵庫キャンペーンなど、あらゆる機会を通じての積極的PRが必要と考えますが、県としてどのような支援策を考えているのか、併せてお伺いします。

(答弁)(井戸知事)
観光振興における大河ドラマ「平清盛」の効果と「軍師官兵衛」への期待についてであります。
大河ドラマの主人公として、清盛に続き本県ゆかりの人物が、黒田官兵衛が、取り上げられることは、兵庫の魅力発信に向け絶好の機会でありますし、姫路ともどもその誘致に努力をしてきた私としても大変喜んでおります。
「平清盛」は、「あいたい兵庫キャンペーン」のテーマに据え官民一体となり全県域への誘客に努めてきました。また、神戸市と連携して「KOBE de 清盛2012」ということで、歴史館・ドラマ館の運営や、神戸の清盛隊によるPRなどを推進しております。
キャンペーンでは、歴史館・ドラマ館や清盛ゆかりの地を紹介したガイドブック、人気ブロガー等を活用したきめ細かな情報発信を行っております。これにより、地域の歴史資源が再認識され、各地で観光客の増加に繋がったと考えます。
例えば、兵庫津では清盛茶屋のおもてなし等によりまして、まち歩きを中心に観光客の周遊性が高まりました。
また、たつの市の室津の賀茂神社では観光客が7割も増えたということから、まち歩きボランティアガイドの養成を強化するなど、今後に繋げる体制整備も進められています。
「黒田官兵衛」は、播磨の国に生まれた戦国の武将として名高く、ゆかりの地はご指摘のように県内五国に広がることから大きな集客が期待できるのではないか。ご指摘のように、県内各地の黒田官兵衛の足跡を訪れる「あいたい兵庫キャンペーン」につないでいきたい。このように考えます。
県としては、関係市町と十分連携を取り、イベント等の開催、散策マップの作成、スタンプラリーの実施など情報発信などに幅広く取り組んでいきます。
既に姫路市では、民間団体が参画した推進協議会の設立準備が進められています。
今後、こうした県内各市町や観光協会などの取り組みと緊密な連携を図り、県としても効果的な観光プロモーションを展開してまいります。
また、来年のNHK大河ドラマは「八重の桜」であります。この主人公新島八重の最初のご主人は川崎尚之助といいます。出石藩出身で、会津の日新館で教え、会津戦争中に行方不明になったとされています。したがいまして、舞台として、兵庫がまた登場する可能性が高い。私としては、平清盛ホップ、八重の桜ステップ、軍師官兵衛ジャンプと盛り上げていきたい。このように考えている次第でございます。どうぞご支援をよろしくお願いいたします。


5 議会改革の行政としての受けとめ(財 政)
県議会では、昨年6月に「議会改革等調査検討委員会」を設置し、さらなる議会機能の充実・強化や活性化、県民に開かれた議会に向けた方策等の検討を重ねてきました。
  その成果として、県民に対し、議会の基本理念を明らかにするとともに、議会の役割や運営原則、議員の責務や役割などの議会に関する基本的な事項を定める「兵庫県議会基本条例」を、今年3月に全会一致で可決しました。また、議会改革等調査検討委員会が取りまとめた「議会機能の充実・強化及び議会活性化に関する事項」及び「議会基本条例に関する事項」に関する最終報告書に基づき、今年度から7つの常任委員会が、調査及び審査能力、政策立案機能をより高めるため、それぞれの所管事項の中から特定テーマを選定し、自主的に調査研究に取り組んでいるほか、管内調査の中で県民との意見交換会も実施しています。
そこで、本県議会によるこうした議会改革の取り組みや本会議での一問一答方式の導入、それに伴う対面式議場など、実際の変更点について知事はどういった点に気付かれ、またどんな感想をお持ちでしょうか。
また、さまざまな議会改革の議論の中で、知事の反問権についての議論もしました。通年制を導入するなど議会改革に取り組んでいる長崎県議会などいくつかの県議会では知事に反問権を付与し、同県議会、宮城県では実際に反問権が行使されたとのことです。本県議会では議論の結果、反問権については明記を見送りましたし、最終的に議会の権限に属することではありますが、直接の当事者の意見を聞いたことがありません。反問権について考えがありましたら併せてお答えください。
 
(答弁)(井戸知事)
地方分権が進展し、地方公共団体の自己決定権と責任の範囲が拡大していく中で、二元代表制における議会の責務や役割も益々重要となっている。
このような状況の下に、議会がその機能の充実・活性化をして議会改革を図り、基本条例を制定されたことは大変有意義で、県民の期待に答えていると思う。
本県議会においては、ご指摘の一問一答方式の選択的導入や常任委員会における特定テーマに関する調査研究など積極的に議会機能の充実・強化に取り組まれており、大いに敬意を表する。
一問一答方式の導入や再質問の回数制限の撤廃により、質問毎に議論の内容や争点がわかりやすくなる一方、一括質問方式は、理念や主張を体系的統一的に意見として主張できるので、このバランスをとることも必要であると考える。今後とも、議員各位、当局とも一層切磋琢磨し、本会議での活発な議論を行い県政推進に努めてまいりたい。
反問権については、議員の質問の趣旨や争点を明確にさせ、相互に議論を深めながら課題を解決していくものとしては意義があると考える。しかしながら、審議時間には制限があること、また、質問テーマも多岐にわたることを踏まえると本会議の円滑な運営に支障をきたす恐れもあるなど課題があると考える。
二元代表制の下での自治体運営の基本は、執行機関と議決機関の適切な協働にある。今後一層の議会改革の取組みに期待するとともに、ともに県民から負託を受けた者として、県民の多様な意見をくみ取りながら、県民本位の県政を展開していきたい。