神戸のラッセホール。党県連青年局の政策部会勉強会。3名の方からの講義と質疑応答を昼食を挟んで夕刻まで行う。。


まず前三重県議会議長 三谷哲央さん。三重県議会の「議会改革」について(下に質疑応答を含む詳細を記載)。改革を現実に実践した方なので説得力が全く違う。議会の機能向上を含めて思いも強い。こうした人がいたからこそできたのだろう。


私も挨拶


次に立命館大学経営学部の石崎祥之副学部長「産業政策と観光政策」。外国人観光客を連れて行く京都の5スポットのほか、「観光に特許はない、徹底的にいいところを盗め」というアドバイスも。家島の観光振興のアドバイス等もやっているそうだ。


最後は政策部会長の石堂姫路市議と元同僚というコンデナストの田端信太郎さん「ITの活用について」。政治家にとってのITの活用方法として、有権者との関係をツイッター、FacebookなどのSNSや動画配信等の関係をわかりやすく解決。小沢一郎さんがニコニコ動画に出演する意味など興味深い観点も。



★前三重県議会議長 三谷哲央さん「議会改革」について(要約改変、[]内私見を含む全文責:竹内)

■県議会改革のきっかけ
当時の北川正恭知事が全国で初めて導入したアメリカ型の事務事業評価システム、「プラン(戦略策定)」「ドゥー(戦略展開)」「シー(評価)」の政策推進システムが改革の成果を出し、マスコミにも大きく注目された。逆に議会の存在意義が問われるようになった。

■議会基本条例
地方自治法には地方議会の権能についてほとんど記載がない。議会が何をやるか、何ができるかをルールとしてまとめようとした。会派も位置づけた。当時は北海道の栗山町しか先行事例がなかった。
議会基本条例を制定して終わりではない。中身を住民の関与もないまま制定したり、制定しても議員自体が中身を理解しない条例では意味がない。改革の原動力にすべきである。
[現行の会議規則では議会内部しか拘束できないのに対して条例に格上げすることで全体に強制力を持たせる側面も]

■知事(執行部)と議会との関係
「知事与党」とか「知事野党」とかいう言葉は三重県議会では禁句となっている。会派対会派という関係ではなく、知事と議会がどう向き合うかが住民自治にとって重要である。先の知事選挙でも応援には行かなかった。今回の選挙でも自民系の知事が当選したが、議会の対知事の関係は変わっていない。しかし、ここまで(首長と議会の成熟した関係?)いくのに時間がかかった。

(知事の反問権)
県議会の各会議においては知事の反問権はない。基本条例制定時に知事にも必要かどうか聞いたが、現行でも十分反論ができるといわれた。反問権は書き込まなかった。質問で何を聞いているかわかりにくい議員もいるので、執行部はよく理解しているなと感じるところもある(笑)。知事と議会で議論はしたい。(「反問」を内容を聞き返す確認ととらえ、反問とは別の)反論権も検討しているが、「反論」権を知事に認めると、再議(議会が否決した議案を復活させることができる権利。地方自治法で認められた知事優位の強い権限)の濫用に歯止めがかけられる(メリットがある)と思う。議会が可決する前に執行部の反論を聞けば、再議は簡単に提起されないかも知れない。現在、検討中である。
[執行部が質問内容を聞き返す確認の発言を認める必要がある。特に一問一答や再質問の場合、何を聞いているのかわからない場合がある]

(質問の事前通告)
本会議の質問にあたり項目の通告はするが、答弁とのすり合わせはしない。委員会は通告もない。

Q.質疑通告なしのガチンコがいいのか事前通告がいいのかと判断が分かれる。
A.通告をしないと議論が面白いし、緊張感がある。本会議の代表質問、一般質問は質問の趣旨を事前通告している。質問と答弁のすりあわせは一切ない。委員会は通告なし。知事が入る委員会の総括質疑はテレビ中継もある。知事が答弁書持たずに答弁するのはかなり緊張感があり面白い。

Q.詳しい質疑通告は不要という話だが、相手に資料等の準備をさせておくことで議論が深まるというメリットもあるのでは?
A.事前調整までするとお互い文書を読むだけとなってしまう。鳥取県の片山元知事はある議会を「学芸会」みたいと言っていたが、学芸会はせめてセリフは暗記している。朗読会という声もある(笑)。関西のある議会では、事前にすり合わせも全て終えてその時点で結論は出ているようだ(笑)。県民の方々に議論のプロセスを見てもらうことが議会の役割としても大切なものなのに、大事な部分を自分たちで殺している。そのためにはあまり事前の通告に深入りしないほうがよい。
[データや数値等の答弁が必要ならその旨を事前通告しておく必要があると思う]

