東京フィルハーモニー交響楽団第1001回サントリー定期シリーズを、サントリーホールにて。

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

ピアノ:務川慧悟

オンド・マルトノ:原田 節

 

メシアン/トゥランガリーラ交響曲

 

20世紀の作曲家、オリヴィエ・メシアン(1908〜1992)は現代音楽のなかでもかなり演奏頻度が高い作曲家だ。特に今回の演目、トゥランガリーラ交響曲は現代音楽に冷淡なわが国でもかなり頻繁に演奏される。私が実演でこの曲を聴いたのは今回で通算8回目だ。メシアンの音楽、相当に高度な作曲技法が駆使されているに違いないのだが、独特のハーモニーと色彩感があり、感覚的に受け容れやすいからだろう。

 

今回指揮をしたチョン・ミョンフン、1990年に作曲者監修のもとに録音した有名なCDがある。オーケストラは当時チョンが音楽監督を務めていたバスティーユ歌劇場のオケだった。

 

今回、そのチョンの指揮でトゥランガリーラを聴けるのは貴重な体験だったし、実際80分があっという間に過ぎたくらいに、この曲の素晴らしさを実感させられる演奏であった。

 

七色の光が強烈に発散されるトゥランガリーラ交響曲だが、今回の東京フィルとの演奏では色彩感がやや後退していて、モノクロームとは言わないがパリのオーケストラのあの録音で聴ける華やかな音に比べるとどうしても淡色系。そして、トゥッティでは若干音が濁っている。とはいえ、16型のオケがゴージャスに、そして豪快に鳴るのはとても気持ちいいし、作曲者直伝のチョンの指揮はまさに堂に入ったものだ。第5楽章、ハイテンションで延々と続くカラフルな音楽は実に快感!エンディングのロングトーンの長いこと…これは終曲も同様。

 

オンド・マルトノは大御所、原田節。慶應経済卒→パリ・コンセルヴァトワールのオンド・マルトノ科首席卒という驚きの経歴の持ち主であるが、いったいこの人いくつなんだろうか…もう相当前から、日本で演奏されるトゥランガリーラのオンド・マルトノといえば原田節が当たり前だった。この人以外だとシンシア・ミラーという人の演奏は2回聴いたことがあるが。原田の演奏は、もう寝ていても演奏できるのでは、と思わせるぐらいに、チョンの指揮同様に堂に入ったものであり安定感は抜群。

そしてピアノは務川慧悟。驚くほど指が回る人で、オーケストラに対抗できるだけの馬力もある。

 

今回のトゥランガリーラ、都合3回演奏されるが、今回のサントリーホール公演は完売。今やこの曲は人気演目ということだろう。

 

総合評価:★★★★☆