ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団第2027回 定期公演 Cプログラム2日目を、NHKホールにて。
指揮:ファビオ・ルイージ
テノール:クリストファー・ヴェントリス*
男声合唱:東京オペラシンガーズ*
リスト/交響詩「タッソー」
リスト/ファウスト交響曲*
リストの管弦楽作品2曲。実に渋いプログラムだ。予想通り、1階はそこそこ埋まっているものの、2階サイドなどはガラガラである。
フランツ・リスト(1811〜1886)はピアノの大家として有名であるが、オーケストラ作品も13曲の交響詩、2曲の交響曲を書いている。ベルリオーズに影響されたその作風は、どこまでも止まることなく音楽が続いて行きそうな雰囲気を持った作風である。
今回のルイージとN響によるリスト、実に素晴らしかった。リストはピアノ曲が圧倒的に素晴らしいが、オーケストラ曲もこの日のような見事な演奏で聴くとその良さが非常によくわかる。
今回の公演、前半後半とも16型。ステージ後方に合唱団席が用意されている。
最初に演奏されたタッソー、20分程度の作品で、わかりやすい旋律で一度聴くと割と耳に残る音楽だが、リストの多くのピアノ曲における、あの崇高な感じとはまた異なった印象だ。タッソーはカラヤン指揮ベルリン・フィル、ショルティ指揮パリ管で予習したが、これはいい演奏で聴くと本当にいい曲である。バスクラリネットのソロが見事。
ファウスト交響曲、65分という長さなのに、合唱とテノール独唱が最後の数分しか登場しないという、大変に経済効率の悪い作品である。それゆえ、演奏される機会は少ないのであるが、意外にも私は過去4回この曲の実演を聴いていた。スダーン指揮東響の演奏はそのなかでも秀逸で、あれは今でも覚えている。
https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-11308615221.html
とはいえ慣れ親しんだ曲でもないので、バーンスタイン指揮ボストン響、ショルティ指揮シカゴ響で予習。
第1楽章はファウスト、第2楽章はグレートヒェン、第3楽章がメフィストフェレスを描いているというこの作品、タッソー同様に同じ旋律が何度も登場するために比較的耳に残りやすい音楽ではあるのだが…やはり、ちょっと長すぎるかもしれない。80%ぐらいのサイズ感であればもう少し演奏頻度も増えようというものだ。それでも曲想はとてもいいし、最後の「神秘の合唱」はマーラーの8番のエンディングと同じ、ファウスト第2部最後の部分が歌詞になっていて、やっぱりこの部分は感動させられてしまう。
ヨーロッパ人のインテリであれば誰もが知っているというゲーテの「ファウスト」、若い頃読んだことがあるが、第1部は比較的読んでいてわかったものの、第2部はさっぱりわからなかった。今読んだらまた違うかもしれないが。とりあえず手っ取り早く全体を把握したい方には中野和朗著「史上最高に面白いファウスト」(文藝春秋)をお勧めする。リストだけではなく、多くの作曲家がこの作品にインスピレーションを受けているということを考えると、ファウストという作品は本当にすごい影響力を持っているのだと思う。
オルガンと合唱、独唱がいつまで経ってもステージに出てこないな、と思っていたら、彼らの出番の直前、第3楽章終盤でやっと登場してきた。これは作曲者リストの指示らしい。たった数分の出番のために超一流の東京オペラシンガーズと外国人ワーグナー歌手を使うとは、さすがN響である。クリストファー・ヴェントリスは2016年ウィーン国立歌劇場来日公演でジークムントを歌った人であり、今回も出番はわずかだったが非常に伸びやかで英雄的な歌唱を聴かせてくれた。
ホルン首席は客演で東京フィルの高橋臣宜氏、オーボエ首席も客演で新日本フィルの岡北斗氏。それにしても、N響のホルンとオーボエの首席のもう一人はなかなか決まらない。
総合評価:★★★★☆