■議長
(議長の任期)
法律では4年であるべき議長の在任期間だが、申し合わせにより1年から2年に延長した。1年だけの任期ではやりたいことをするのは難しい。
[議会基本条例よりもまず『議長』の任期と選出方法を改革することが最優先すべきだというのが結論]

(議長の選挙)
立候補制である。5人の県議の推薦を得れば誰でも立候補できる。議長選挙前に所信表明をする。期数・年齢、順送りではなく、所信表明に対する質問を受けるぐらいの根性がある人に立候補してほしい。
[所信表明が議会改革の公約となり、改革の強い推進力になると思われる]

Q.4月に初当選したばかりだが、最初の議長選挙に立候補制(+所信表明)を求めたが、いろいろ理由をつけて拒否された。
A.議長が公平公正な議事運営をするのは当たり前。所信表明や議長マニフェストを表明するのを嫌がる人はいると思う。自分が議長候補になった場合を考えると嫌なので、若くても反対の人がいるのだろう。

(議長の記者会見)
1ヶ月に1回、定例の議長記者会見を開くことにした。記者の意地の悪い質問もある。想定問答を事務局に用意してもらっているが、役に立たない場合も多い。とはいえ、逆にどんな質問にも答えることができるような議長がふさわしいと思っている。

Q.議長が順送りの名誉職という私のいる議会の状況では、(毎月、県政課題全般を含む)記者会見をすると考えると、長老の反発があったのではないかと思うが?
A.期数・年齢だけで議長を選んでいるようでは首長に対峙していくことはできない(二元代表制とは言えない)。議長の定例会見は滋賀県議会でも始めたと聞いている。
[これにより議長就任の要件として質質の要素が拡大する可能性が高い]

■議会事務局
(議長の人事権)
法的には議長に職員の人事権があると言うが、確かに辞令交付は議長が行う。しかし、現実には議会事務局の幹部職員は知事の方を向いている。いずれ帰ると思うからである。なかなか改革はできない。形式的には政治任用の予算は確保している。公共政策を学ぶ大学院の学生のインターンを議会で短期採用してきた。京都大学大学院、今年は東大も。インターン出身者が国家公務員も三重県職員の正規採用試験にも受かった。国を蹴って三重県に入ったと聞き、嬉しかった。
[現行の都道府県の人口規模では議会事務局職員の単独採用等は困難だろう。都道府県の合併や道州制等による規模拡大が必要]

Q.私も当選したばかりだが、最初に議会改革を取り上げようと思った。すると、議会事務局の職員が来て、「それを言ったら、議員の資質が問われる」とか「他の議員に意見を言われる」とか発言を止めようとする。
A.議会活動が活発になってくると職員も議会事務局で働いていることを誇りに思うようになる。そうすると改革も一緒にしようと思うようになる(波風を立てないようにした方がいいとは思わなくなる)。
[そういうものなのか。納得]

(事務局職員に必要な立法技術)
法務能力をあげないと議員提案条例はできない。議会事務局に法務担当が必要になる。議会事務局の職員を衆参の法制局に派遣して勉強させるようにした(2年間)。議会事務局だけでなくいずれ知事部局に帰っても勉強になる。
[担当係長を置いているが、現実に議員提案の動きがないなら宝の持ち腐れとなる。]

■議会の会期
年4回の会期だったが、地方自治法が改正され、招集回数を自由に決められるようになった。年間2回、通算240日ぐらいに改めた。

(会期増のメリット)
①本会議で一般質問(提案されている議案とは無関係の全施策について質問が可能)だけでなく、議案質疑が行われるようになった。
②委員会の開催日数も約2倍となり、外部の参考人質疑や公聴会が行われるようになった(公聴会を経て約50年振りに予算修正につながった)。震災現場に行った消防士の生の意見を聞くこともできた。
③執行部へ質問するだけでなく議員同士の討議をする時間もできた。→議員提案条例(議員立法)につながっている。
④知事の専決処分(議会を開かずに決定できる知事の特権。鹿児島県阿久根市で市長が濫用した)がなくなる。
現行、議会を開会する招集権は首長にあるので議会の意向では開けない。会期をなくして通年議会にしておけば、いつでも議長権限で本会議を開ける。専決処分をなくせる。国の税制改正が年度末となり、地方税関連の改正も議会が終っており、知事の専決処分となる場合もある。課税(増税)については国民主権の中でも最も先決処分になじまない。
[会期増がこれほどの改革につながったというのは驚き。勉強になった。]

