かんぽ生命 presents N響第九 Special Concertを、サントリーホールにて。

 

指揮:ファビオ・ルイージ

ソプラノ:ヘンリエッテ・ボンデ・ハンセン

メゾ・ソプラノ:藤村実穂子

テノール:ステュアート・スケルトン

バス・バリトン:トマス・トマソン

合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

オルガン:中田恵子*

 

バッハ/トッカータとフーガ ヘ長調 BWV 540*

ベートーヴェン/交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱つき」

 

NHK交響楽団首席指揮者であるファビオ・ルイージ、初のN響第9である。本来は2021年暮れの第9を振るはずだったのが、コロナ禍で来日中止に(そのときの代役は尾高忠明であった)。

 

さて、今回後半に演奏された第9は弦が15-14-11-10-7という変則的な人数。16型を基準としながら、シンメトリカルに第1ヴァイオリン、ヴィオラ、コントラバスを1名ずつ減らしたということなのだろうか。そして、この曲は本来2管編成であるが、木管は3名ずつ。

ルイージのベートーヴェンを聴く機会は多くないが、今回の第9、ルイージの演奏としてはほぼ想定の範囲内の、引き締まった造形美が際立つ演奏。非常に速いテンポで颯爽としており、私はこういう演奏を聴くと思わずニンマリしてしまう。同じイタリアの巨匠、トスカニーニの録音をほうふつとさせるのだが、実際にトスカニーニの第9を久しぶりに聴いてみると、ルイージよりもさらに快速テンポ(ただし第3楽章はルイージの方が速い)。第1楽章冒頭5連符はトスカニーニ同様にしっかりと刻んでいた。インパクトは非常に強い演奏だったが、深く感動したかと言われると少し違う。

使用楽譜はベーレンライター版で、ルイージは完全暗譜であった。

Pブロックに配置された約100名の新国立劇場合唱団、上手い。やはり、アマチュア合唱団の第9とは当たり前ではあるが1枚も2枚も上手。特に高域の伸びがとても美しく、透明なのである。

豪華な独唱陣はPブロック前方中央に配置されていたが、スケルトンの身体のでかいこと…4月に東京・春・音楽祭で強靱なトリスタンを聴いたばかりだが、今回は100の力のうち30ぐらいで歌っていたぐらいの印象である。バスバリトンのトマス・トマソンはノット指揮東響のサロメでヨカナーンを歌った人だが、あのときと同様にややシャープな声である。目立たないメゾ・ソプラノに藤村実穂子を起用するとは、なんという贅沢であろうか。4人のなかではソプラノのハンセンのみ楽譜を見ていた。

 

前半にはバッハの前奏曲とフーガが演奏された。年末のN響第9、NHKホールでの公演は第9しか演奏されないのだが、かんぽ生命がスポンサーになっているサントリーホール公演では毎年、前半にオルガン曲が演奏される。クリスマスシーズンに壮大なバッハのオルガン曲を聴くことができるのは贅沢ではある。サントリーホールでのN響第9公演、S席がNHKホールより3,000円高いのだが、どうせなら前半2曲ぐらい演奏してもらいたい。参考までに、1996年12月のN響の第9(指揮:シャルル・デュトワ)では、前半にオネゲルのクリスマス・カンタータが演奏されていた。素晴らしい…

 

総合評価:★★★★☆