ホテルから徒歩で長崎県庁。


長崎県庁。「縣廳」は旧字体。


本日の長崎県議会の予定が表示されている。

昨日の現場訪問を踏まえて、長崎県の離島・僻地医療・離島医療対策(医師の養成制度/離島医療支援対策)について、長崎県福祉保健部人材対策室、の担当の方から説明を受けた後、意見交換。


挨拶する小池政調会長


長崎県のへき地医療・離島医療対策、ドクターヘリについて説明を受ける。

まず医師確保対策。昨日も話があったが、長崎県独自の医学就学資金貸与制度の創設と自治医大生にも同様の資金貸付を行う制度を創設。卒業後、離島での一定の年限の勤務を義務付け、それにより貸付資金の返還を免除する制度である。前者は6年間の総額で930万円の貸付となり、勤務後貸与期間の1.5倍以上の期間勤務し、うち半分を離島で勤務すると返還が免除される(9年間のうち4.5年を離島勤務すればよい)。後者の自治医大の場合は実験実習費も含むため貸付総額は約2,300万円にもなる。自治医大既定の義務期間9年間のあと、県貸与期間(6年)の半分を離島等に勤務すると返還が免除される。いずれも途中での契約解除の場合は、貸与年率を14.5%として計算し、返金を求めるという。他府県では10%が一般的という解約防止のためのペナルティー金利だが、さらに高い。これでも在学中に途中解約する人が約半数もいるという…。

その他、県ドクターバンク制度を設け、離島の診療所に勤務すれば年1,600万円の年収を保証し、勤務年数2年ごとに半年間の有給期間を保証(3年間離島勤務すれば、1年間自主研修できる)。自主研修期間にも年間1200万円の報酬を支給するという。そのほか大学への寄付講座や在学中に離島医療を支える機運を醸成するための交流組織や「離島医療医師の会」の支援など昭和40年代からあらゆる手立てをとってきたという。これらにより離島の常勤医師の確保がなんとかできているそうだ。

最近、進学校の理系の生徒の中で医学部希望者が増加しているという話は何度か書いた。ある高校の教諭に聞くと昔は東大理Ⅰなどの工学系に進学していた優秀な生徒が地方の国立大学医学部への進学を目指すという。需給バランスだけの話だけでなく政治も関係しているが…。

その後、ドクターヘリについて。
なぜドクターヘリを導入したかと言えば、重症患者には30分以内に救命処置を行うことが重要で、長崎県の実績では、平成22年度で55.5%が30分以上かかっている(全国は58.6%。長崎県は全国より早い)。ドクターヘリの導入により救急現場から高度医療機関への搬送時間が短縮されるほか、医師を救急現場に迅速に送り込むことにより救命処置を速やかに開始することができ、救命率の向上や後遺症の軽減に効果を発揮するという。

ドクターヘリの出動回数は592回。比率としては長崎県内の全救急出動件数約49,000件のうち1%強(22年度)。他の導入事例からの推測から、隠れている事例(アンダートリアージ)があるのではという判断に立ち、今年度からヘリ要請基準を緩和すると共に、119番通報等にあらかじめリストアップされている症状があればヘリを要請するキーワード方式を導入した。これにより今年は運航数が増加している。

予後が確認できた症例の解析によると、導入5年間の実績で、救急車では死亡していたと推測される事例が63例あり、結果的には、月に1名程度の命を救うことができたと分析している。

一方、運用コストは1フライト(22年度年間592フライト)あたりで計算すると約30万円(搭乗医師・看護師等の人件費・謝金等は国立病院機構側が負担しているので含んでいない)。患者負担は通常の医療に関する自己負担は除き無料。佐賀県西部の委託も受けているが、年間の負担コストを事後に計算し、佐賀県に負担してもらっている。

昨日聞いた話では、医療現場で費用対効果という話は出ないものの、医師等の人件費等を含めた運用コストが約3億円ということになるため、導入の判断等は政治(行政側)が判断すべきということも言われていた。国が費用の多くを補助することで導入する自治体が増えているが、国が負担するということは国民が負担をしているということ。国民の負担つまり税収はこのところほとんど増えていないが、サービスだけでなく負担についても考えさせられる話だった。

(参考)
ヘリ新規調達コスト6億5千万円、運航経費では約2億5千万円(2006年度実績ベース)が必要とされる(ヘリ運航大手の朝日航洋HP)

長崎県のドクターヘリ運営についてHOSPITALVIEW(2010.10月号)掲載】
この中で、「DH(ドクターヘリ)導入の必要性については、「長崎は離島が多いからですね」とよく言われますが、実際はそうではありません。多くの場合は離島内での初期対応が可能で、実際、高次医療のための施設間搬送を除くと、離島へのDH出動は、年に数回にとどまっています。実は長崎県でDHによる搬送が必要だと考えられていたのは、本土地区でした。市街地では、渋滞が多いだけではなく路面電車が走っている地域もあり、救急車搬送に時間を要してしまうことが多々あったのです。救急医療では「15分以内の早期の治療開始が有効」ですが、このような地域こそDH導入により、早期治療の開始、搬送時間の短縮などが期待されていました。
 このように、DHは、離島や過疎地、積雪地といった特殊な環境だけで必要なものではなく、日本のあらゆる地域で救急医療に貢献できるものだと思います。」

とある。無医村の離島が少ないことを昨日記したが、専門医も同様に、救急車やドクターカーよりも、ヘリコプターを使うことで現場に早く到着でき、救命率を高めることができるという見立てである。


その後、長崎県教育委員会の皆さんから教育活動サポート人材バンクについて説明を受ける。退職教員等の智恵と経験の活用が目的。手当や謝礼は県としては支出しない、ゼロ予算事業で、それぞれ相対で相談してもらうという。質疑応答など。

その後、神戸へ戻る。議会事務局のI政務調査員と議会改革について打ち合わせ。その後、姫路へ戻る。