県議会文教常任委員会の管外調査。県立高校改革・通学区域見直しに関連した調査を行う予定。

播但線で姫路。ホームで高校同級生のHくんと5年振りに出会う。その後、新幹線で静岡。


静岡県庁(県議会棟)。昭和12年竣工の建物。歴史が感じられる。


静岡県教育委員会の田中学校教育課長ら高校教育担当の皆さん

「静岡県立高等学校第二次長期計画-平成27年度を見通して-」と「静岡県立高校の通学区域見直し及び入学者選抜制度について」と題する資料に基づいて、平成20年度に県内10学区から全県1区へと学区制度を廃止した経緯、影響等について説明を受ける。静岡県の場合、学区を優先して見直したのではなく、入試(選抜)制度の改革が優先されていたことから、そちらの説明もあわせて受ける。

静岡県の場合、旧来から全日制普通科以外は全県一区だったが、普通科についても平成4年に10%を上限に隣接学区からの通学を認めた。また、平成15年からは定員の20%を前期、残る80%を後期とする前期・後期制を導入し、前期については県内全域での志願を可能にするとともに、後期は隣接学区の志願を可能にした。しかし、前期の募集定員が少ないことで、試験に落ちる中学生がかなり出たことから見直しの機運が高まり、平成20年度には、前期後期制を廃止して、学校裁量枠と共通枠を組み入れた一般選抜を導入。学校裁量枠は募集定員の0~50%を各学校の判断で設定し、残る定員を共通枠という県内共通の試験で受験させることとした。

(後刻訪問する県立静岡高校では、定員320人のうち3%程度(約10人)を「学校裁量枠」として「野球」の実技検査による選抜を実施しているという)。



居住地の学区、隣接区、平成20年度改革後の入試制度改善後の学区間の制度の動向については以下の通り


その後、意見交換(以下、まとめ)

Q.そもそもの目的はなんだったのか?
A.少子化で子どもが減っていることと市町村合併で旧来の学区区域がいまの行政単位とあわなくなったこと。そして学区そのものの問題よりもむしろ選抜制度を変えるということが長期計画の中の課題としてあった。

Q.学区廃止に対して私学の意見はどうだったのか?
A.そもそも暗黙の了解で、3分の2は公立、3分の1は私学というものがあった。現在は、私立の定員の自由化を実施しており、私私、公私間の競争もある。学区について意見があったとは承知していない。

Q.進路担当教諭の負担増は?
A.特にあったとは聞いていない。

Q.全県1学区になって遠方に通う生徒も増え、途中退学する生徒が増えたのではないか?
A.途中退学の比率は1%を切って逆に減少している。逆に(行きたい学校に行っている)好影響が出ていると考えられる。

Q.高校の統合(平成12年10校を5へ再編。平成17年に12を5へ再編する計画を現在実施中)と同時に改革を実施したと聞いているが、学校への愛着心がなくなるという声はないか?
A.統合対象となった高校の地元の首長さんなどは必ずそれを言われる。その高校の同窓会も同じ。しかし、子どもは行きたい学校に行っている。極端に遠いところにも通っていない。元々人気のあるなしはあって、それは子どもの嗜好の集中であり、学区の影響ではない。少子化のためやむを得ず再編を進めている。

Q.兵庫県では序列化が進むという反対の声をよく聞くが影響は?
A.特に影響はあったとは考えていない。

Q.全県での東京大学など最上位校への進学実績が上がったということは?
A.特にあったとは聞いていない。


その後、県議会本会議場の見学。


その後、明治11年開校という伝統校「静岡県立静岡高校」へ。


県立静岡高校の浅羽校長先生はじめ幹部の皆さん。静岡県教育次長時代にのI兵庫県知事の元部下という事務長さんも。

以下は意見交換や説明などで構成(まとめ)

静岡高校に通う生徒の学区内居住者の割合は、10学区制だった平成5年には約96%。学区が廃止されるなどの現行制度が導入された21・22・23年をみると約75%。

県下の公立高校は99校。私立は33校。中学生の多くは公立高校を目指すという公立優位の県である。生徒の男女比率は男6女4。1日の授業は8時10分にHR開始と早く、65分×5コマである。その後は部活である。文武両道ほ目指すという話をしたが、部活動は全員参加を義務付けている。目標は全部活が県大会へ出場すること。野球部は春夏あわせて35回甲子園に出場している。

特徴としては土曜授業が年17回あり、うち10回は中学生・保護者等を対象とした公開授業にしている。土曜出勤の教師は、平日のうち半日を休めるように配慮している。また、生活の記録といって毎日何時間家で勉強したかを担任に書いて提出させている。教師も毎日見るだけで大変だが、毎日面接しているのと同じようなもので、生徒の変化にすぐ気付けるというメリットもある。

学生の本分は勉強で、リーダーを目指すことや上を目指すことを学校方針として明文化している。静岡は田舎なので東大・京大を目指すというと変わった人というイメージがまだ残っているし、生徒は大人しく謙虚なため、教師の側が上を目指せという動機付けをしてあげることが必要である。具体的には東京大学の授業やOBとの交流を1泊2日で実施する体験ツアーを3年前から実施。今年も学年320名のうち72人が参加した。東大京大の会をつくって、「君だけではない。他にも多くの生徒が一緒に上を目指しているよ」という工夫もしている。模試の解説もすぐに高校の教師がしたりもする。

静岡県の県立学校は一部の小規模校を除き、校長のほか副校長、教頭が配置されている(以前は教頭人制だった)。副校長には人事評価や決済の一部を委ねている。

施設面では、全教室が冷暖房完備。図書館は県下随一の蔵書数を誇る。平日は午前8時から午後7時まで、土日は16時半まで。ボランティアの協力を得て、年間340日開館している。運動施設では体育館が2つある。別に雨天時にも運動できる全天候型の練習場もある。甲子園出場に際してのOB等の寄附が余ったりするとその予算で運動施設を整備したりしている。同窓会の寄附等もある。施設は多幸と比べても恵まれていると思う。




図書館