菅総理の事実上の退陣表明を受けて、後任の民主党代表を争う候補者の名前が挙がっている。今朝のフジテレビの報道2001を見ると前原前外務大臣が出演。代表選への出馬の意志を問われ、熟慮中との回答を繰り返している。一部に不出馬の報道もあったが、公式的には出馬の可能性も残している。この世界何が起こるかわからない。2万%出馬はないと言って出馬し、勝利した人もいたが、タレントでもなければこうした話をする人は信用されない。

しかし、焼肉店を経営する外国人からの献金問題で外務大臣を途中辞職し、内閣に残っていたよりも受けた傷は小さくなった。辞職のタイミングというものも政治家の判断としては重要ということがよくわかる(国益とは別)。この世界何が起こるかわからない。今日の番組での発言を聞いていても、歯切れやわかりやすさは残しつつ、昔に比べれば少し慎重になったし、小沢・渡部両代議士の合同誕生会の発起人になるなど、少しずつ政治的な動きもとるようになっている。いずれ国を背負う強い信念と政策を持った人物であることは間違いない。とはいえ周辺にバランスのある人がいないように見える。更に伸びていくためにはそうした部分を入れ換える必要があろう。もちろん簡単にできるものではない。

続いてNHKの日曜討論も見る。久方振りである。各党の討論ではなく、野田財務大臣と大学の財政の専門家が出て、税や社会保障、成長戦略のあり方を議論している。今日は大田元経済財政相(政策大学院大学教授)のほか、慶応の土居さん、早稲田の若田部さん。財政の論客といえば昔は東大の神野さんなどであったが、最近は土居さんと若田部さんという若手教授がこの番組に出ている。討論形式なので2人の主張の違いがわかりやすく勉強になる。ちなみに私は財政規律の維持を重視する慶応の土居さんの考えに近い。

とはいえ選挙で選ばれる政治家で財政規律を重視する立場はどうしても損をする。声高に主張すれば落選ともなり、政策決定に関与できなくなることさえある。となると一体誰が将来世代に寄って立つこうした財政規律を重視する立場を代弁するのだろうか。たまに財政規律派を「財務省寄り」とか言う人がいるが、その表現は歴史的にも間違っている。官僚主導国家を続け、財務省が日本の財政を仕切ってきたのに、なぜ現状があるのかということである。財務省は財政規律というポーズをとってきただけで実際は政治側の国債発行という借金での歳出拡大策を体を張って止めてきたわけではない。

アメリカでは自国の債券格付け機関がアメリカの財政規律を高めさせる動きをした。アメリカの株価は乱高下したものの、最後はドルの世界通貨としての価値が改めて見直され、債券の利率は逆に低下した。先日、某大手金融機関に勤める早大の後輩為替ディーラーと話をして、この動きを解説してもらったが、その指摘どおりだった。日本も近い将来格付け機関によって財政政策を左右されることになるだろう。そうした格付け機関も資本主義の論理によって動いている。世界最強のアメリカすら右往左往させる格付け機関。日本はどんな影響を受けるのか。政治が混乱しているとハゲタカの餌食になってしまう。

そういえば、その他にも代表選に自ら名乗りをあげている人、周囲が応援している人がいる。これからも新たな名乗りがあるかもしれない。しかし、明らかにキャリア不足ではと思う人もいる。自らのキャリアや能力を卑下する人が少ない世界だが、少なくとも総理には相当なキャリアがいることは国会を経験している人はわかっているはず。2005年の郵政民営化選挙、前回2009年の選挙で衆議院議員が大きく入れ替わって当選回数も低下し、全体的にもかなり軽量になってきている。テレビ入りの代議士会でパフォーマンス発言をする与野党第一党の光景はこの間何度も見てきた。こうした党内すらまとめるのが難しい状況で、野党との交渉や海外に目を向ければ大変な競争社会を生き抜いていく必要がある。アメリカの大統領選挙でも初期は顔見世興行はあるし(途中で脱落していく)、選挙戦を戦う中で鍛えられていくことは多い。ただし、今回は衆院選後、2度目の代表交代、東日本大震災の被害対応に国を挙げて取り組まなければならない状況である。本人は国を思う大真面目で果敢なチャレンジだとしても、永田町では単なる顔見世興行と思われるようなキャリア不足の人には今回は出馬は遠慮してもらいたいと思うのである。

我が国は大統領制ではなく国会議員が首班を指名をする議院内閣制である。国民の選挙が既に済んだ状況では、衆議院の多数議員が支持するものが総理大臣の就任要件である。しかし、今回の特徴は参議院の与党の過半数割れを受けて、参議院議員も首班指名により重くかかわることになる。つまり参議院の多数占める野党を巻き込むということになる。いま、昔のような派閥はないし、キングメーカーもいない。キーマンも見当たらない。この先一体誰が主導するのだろう。

今回の代表を選ぶ選挙だが、菅代表の残任期間ということで、私たちの地方議員や党員・サポーターの投票権はない。しかし、これだけはいいたいと思うのは、党の現在の執行部の面々が今回の政局を主導するということだけはやめてほしいと思うのである。内閣の混乱は菅総理の辞任で一定のけじめはつけた。一方、参院選敗北に始まり、統一地方選の敗北など党執行部は誰も責任をとっていない。どれほどの人が路頭に迷っているか。現執行部の無責任振りは目に余る。責任をとって謹慎すべきである。