バンジャマン・ベルナイム テノール・コンサート (サントリーホール)

 

テノール:バンジャマン・ベルナイム

指揮:マルク・ルロワ゠カラタユー

演奏:東京フィルハーモニー交響楽団

 

【第一部】

ピョートル・チャイコフスキー作曲

―歌劇「エフゲニー・オネーギン」

序奏とポロネーズ

“青春は遠く過ぎ去り”

ガエターノ・ドニゼッティ作曲

―歌劇「ドン・パスクワーレ」

序曲

―歌劇「愛の妙薬」

“人知れぬ涙”

ジュゼッペ・ヴェルディ作曲

―歌劇「運命の力」

序曲

―歌劇「シモン・ボッカネグラ」

“ああ地獄だ、ここにアメーリアが”~“慈悲深い天よ”

ピエトロ・マスカーニ作曲

―歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」

間奏曲

ジャコモ・プッチーニ作曲

―歌劇「トスカ」

“妙なる調和”

 

【第二部】

ジュール・マスネ作曲

―歌劇「ドン・キショット」

第5幕への間奏曲

―歌劇「ウェルテル」

前奏曲

“春風よ、なぜ私を目覚めさせるのか”(オシアンの歌)

ジョルジュ・ビゼー作曲

―歌劇「真珠採り」

“あの声は、なんという動揺を僕に”~“耳に残るは君の歌声”(ナディールのロマンス)

シャルル・グノー作曲

―歌劇「ロメオとジュリエット」

第三幕への間奏曲

“恋よ、恋よ!ああ、太陽よ昇れ”

 

(アンコール)

ブレル:愛しかない時

 

1985年生まれフランスのテナー、バンジャマン・ベルナイムのリサイタル。

実は私、今回の演奏会の告知があるまでこの人の名前すら知らなかったのであるが、NBSが東京で2回コンサートをやるということはそれなりにすごい人なんだろうという、その程度の認識でチケット購入。

当日の朝、NML、アップルミュージック、Quobuzでこの人の名前を入れるも、全くヒットしない。でもYouTubeで検索したらいくつか出てきて、ドイツ・グラモフォンの音源があった。ドイツ・グラモフォンのステージプラスで検索するとバンジャマン・ベルネームという名前だったので、Quobuzで再度その記載で検索したら、ドイツ・グラモフォンのアルバムが1つ出てきた。

自分の演奏会記録を検索したら、なんと2009年、大野和士指揮リヨン国立歌劇場来日公演「ウェルテル」のシュミットという役を聴いていたのであった。もちろん、何の記憶もない。

 

ベルナイム、メトロポリタン・オペラでは2022年のリゴレット(マントヴァ公)でデビューし、今シーズンはホフマン物語のホフマン役で出演しているそうだ。昔は脇役だったがいまや檜舞台で主役を歌っているというわけである。大器晩成型か?世界の最先端のステージで誰が活躍しているのかを知りたければMETに行くか、行くのが無理ならMETライブビューイングを追いかけるのがよさそうだ。

 

公演前に「ベルナイムは14日のコンサートの後、喉の調子が悪いが、最善を尽くす」というようなアナウンスがあったのだが、最善の状態でなかったとしても、今回のベルナイムの歌唱は非常に素晴らしいものであった。非常によく伸びる声であるが軽すぎず重すぎず、とてもいいバランス。レンスキーのアリアや人知れぬ涙でも適度の明るさがあるのがよい。トスカの「妙なる調和」では若き日のパヴァロッティの声を少しだけ思い出した。ただ個人的に最も琴線に触れたのはヴェルディ。今回歌われたガブリエーレのアリア、適度な重さがあり格調高さもこの上ない。

後半はフランス語歌唱だったが、真珠取りの名旋律のファルセットが心地よい。歌とは関係ないが、ロメオとジュリエットのカヴァティーナ、ワーグナーのワルキューレにそっくりなフレーズがあって、グノーとかマスネなどのフランスの作曲家はワーグナーに影響されていたことを痛感する。

喉に不調があるということで、ベルナイムは曲によってはやや声量をセーブしていたようであった。アンコールはジャック・ブレルというシャンソン歌手の曲。

 

オーケストラは12-10-8-6-5という小編成ながら、非常になまめかしい音がしていたと思う。オネーギンのポロネーズではトランペットの音色が輝かしく、ドン・パスクワーレの旋律の表情もいいし、チェロの音色も美しい。

 

14日(東京文化会館)と19日(サントリーホール)の2公演、しかもプログラムはほとんど同じということもあり、満席とはいかなかったようだ。

 

総合評価:★★★★☆