(会期増のデメリット)
委員会が2倍になれば当然、議事録も2倍に増える。委員の交通費も実費とはいえ増える。会期中にはゴルフに行かないなどと決めている人もいたので…。

(これからの会期のあり方)
現在、通年制にするか、通任期制(4年)はどうなのかなどの改革の議論をしている。

■議会の招集権
議会の招集権は知事にあり、議長にはない。通年議会にすれば実質的に議長がいつでも議会を開くことができ、知事の専決処分はなくなる。
Q.通任期制にすれば首長の招集権はなくなるが、私の解釈では、現行でも可能ではないかと思うが、現行法では不可能なのか?
A.現行法では無理。全国議長会で議長の議会招集権を国に求めているが、全国知事会はそれほど反対でもないが、市長会と町長会が絶対反対のようだ。市町の一部では、議長がいつでも自由に議会を開くということになると、長の仕事ができなくなる(混乱を招く?)という忌避感があるようだ。
[阿久根市長の超法規的行為に驚いたものだが、全国的に見れば、もっと小数の得票で当選する議員側にこそコンプライアンスとは無縁な人がいることは容易に想像がつく]

■情報公開
大変重要。議会役員選出協議の場を含めた会議を許可制ではなく通常公開している(議会基本条例で公開を規定)。赤ちゃんを連れてきたお母さんもいた(笑)。泣いたら出て行ってもらうが、会議に迷惑をかけなければそれでいい。マスコミのテレビカメラ入りも許可なしでOK。政務調査費の領収書は情報公開請求の必要もなく見られる。

(議会がどう見られているか)
鹿児島県阿久根市や名古屋市の議会のリコール成立を見るまでもなく、住民の議会に対する不満は強い。それは議会の姿が見えないということと高い報酬で遊んでいるというイメージ。徹底した情報公開が必要である。

三重県議会では諮問会議で第三者の検証を受けた。『県議会についてどう思いますか?』というアンケートも実施された。これは議員、県職員、住民、市町村にもアンケートした。県職員に対するアンケートで興味深いのは、一般職員は改革に肯定的で、議会事務局に行きたいという職員が20%もいた。一方で、幹部職員は知事の権限を侵す可能性があるのではなどの否定的な回答もあった。また、住民、議会基本条例の存在そのものを7割が知らなかったのは少し驚いた。しかし、議会に対する肯定的な反応は6割あった。条例は知らないが、何か一生懸命に改革やっていると映っているのかも知れない。この結果は嬉しかった。

(議会テレビ中継の目標視聴率)
議会のテレビ中継もある。議会でテレビの視聴率の目標を掲げている。県民に興味を持ってもらう努力をしなければならない。
[諦めずに関心を持ってもらう努力。目から鱗である]

■その他の改革・成果
(議員提案)
18本の議員提案条例を制定した。うち16本は政策条例である。
[議会改革の最大の成果であろう]

(調査機能の充実)
政務調査課の設置や議会事務局職員の立法機能研修のほか、うちでは政務調査費を使って自治研とシンクタンク契約をしており、政策提言を受けることができる。大学も活用できる。龍谷大などは議会のシンクタンクを受諾するということを呼びかけているようだ。

(委員数増)
地方自治法の改正により、複数の常任委員会に所属できることとなったため、予算決算「特別」委員会から常任委員会に変更し、常時設置となった。いつでも審査することが可能となったほか。毎年全議員が予算決算の審査に加わることができるようにした。
また、また、委員会は一年で交替するが、一年間で成果品を出すことが求められている。成果品とは条例や決議、報告書などである。
[国会でも予算委員は常設。県政の突然の問題が起こったときに閉会中調査をすぐに実施することが可能。すぐにでも導入すべきだろう。こんなことに気付かなかったのが情けない。感心]

