高村さんと新年会 | たけおか ぼちぼち日記

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思いついたらメモ

年明け早々の1月某日、数値風洞(Numerical Wind Tunnel: NWT), VPP-500 のチーフ・アーキテクトだった、高村さんと、年賀会(呑み会)をした。

NWT, VPP-500は、稼動当時、世界最高速のスーパーコンピュータ。
1995年6月の スパコン Top500 リスト
NWTはゴードンベル賞も貰っている
たけおか ぼちぼち日記-NWT
写真はNWT。VPP500はNWTの富士通製品版。基本的には同じもの。

NWT,VPP500は、分散メモリ・アーキテクチャを採用したスパコンで、当時、画期的。
今流行のクラスタ計算機とは違い、既存のソフトウェアの書き換えが比較的少しで済み、
既存の計算ユーザのノウハウや、既存のアルゴリズムの延長で使えた。
(現在のクラスタ計算機が実用的に流行しているのは、アメリカ政府が日本製のスパコンに重税を課した結果、事実上、アメリカではベクトル・スパコンが使用できなくなり、
アメリカの計算ユーザは仕方なく、クラスタ計算機用の計算方法を開発したからだ)


そのNWT, VPP-500が、去年には、
アメリカのComputer History Museum(コンピュータ歴史博物館)寄贈され、
アメリカ人の記憶にも永遠に残ることになった。
日本人の成果がアメリカ人にも認識され記憶されるとは、ご同慶の至りだ。
ニュース記事1
ニュース記事2
ニュース記事3
アメリカのComputer History Museum(コンピュータ歴史博物館)の紹介記事


数値風洞は、流体のシミュレーションを数値計算で行うもので、
当時の航技研(航空宇宙技術研究所 NAL, 現 JAXA)に設置された。
現在も、流体力学的な設計には、数値シミュレーションが必須である。
希薄混合気エンジンの開発が長足の進歩を遂げたのも、
F1の形が画期的にヘンテコになったのも、
数値シミュレーションが進んだせいである。
エンジンの燃焼室の爆発の瞬間の様子を模型などで見て解析することは難しいし、
また、自動車のように、静止している地面と300km/hで走行している車体との間
の空気(車体の下を流れる空気)の流れを風洞実験で観察することは、非常に難しい。
(現代のF1は、車体の下の空気の流れを制御して、強いダウンフォースを得る)
なので、現在は、流体の数値計算シミュレーションは非常に一般的だ。


今回は、高村さんからは、
若いころにアムダール博士(アムダールの法則 の人)から、教えを受けた話を聞いたり、
「スパコンを分散メモリにしたのでうまく行ったのだ」ということをじかにうかがったり、
今回の博物館への寄贈セレモニの記念講演で、15分の予定時間を大幅に超えて熱く(?)話したことや、
Comupter History Museumのスタッフは、計算機企業を引退した人たちで、楽しそうにボランティアをしている話など
をうかがい、非常に愉快だった。


また、呑むほどに、
独自アーキテクチャなくして、日本の計算機産業無し!
コモディティ技術なんかで、日本の計算機技術の進歩無し!
並列スパコンを作るなら、PCクラスタなんかで作るな!

などと、怪気炎をあげ、非常に楽しい会でした。




寄贈セレモニの写真を頂いたので、何枚か貼っておく。
たけおか ぼちぼち日記-高村さん
公演中の高村さん

たけおか ぼちぼち日記-高村さんとアムダール博士
高村さん(真ん中左)とアムダール博士(真ん中右)

たけおか ぼちぼち日記-NWT寄贈物
左の高村さんがもっているのがLSIの乗ったモジュール、左が水冷冷却部らしい。
たけおか ぼちぼち日記-コンピュータ歴史博物館
Computer History Museum(コンピュータ歴史博物館)外観