8月3日、日露天然ガスパイプライン推進議員連盟(会長:河村建夫、事務局長:竹本直一)の総会を開催しました。


 安倍総理は現在戦後最大の懸案の一つである「領土問題を含む日露間の平和条約締結」に向けて積極果敢に取り組んでいらっしゃいます。5月ロシア・ソチでの首脳会談に続き、9月上旬にウラジオストクで首脳会談が予定されています。さらにプーチン大統領の年末の訪日も確実なものになりつつあります。
 しかし歴代総理が成し遂げることができなかった歴史的偉業を実現するためには、ロシア側がかねてから要望している日露間の経済協力の中身をいかに充実したものにするかにかかっていると言っても過言ではありません。
 当議連は、日露平和条約締結促進を主たる目的として日露天然ガスパイプラインの早期実施に取り組んできました。日露天然ガスパイプライン構想とは、ロシアのサハリン・東シベリア地域の天然ガスを生ガスのままパイプラインで日本の需要地に運ぶものです。

 世界の天然ガス貿易の9割はパイプラインによるものですが、日本は輸入する天然ガスの全量をLNG(液化天然ガス)に依存しています。生ガスによる取引が一般的な欧米諸国では、天然ガスの価格は当該地域における天然ガスの需給状況に応じて決定されているため、低位かつ安定的に推移しています。一方LNG価格は原油価格に連動して決定されるため、国際政治情勢の影響を受けやすい原油市場に連動しています。東日本大震災後は原子力発電所の停止や原油価格が1バレル=100ドルを超える水準に達していたこともあり、日本は世界で一番高い価格で天然ガスを輸入せざるを得ない状況にありました。
 このような事情から欧米諸国に比べ日本はいまだに石油依存が高いのが現状です。日本で消費される原油のほぼ全量が輸入されており、その8割以上が中東地域からです。原油価格が急落したため、原油価格100ドル時代を前提に放漫財政を行ってきた中東諸国は現在深刻な危機に陥っています。特に日本が輸入する原油3割を占めるサウジアラビアでは昨年1月の国王交代に伴い政治的に不安定な状態が続いております。サウジアラビアを始めとする湾岸諸国で2011年のような「アラブの春」が直ちに起きる可能性は低いと思いますが、シリア内戦・IS(イスラム国)の台頭・サウジアラビアとイランの対立など当該地域のいわゆる「地政学的リスク」はこれまでになく高まっていると言えるでしょう。
 脱石油依存の観点から新エネルギーの利用促進は重要な課題ですが、コスト上の制約は大きな壁となって立ちはだかっています。このため化石燃料が当分の間エネルギー供給の面で大きな役割を果たすことは間違いありませんが、天然ガスは石油や石炭に比べて単位当たりの二酸化炭素排出量が少ないという大きなメリットがあります。今年4月に電力の自由化がスタートし、来年4月にはガスの自由化が予定されている日本のエネルギー市場において健全な競争環境を実現するためには、パイプラインにより低廉かつ安定的に天然ガスが供給されることが必須条件でしょう。
 ロシアとの関係に話を戻すと、対露経済協力8項目の中に「天然ガスの輸入拡大」が入っていますが、ウラジオストクなどのLNG基地建設はこのところの天然ガス価格の急落により事業の採算に目途が立っていません。しかしコスト面で優位性があるパイプラインであればこのような状況でもプロジェクトを推進することが可能です。


 このような観点から、3日の議連総会では、9月のウラジオストクで開催される首脳会談で日露天然ガスパイプライン構想を議題とするよう、総理官邸に要請することを決議し、本日5日、この要望書を安倍総理、菅官房長官、岸田外務大臣のところに提出いたしました。