(議員報酬・費用弁償・海外視察)
現在も①議員報酬 ②議会基本条例 ③会期の3つの改革プロジェクトが進んでいる。
①は知事の報酬審議会とは別に議会として第三者に諮問している。上がることはないと思うが、結論が出たら受け入れたい。
議員の費用弁償を実費制にし、4年間に1回1人120万円の海外視察を取りやめ、4年間で6千万円を削減した。議会改革はエンドレスで終わりはない。
[海外視察に対する欲求はかなり強い…]

■その他の質疑応答
(国に対する意見書)
Q.意見書などの議員提案は大半の議員の賛成が必要というが、三重県の会派の状況は民主系24と自民系21の2会派でほとんどを占め、公明党2人、みんなの党1人、共産党0人、諸派3となっている。共産党がいないという三重県議会の現状だからできるのか?
A.意見書は95%以上の賛成が必要となっている。私が議長の時は改選前で共産党は2人いた。三重県議会は2人の少数会派にも議運の正規メンバーとなってもらっている。少数会派を大事にするという考えがある。丁寧にまとめている。

そうして議決された意見書は議長が直接国へ持参し、国の役所に届けることとしている。今なら政務三役に直接渡す。事前にその案件で面会を求めているのから渡すときに一定の回答が用意されている。結果は議会に報告される。知事会などで意見書に誠実に回答を求めるというが、誠実に届けているのか。東京事務所や郵送により届けているのではないか。議会の権威を高める努力をしなければならない。
(沖縄県等で基地など特殊な問題を直接届けるのは聞いたことがある)

Q.三重県議会の構成が改革を容易にしているのか?
(議員定数・選挙区)
1人区はない方がいい。1人だけが通る小選挙区は当該地域の代表が一人になってしまう(自治体の場合、参議院のような第二院や比例代表というカバーがない[竹内追記])。住民自治という観点でも49%の意見を消せるということは乱暴で駄目である。三重県でもまだ2つ1人区残っているがなんとかしたい。都道府県議会の議員の選挙区は「郡市」によると公職選挙法にあるが、政令市に近い鹿児島市ぐらいなら市内を選挙区を割ってもいいのでは。また、郡はもはや行政区分ではない。この規定をやめれば1人区をなくすことができる(現在は特例を除いて合区できない)。

また、最近は過疎化が更に進んでおり、一票の格差の問題を解決しようとすると、広大な選挙区が誕生することになる。過疎・高齢化、寒冷地や面積など人口以外の選挙区設定要件を考えなければならない時代になってきたかもしれない。

(改革をしたくない人に対して)
Q.三重県議会の改革については4年前の選挙後に民主党会派でもその内容を調査している。今日の話を聞いても大変先進的。兵庫県議会も現在議会改革検討委員会をつくり、内容を検討しているが…。現状にさほど不満を感じていない人が民主党を含め多数を占める現状では改革を半ば諦めてしまう自分もいる。如何にすれば改革に取り組もうというインセンティブを働かせることができるのか。いい知恵があれば。
A.改革しないと住民に見捨てられる。質が上がらなければどうなるか。名古屋の河村市長による議会を悪者にする手法は間違っていると思うが、住民は拍手喝采をおくった。なぜか。住民からすれば元々議会は何をしているのかわからない、政務調査費でいいものを食べていると思ってしまっていた。なのに減税に反対する存在と映った。議員の報酬半減や定数半減を市長が訴えると住民は圧倒的支持で名古屋市議会のリコールを成立させ、解散させた。
あれから、新しい名古屋市では報酬の適正化や様々な議会改革を進めているが、誰も見向きもしない。追い詰められてから改革しても全く評価されない。問題がおきてからあわてて改革しても駄目なのである。
(私の質問。我ながら情けない質問だ…)

■その他
三重県議会の議会改革について全国各地から視察に来られる。調査に来られた時は、議会事務局の職員でなく議員が説明することとしている。しかし、視察団の行程を見ると、京都や名古屋に宿泊という場合が多い。三重県に宿泊もしてほしい(笑)。

勉強会配布資料「三重県議会」議会改革のさまざまな取組のページ

今日は重要な運動会などイベントにもお招きいただいていたが、欠席。党青年局長を行きうけているということでお許し頂きたい。

終了後、県庁。控室で今日の講義等のまとめ。職員の方も休日出勤の部署も多い。正規の休日出勤でもないだろう。何かを犠牲にして仕事をする。一生懸命である。