昨年8月、私は韓国を訪問しました。目的は、11月の日韓・韓日友好議員連盟に先立っての韓国側との打ち合わせ、及び幹事会への出席であった。訪韓初日に、知日派で知られる李洛淵(イ・ナギョン)国務総理にお会いした時に、ぜひ文在寅(ムン・ジェイン)大統領に会って欲しいという話をいただき、日韓議連の幹事会後、青瓦台(大統領府)の文大統領を表敬訪問した。

文大統領は、かつての盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の側近として活躍され、盧武鉉大統領の裁判では弁護団の幹事を務められた。日本についても熟知されており、その度量の大きさと、現実を見る目の確かさなどから、極めて優秀な政治家だという第一印象を受けた。その時私は大統領に、「文大統領がやるべきことはただ1つ―金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の友達になることだ」と強く申し上げた。今、世界は北の脅威にさらされ、日本を含め諸外国は不安を感じている。金正恩氏は絶対的な権力者であり、友達と呼べる相手はいないのではないか、と。

 ちょうどわが国の歴史においても、豊臣秀吉が天下の絶頂を極めた時も夜に泣いていたと聞いたことがあるが、まさに時の権力者は危うくもこのような状態に陥ることがある。つまり、孤独が最も危ないのである。もし金氏が自爆でもしようと決意したならば、大変な惨事となる。だから、彼が何かしようとする時には、必ず相談相手になって欲しいという意味で、友達になることが大切だと強く訴えたのである。

私は「対話と圧力」について、圧力はあくまでも対話に至るための手段に過ぎないと考えている。圧力だけで解決するほど、世の中の政治は甘くない。圧力だけとはすなわち、戦争をすることであるから、必ず犠牲を伴う。犠牲を伴わない解決法を模索するのが政治のアートであり、技術であると私は考えている。そのため、文大統領には、対話の道を切り開いてもらいたいと願ったわけである。

 それからなんと8ヶ月後、今日のような南北首脳会談が実現されるという事態、そしてまもなく米国のトランプ大統領と北朝鮮の金正恩委員長による米朝首脳会談が実現されるような事態に急展開するとは、私も想定していなかった。確かに文大統領は、日本の政治家からこのようなことを言われるのは初めてだったようなので、私の発言が何らかの影響を与えたのだろうと思っている。これはまさに、議員外交のなせる業であろう。文大統領の手腕で世界から北の脅威を取り去ることができれば素晴らしいことである。是非とも成功することを強く応援し、祈るところである。

 もし当時、私が大臣のような職責にあったなら、今回のような発言は絶対にできない。なぜならば、内閣の一員としての職責を背負っているからである。しかし議員外交という手段を使えば、政治家としての私個人の信条を自由に伝えることができる。それにより、相手が良いと思う所は取り入れてもらえば良いわけである。議員外交はそういう意味で有用な手段であると考えている。

 4月27日に行われたこの歴史的な南北首脳会談により、北朝鮮が韓国や諸外国との対立から協調へ踏み出す一歩となることを期待している。