東京春祭 歌曲シリーズ vol.42

クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)&ゲロルト・フーバー(ピアノ) I

(東京文化会館小ホール)

 

シューマン:

 《5つのリート》 op.40

 《リーダークライス》 op.39

 《3つの歌》 op.83

 《ロマンスとバラード 第3集》 op.53

 《レーナウによる6つの詩とレクイエム》 op.90

(アンコール)

シューマン:

《3つの歌》 op.95より 第2曲 月に寄す

《恋のたわむれ》 op.101より 第4曲 私の美しい星

 

2025年も東京・春・音楽祭開幕!これから1ヶ月忙しい日々が続く。

自分にとってはその最初の公演。名バリトン、クリスティアン・ゲルハーヘルを久々に聴く。この人の名前の表記は色々あって、ゲアハーハーの方が原語に近いと聞いたことはあるのだが。

 

最初に彼の声を聴いたのは2002年のポリーニ・プロジェクトで、そのときはシューベルトを少し。2008年にブロムシュテット指揮N響との共演でマーラー「さすらう若人の歌」、その後2011年に今回のピアニストであるゲロルト・フーバーとの共演のリサイタル(オール・マーラー)を2回聴いているのだが、そのリサイタルが実に素晴らしかったのである。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11100645971.html

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11102702356.html

 

そのようなわけで、今まで聴いたゲルハーヘルはほとんどマーラーだったのだが、今回のシューマン、また格別の味わいである。14年前に比べると、さすがに声が若干枯れて固くなってはいるものの、幅広い表現力は変わらないし、いい意味で渋さが増している。フォルテッシモは会場を揺るがすほどの迫力だ。

特に素晴らしかったのは、5つのリート第3曲「兵士」の勇壮な表現、リーダークライス第5曲「月夜」の幽玄とも言うべき表現や終曲「春の夜」のしっとりしたかぐわしい香り、ロマンスとバラード 第3集「哀れなペーター」における諧謔的な表現、プログラム最後の「レクイエム」の敬虔な祈り。

 

学生時代からのデュオ・パートナーだというゲロルト・フーバーのピアノが圧倒的に見事!音色が完璧にコントロールされていて、実に深みがある表現。そして完璧なテクニックにより安定感が抜群。これだけの名伴奏者はそうそういないだろう。ゲルハーヘルと対等でありながら、しっかりと主役を盛り上げているのであった。

ゲルハーヘルが、私が大好きなピョートル・ベチャワとともにピアノ伴奏版のマーラー「大地の歌」を録音しているのだが、ここでピアノを弾いているのがゲロルト・フーバー。2名の男声歌手の歌唱は言うまでもなく素晴らしいが、ピアノも絶品である。

https://tower.jp/article/feature_item/2023/03/24/1103?srsltid=AfmBOop0MKktU5JlriHdgkEzxZra6ijYk9XGwr3PEz8JRFsJ56Z16vsD 

 

アンコール前にゲルハーヘルが英語でアンコールの解説をしていたが、いつもながら英語力が乏しい自分にはあまりよくわからず。ファニー・メンデルスゾーンの死(1847年)が絡んでいるらしい。

 

総合評価:★★★★☆