タルモ・ペルトコスキ指揮トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団来日公演(サントリーホール)

 

指揮:タルモ・ペルトコスキ

ピアノ:辻井伸行

トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団

 

ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲

(ソリスト・アンコール)

セブラック:ロマンティックなワルツ

 

マーラー:交響曲第6番 イ短調 「悲劇的」

 

フィンランドの俊英タルモ・ペルトコスキ(2000〜)が、音楽監督を務めるトゥールーズ・キャピトル国立管とともに来日した。

ペルトコスキは昨年6月のN響定期に客演してマーラーの交響曲第1番を指揮。私は行けなかったのだが、このときの演奏が大変な賛否両論を巻き起こしたので、ぜひ一度聴いてみたい指揮者だったのだが…この日のトゥールーズとの演奏を聴く限り、大変緻密に計算された演奏をすることはよくわかったものの、少なくともこのマーラーは私の好みではない。

 

前半は辻井伸行をソリストに迎えたパガ狂。辻井伸行はペルトコスキの背中に両手を当てて登場した。

華麗に音は鳴っていたものの、思ったほどのスケール感がなく、「ピンと来ない」。辻井伸行の音、豪放なピアニズムはないが、音色は濃くまろやかで美しい。なかなか他のピアニストでは聴くことができない、特徴的な音色である。

一方、14型のオーケストラは弦の艶が特徴。ペルトコスキはかなり細かいところまで作り込んでいるのであろうが、それほど抜けの良さや全体のメリハリが感じられなかった。

辻井のアンコールはセヴラックの聴いたことがない作品であったが、辻井伸行の独特な音はこの独奏曲でさらによくわかった。角の取れた丸みがある音。このピアニストが、非常に鋭敏な耳を持っていることがわかる演奏だ。

 

後半は16型でマーラーの6番。

テンポは全体として少し遅めに感じられた。演奏時間は正確に測ったわけではないが80分強だっただろうか。

ペルトコスキの演奏は細かいところまでかなり緻密に計算されており、その結果だろうか、こちらとしては聞こえてほしいフレーズが聞こえなかったり、普段聞こえないフレーズが聞こえたりという瞬間が多かった。

第1楽章、冒頭のコントラバスの刻みが非常に特徴的で、噛みしめるような、巨人が大地を踏みつけるような歩みを感じさせる。テンポは遅め。第2楽章スケルツォのテンポもやや遅めだったので、第1楽章との性格の差異があまり感じられない。第3楽章はオーケストラの美質が活かされた演奏。ホルンはクセがなく透明感がある。第4楽章、一般的な演奏で高揚するシーンでは冷静を保ち、例えば1回目のハンマーの前後では、ハンマーが鳴った後の方が盛り上がる。この楽章では特に、開放的に鳴ってほしいところであまり鳴らず、ややフラストレーションが残った。

第4楽章、2回目のハンマーの後静かになる部分でホルンを中心にアンサンブルが乱れ、音楽が止まりかけたのだが、オーケストラもペルトコスキの緻密で隙がないアプローチで、かなりお疲れだったのだろう。

 

マーラーの最後の音が鳴ったあとの長い静寂は素晴らしかった。ペルトコスキが最初に立たせた奏者はなんとチューバ…普通、この曲だったらホルンだろう。ホルンはミスがあったので指揮者がお怒りとか…??とはいえ、オーケストラは指揮者に対してかなりの喝采を送っていたから、関係は良好なのだろうと推測される。

なかなかフランスのオーケストラの来日公演でマーラーを聴く機会は少なく、今回の演奏は貴重だ。過去には、ハーディング指揮パリ管で2016年に5番、2018年に1番を聴いたのみ(余談ながら、フランスのオーケストラによる来日公演のブルックナー演奏はさらに少なくて、先日のフランス放送フィルにおけるブルックナー7番ぐらい)。

トゥールーズのオーケストラといえば、ミシェル・プラッソンの時代における素晴らしいフランス音楽の録音や、トゥガン・ソヒエフ時代の鮮やかこの上ないフランス、ロシア音楽が印象に残っているが、マーラーを演奏すると、艶とコクがありながらしっかり低音も鳴っていて、悪くない。

ちなみにペルトコスキの師匠はヨルマ・パヌラ。エサ=ペッカ・サロネン、ミッコ・フランク、サカリ・オラモ、ユッカ=ペッカ・サラステ、オスモ・ヴァンスカ、クラウス・マケラを育てた名教師である。余談だが、私は以前、演奏会でこのパヌラ先生の隣に座って迷惑を被ったことがある。まあ、どうでもいい話ではあるが。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11097246538.html 

 

マーラー終演後の大喝采を見ると、今回の演奏会は辻井君目当ての人よりも、ペルトコスキのマーラーが目当てだった人が多かったのかもしれない。

19時開演、20分の休憩をはさんで21時半過ぎに拍手が終わった。

 

総合評価:★★★☆☆