NHK交響楽団第2013回 定期公演 Aプログラム1日目を、NHKホールにて。

 

指揮:原田慶太楼

ピアノ:反田恭平

 

スクリャービン/夢想 作品24

スクリャービン/ピアノ協奏曲 嬰ヘ短調 作品20

(ソリスト・アンコール)グリーク:叙情小曲集〜「トロルハウゲンの婚礼の日」

 

スクリャービン/交響曲 第2番 ハ短調 作品29

 

アメリカ・ジョージア州サヴァンナ・フィルハーモニックの音楽&芸術監督を務め、東響正指揮者でもある原田慶太楼による定期演奏会は、スクリャービンの素晴らしい初期作品を集めたプログラム。プログラム自体、一般に人気があるようなものではなかろうが、ピアノを弾くのが超人気ピアニスト反田恭平ということもあって、今回のA定期は2日とも完売。実際、NHKホールも普段ガラガラである2階サイドの後方まで人が埋まっていた。

 

さて今回のプログラム、一見渋いのであるが、スクリャービンの初期作品は非常にロマンティックで耳障りがよいので個人的には大好きである。ピアノ協奏曲こそ、ウラディミール・アシュケナージのピアノ、ロリン・マゼール指揮ロンドン・フィルによる名盤(1971年録音デッカ盤)があるから比較的なじみがあるが、交響曲第2番とか、夢想などは聴く機会が少ない…

そう思っていたのだが、自分が実演で聴いたのはピアノ協奏曲が過去1回のみ(1997年3月、ウゴルスキのピアノ、ヒコックス指揮新日本フィル)、交響曲第2番は意外に多く、広上指揮日本フィル(2010年7月)、大友指揮東響(2012年4月)、パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響(2017年9月)と過去3回あったのだ。いい曲だとその都度思っていても、久しぶりに聴くと覚えていないということは、芸術的にはそれなりのものだということか?ショパンやR・シュトラウスの影響を受け、ショパンやグリーグにつながる叙情性を兼ね備え、立ち上る香気を感じさせる素晴らしい曲想なのであるが。今回初めて聴く「夢想」もロマンティックな佳品だ。

 

さて、原田慶太楼によるスクリャービンの演奏、意外なくらいに大人しいというか、お行儀がよい演奏であり、かなり抑制的な表現だと思った。なにか、N響に遠慮しているかのような、そんな錯覚すら覚えたのである。以前N響でアメリカ・プロをやったときはもう少し弾けていたのだが。まあ、曲が全然違うから当然ではあるが。「夢想」など音が全体に小さめだし、交響曲第2番も、ホールのせいがあるのは当然だが、結構乾いた響きである。

バーミンガム市響やモンテカルロ・フィルを振った山田和樹の演奏が、日本のオーケストラを振った演奏とはかなり違って相当弾けていたのを聴いた身としては、原田慶太楼がサヴァンナ・フィルハーモニックを振った演奏を聴いてみたいものである。まあ、日本で無名なサヴァンナ・フィルが来日することはなさそうだが…

 

反田恭平のソロ、非常にダイナミックでフォルムがしっかりしている一方で、弱音はとても繊細。ショパンの影響を受けていると言われるこの曲で、ショパンに通じるすがすがしい叙情性を表現しつつ、かなりの技巧を要求されるはずのこの曲を完璧に弾ききったのはさすがである。

 

弦はピアノ協奏曲が14型、夢想と交響曲第2番が16型、対向配置。ホルンは東響首席の上閒氏が客演。

 

総合評価:★★★☆☆