アレクサンドル・メルニコフが弾く、ショスタコーヴィチ:24の前奏曲とフーガOp.87(トッパンホール)
メルニコフの演奏で、ショスタコーヴィチ24の前奏曲とフーガを聴く。メルニコフは2012年に浜離宮朝日ホールでもこの曲の全曲演奏会を開催した。
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2015年の東京・春・音楽祭でもこの曲を演奏したのだが、そのときはドゥダメル指揮ロサンゼルス・フィルの来日公演と重なって行けなかった。
そのようなわけで個人的には、2012年以来13年ぶりにメルニコフのこの曲を聴くことになる。
今回のメルニコフの演奏、2012年のときに比べると、ゆったりした部分はさらに深度を増してじっくりとした表現を採っていて、例えば第1番のフーガ、ちょっと驚くほど遅めの神妙なテンポ設定で始まったのに驚いた。一方で、激しい感情表現が要求される曲に関しては、驚くほどの凶暴さをもった荒々しい表現であり、こちらもまた驚きであった。こうした激しい部分のテンポはかなり速めで、例えば12番のフーガ、15番のフーガ、24番のフーガの後半などは時として破綻するのではないかと思われるくらいの激しさである。
こうした激しい感情のたかぶり、ロシアの戦争に関係あるのかな…などと下衆の勘繰りをしてみたくなるのだが、それは当たっているかもしれないし、何の関係もないかもしれない。ただ、2022年2月のロシアのウクライナ侵攻の直後である4月に行われたメルニコフの演奏会は、かなり演奏が荒れていた。
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それにしてもショスタコーヴィチのこの作品、改めて驚くほどよくできていて、バッハの平均律クラヴィーア曲集を下敷きにしているのは言うまでもないのだが、コンセプトは似せているがその音楽は完全に個性的な創作物であるし、当初ポリフォニーの習作として作られたものだとは思えないほどの完成度である。これだけの高度な内容であるにもかかわらず、わずか5ヶ月で全48曲を書き終えたというから、本当にタダモノではない。
この曲の全曲演奏会、メルニコフはすでにかなり前から取り組んでいるわけであるが、この演奏会の2週間前にはユリアンナ・アヴデーエワが彩の国さいたま芸術劇場で全曲演奏会をやっているし、昨年末には松田華音が武蔵野市民文化会館小ホールで全曲を弾いている。今年はショスタコーヴィチ没後50周年ということもあるわけだが、演奏機会が増えているのは非常に喜ばしいことだ。
今回の演奏会、17時開演で20時5分に終了。メルニコフはiPadの譜面を見ながらの演奏。途中休憩が2回あり、12番の後に20分、16番の後に10分の休憩があった。2012年のときも(どのタイミングかは覚えていないが)休憩が2回あった。先日のアヴデーエワの演奏会では12番の後に1回あっただけだそうだ。
2012年の浜離宮朝日ホールにおける演奏会では、終演後メルニコフはOp.87と書かれたTシャツで登場しアフタートークのイベントまで行ったのだが、今回、終演後の表情は固く、カーテンコールも3回か4回で打ち切りになってしまった。
総合評価:★★★☆☆
