新日本フィルハーモニー交響楽団定期演奏会#657〈トリフォニーホール・シリーズ〉を、すみだトリフォニーホールにて。

 

指揮:シャルル・デュトワ

 

ハイドン:交響曲第104番 ニ長調 Hob.I:104「ロンドン」

ストラヴィンスキー:バレエ音楽『ペトルーシュカ』(1911年原典版)ピアノ:阪田知樹

ラヴェル:『ダフニスとクロエ』第2組曲

 

87歳のスイスの巨匠、シャルル・デュトワが新日本フィルに登場。最近はほぼ毎年来日して日本のオーケストラを指揮してくれているのはうれしい限りである。特に今年の出演回数は多く、6月は今回の新日本フィルのあと大阪フィル、札幌交響楽団を指揮するし、10月には九州交響楽団、そして音楽監督を務めたN響をほぼ7年ぶりに指揮する予定(定期演奏会ではなく、NHK音楽祭における出演)。

曲目は正直似たようなものが多く、さすがに高齢になってレパートリーを絞ってきているのであるが、今年の来日公演でストラヴィンスキーの三大バレエを全て振るので、それはそれでありがたいことである。

 

冒頭はハイドンの104番。12型という小編成で、指揮棒を使わない代わりに、マエストロ特有のウンッ、ウンッといううなり声で指揮しているようなところもあったが、その表現はエレガントで丸みを帯びている。一方でティンパニは硬めの引き締まった音だ。弦の音色にもう少し洗練があるとなおよかった…私が以前定期会員だったころの新日本フィルであれば、もう少し弦に艶があったのだが。

 

休憩をはさんでストラヴィンスキーのペトルーシュカ1911年版。この曲から16型で指揮棒を使っての指揮だが、その指揮の鮮やかなことと言ったら、87歳とは到底思えないレベルである。前回来日のときよりも元気になっているのではなかろうか。一方、全体のバランスは今一つに聞こえたのと、アンサンブルの切れ味もまあまあだったのだが、これは今回の座席が1階前方のやや右寄りだったということもあろう。

トランペットのソロはなかなかいい音を出していたが、ホルンは心配…阪田のピアノは私の席からはかなり遠く、あまりよく聞こえなかった。

 

最後に演奏されたラヴェルのダフクロ第2組曲、これは新日本フィルのいいところが現れた、しっとりとした美しさを持った名演であった。デュトワの表現は洗練の極みであり、「全員の踊り」においてエンディングに向けての高揚感は最高である。

 

満席の会場は沸きに沸いた。チケットは完売で、サントリーホール・シリーズにおける同一プロも完売。

 

総合評価:★★★☆☆