県会健康福祉常任委員会の管外調査2日目。国立大学法人 旭川医科大学。




高度情報通信機器を活用した遠隔医療の取り組みについて、中でもまず『専門医が地方医師を支援する遠隔医療』について同医科大学学長政策推進室の林さんから説明を受ける。


旭川医科大学で遠隔医療に取り組んでいる理由は医師不足。というのも資料のように道内では札幌と旭川は医師が全国平均並にいるが、道東をはじめ医大のない地域では医師不足が顕著となっている。医師不足は北海道では全国的に問題になる前からの問題で遠隔医療には1994年から取り組んでいる。

地方の病院と旭川医科大学をテレビ電話でつなぎ、地方の医師が患者を診察する際に、大学の専門医がアドバイスする仕組み。テレビ電話で地方の患者の診察を直接実施することは医師法の規定によりできないそうだ。


市立根室病院の眼科手術を遠隔システムで支援する様子。


現在は遠隔地でも詳細に診断できるように3D映像が導入されている。奥行きのある映像のため、手術現場と同じような画像を遠隔地で見ることができるという。写真は3Dと2Dの画像の違い。




兵庫県から出席した県病院局、健康福祉部、議会の職員も驚きの声をあげていた。


旭川医科大学から遠隔医療支援を受けた実績のある病院

保険診療の観点では支援する病院側は基本的にボランティア。ただし、地方の患者の読影診断依頼を受けているとしてその部分については保険適用があり、わずかだが診療報酬があるという。最初の危機導入などの設備投資は国の補助金などを活用したそうだ。

このほか遠隔医療システムを利用した『退院患者を支援する遠隔在宅医療』では、同医大を退院した患者の中でも100キロ近くも離れたお年寄りに連日通ってもらうことが物理的にも難しいため、糖尿病患者などが病院に来ずとも血圧計のデータを病院に送れるような仕組みである。

最近は遠隔医療に関心の高い中国から技術支援や研修の依頼があり、全て無償で支援しているという。

その後、実際のセンターの見学。


昨日も中国に対する遠隔支援をしたばかりという…。今彼国がとっている対応を考えると複雑な思い。しかし、これが日本の大人の対応でもある。

また、遠隔医療については医師の中でも反発する人たちもいるようだ。背景から容易に想像ができる。導入に際して学外からはかなり強い反発もあったようだ。眼科の専門医でもある学長自ら取り組み実践したからこそ反発があってもここまででできたということだろう。

旭川医科大学の吉田学長のHP(遠隔医療について)

その後、札幌市の北海道中央児童相談所。



栗本副所長のご挨拶。稲垣地域支援課長から事務概要の説明を受ける。

道には8つの児童相談所があり、当中央児童相談所は札幌市に所在している。しかし、昭和47年に札幌市が政令指定都市に昇格し、児童相談の事務も道から引き継いだため、当所の管轄は札幌市を除く27市町村。最も遠方には車で3時間かかるという。


児童虐待相談処理件数の推移。全国的には右肩上がりだが、当所や道ではピークを数年前に高止まりしている状態である。

当所所管分(23年度)の虐待者は、総処理件数171件のうち実父82件48%、実父以外の父親22件13%、実母60件35%、実母以外の母親1件1%、その他6件3%となっている(22年までは実母がトップだったが、実父の割合が増えてきている) 。相談経路は警察からが87件51%と最も多い。相談の処理状況も大半の149件87%は在宅のままの助言指導で、施設入所に到ったのは12件7%。


業務の流れ


終了後、道立特別支援教育センター。藤根所長のご挨拶。

道内には63の特別支援学校があるがそのセンター機能、相談、研修、研究機能を有する。来所による相談のほか、道内が広いので各地で巡回相談を実施している。最近は知的障害の子どもを持つ方の学校選択にかかる相談が多いという。


道内全63校の学校案内が置かれている


教員等の視覚研修室。視覚障害者の使う白杖などの使用も体験できる。

終了後、道立心身障害者総合相談所。年間に身体9000件、精神4000件の相談があるという。


道内は広いため巡回相談も実施するが、遠方から来られる方のために宿泊可能な部屋も用意されており、食費(夜800円)以外は無料という。特に時間がかかる障害判定の際などに使われるそうだ。


障害者の方が就労できるように、身体能力等を把握するための機器等がある部屋。

上記の道立3機関は全て同じ建物内に同居している。ワンストップサービスに近く連携等でメリットがあるという。ただし、政令指定都市の札幌市と所管がはっきり分かれており、正直なところ所管を分けるのは効率的ではないと思う。もちろんこのあたりは施設の方も十分に理解されているだろう。