現在わが国の日経平均株価は2万3千円近くなっています。1年前と比べると、格段の上昇です。皆さまの関心は、これがどれくらいまで行くだろうか、どこまで続くだろうか、ということでしょう。ひょっとしたら来年辺りには3万円まで行くかもしれません。安倍政権の支持率が高いのは、やはりこの高株価を見て、景気が良いではないかという認識が一般に広まっているからでしょう。

 

ではこの経済がどこまでいくのか――アメリカの経済は非常に好調で物価の上昇は2%台、雇用(失業率)も4%近くなっています。雇用が安心できて、物価上昇もほどほど、投資も順調に伸びており、アメリカとしては言うことがない状態です。その結果として、ニューヨークダウ平均も、最近では見られないほど大幅な値上がりをしています。識者の中には、どこかでダウンするのではないかと不安を抱えている人もいます。

日本の株価はアメリカ経済の好調に支えられている部分があり、加えて途上国のインド、ブラジル、ベトナムなどの景気・株価も非常に順調です。そして、心配されていた中国もそれほどではなく、逆に順調に内需を拡大し出しました。このように世界全体の経済が良いために、日本の株価も好調が持続するのでしょう。

 

しかしいくつかのリスクがあります。1つは何といっても「北」のリスクです。先日も北朝鮮がミサイルを打ち上げました。本当に戦いをしたならやはりアメリカが勝つでしょうが、両国および周辺諸国に甚大な被害をもたらすことは間違いありません。加えて北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を開発し、アメリカの全土に届くだけの技術を開発したとなれば、アメリカといえどもうかつに手出しはできません。このリスクをどう回避するかということです。

 

私が今春ワシントンを訪ね、アーミテージ氏、ラムズフェルド氏をはじめ、各界の要人から色々な話を聞いた限りでは、北朝鮮はめったなことでは戦いを始めないだろうというのが大方の意見でした。理由の1つは、彼を取り巻く将軍たちが80歳を超えた高齢であるということ、つまり彼らが自らの地位を失いたくないだろうということです。金正恩自身も冷静に判断する力はもっているでしょうから、トランプ大統領は今にも攻撃しそうな発言を繰り返していますが、本当のところはそうではありません。ではどこか――「対話と圧力」と言いますが、最後は対話しかないのではないでしょうか。対話に追い込むためのツールが圧力だと考えておいてよいと思います。中国が北との深い関係の中で、特にどうしても切れないのが、北朝鮮が必要な石油の9割を中国が供給しているという現実です。これを止めれば北が大混乱に陥るのは間違いありません。アメリカは石油を「止めろ」「縮小しろ」と強く言いますが、中国としてそれはなかなかできないのでしょう。また、この石油パイプを一旦止めると、回復まで相当な時間がかかるという状況も斟酌してあげなければなりません。

 

このように世界の関係国がそれぞれの微妙な付き合いの中で、この「北」の問題をどのように暴発しないようにもっていくかを皆が知恵を絞っているところです。最近、アメリカのティラーソン国務長官解任の噂が出ました(米政府は後に否定)が、もう1つのリスクはトランプ大統領だという人がいるのも事実です。いずれにせよ、この2つのリスクを回避し、世界の平和が守られることを私は強く期待しています。

 

今夏、日韓議連で韓国を訪問し文在寅(ムン・ジェイン)大統領、李洛淵(イ・ナギョン)国務総理とじっくり話をしました。私はやはり、北とのパイプ役になれるのは文大統領しかいないのではないかと本人に申し上げました。同族であり、お互いある程度気が許せる間柄であろうと私は期待をしたいと思っています。

 

間もなく新しい年を迎えます。再来年の5月からは新元号が始まります。大きい時代のうねりを肌で感じる最近の永田町です。しっかりとした視点を持ち、国民が安心のできる政治の姿勢を示していく必要があると考えています。来年もどうぞ宜しくお願い致します。

 

(バンブージャーナル110号より抜粋)