先週の2月17日、交通安全議員連盟(会長:川村建夫、事務局長:竹本直一、事務局次長:田中英之)から国家公安委員長の河野太郎議員に、自動車事故の処罰に関する法律を適切に運用するよう求める要望書を提出しました。


今回の要望書提出の背景をご説明しておきます。


自動車事故についてはかねてより「危険運転致死傷罪」と「自動車運転過失致死傷罪」の量刑に大きな格差があり、事故の結果に見合った量刑を科すことができない、という指摘がありました。危険運転致死傷罪では、致死だと「1年以上20年以下の懲役」、致傷だと「15年以下の懲役」である一方、自動車運転過失致死傷罪では「7年以下の懲役・禁錮又は100万円以下の罰金」となり、その格差が問題視されていたわけです。

その格差を埋めるべく、平成25年に「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」が成立、翌年26年5月に施行されました。これにより危険運転致死傷罪の規定が整備されたほか、アルコールの影響の発覚を逃れようとした者に重い罰則が科されるなど、より実態に即した罰則が整備されました。

ですが、この法律の施行後にその運用状況を確認してみると、当初の目的は適切に達成できていないように思われます。というのも、危険運転致死傷罪の適用要件である「正常な運転が困難であったこと」の証明が難しいため、結局、悪質な事故に適切な罰則が科されないという状況が続いているわけです。

昨年の5月にも、大阪市中央区のアメリカ村で3人が死傷する痛ましい飲酒運転死亡事故がありましたが、そのときも地検は当初「正常な運転が困難な状態と立証するには状況証拠が乏しい」として過失致死傷罪で起訴していました。結局この事件では、遺族の方々の活動により上申書が提出され、危険運転致死傷罪へと訴因が変更されましたが、本来はこのような活動をせずとも悪質な事件には適切な厳罰が科されるべきです。先に成立した法案もまさにそこを目的とするものでしたが、まだまだ適切な運用がなされていないのが実情です。

今回、我々が提出した要望書は、こうした状況に鑑み、先の法律のより適切な運用を求めるものです。あわせて法律運用にあたっては、以下の点に留意することも求めました。

一、 危険運転行為が厳罰化されたことを踏まえ、危険運転行為の悪質性に関し、学校教育、運転免許試験・更新教習、その他関係広報において適切な普及啓発運動を行うことによって、事故の抑止に努めること。
一、 危険運転致死傷罪の適用可能性が不透明な事案については、その後の捜査の進展や被害者の処罰感情等を考慮の上、起訴当初段階から重罰を科すことを排除しないよう心掛けると共に、量刑のバランスを考慮して、より一層慎重な運用を図り、受刑者に一方的な利益を与えないことが求められることから、警察においても厳正な捜査に努めること。



何事も厳罰化をすればよいというものではありませんが、飲酒運転の危険さについては、まだまだ人々の理解が行き届いていないところがあります。飲酒運転とはこれほどの厳罰が科されるくらいの重い罪なのだということを周知徹底し、「飲んだら運転しない」を当たり前のものとする社会を作っていかなければなりません。飲酒運転事故を減らすためには、何よりもまず人々の意識改革が必要です。「飲んだときは運転は絶対にダメだ」としつこく言い続けることが大事なのです。


一時は1万人を超えていた交通事故死亡者数は、我々の議員連盟含め各種団体の活動もあって、ここ最近は4000人台にまで下がってきました。交通安全社会に向けた様々な取り組みは、成功していると言っていいでしょう。痛ましい事故が二度と起こらないようにするための仕組みを作ると共に、関係各省の取り組みをしっかり監督・指導していくこと、これが我々の仕事だと考えています。我々交通安全議員連盟は、安全な社会を目指してこれからも活動していきますし、私も事務局長としてその活動を支えて参ります。皆様も飲酒運転撲滅に向けて、周りの方々への啓発をよろしくお願いします。