NHK交響楽団第2012回 定期公演 Bプログラム2日目を、サントリーホールにて。

 

指揮:ファビオ・ルイージ

ピアノ:ルドルフ・ブッフビンダー

 

ブラームス/ピアノ協奏曲 第1番 ニ短調 作品15

ニールセン/交響曲 第2番 ロ短調 作品16「4つの気質」

 

今年3月の東京・春・音楽祭で全7回にわたりベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会を敢行したばかりのルドルフ・ブッフビンダーがまたしても来日。今回はブラームスの協奏曲である。

3月のベートーヴェンのときもそうだったが、すでに77歳という高齢であることもあり、打鍵の強靱さは後退している(ブラームスの1番では、強靱な打鍵が欲しいのも確かだ)。その一方で、極めて自然体のアプローチで、柔らかなタッチをベースにした味わい深い表現が非常に素晴らしい。ブラームスを弾いても、やっぱりこの人はウィーンの音楽家なんだと痛感させられる。

オーケストラは16型ながらピアノの音が聞こえづらいということはない。ルイージがその辺り見事に采配していたということなのだろう。ルイージとブッフビンダーの共演、もう10年前になるが、やはりN響B定期でモーツァルトの20番をやったことがあった。いつまでもこういうことを言うのもいかがかとは思うが、あのときはブッフビンダーが途中で止まってしまって、ルイージの見事な采配で音楽が再開したのであった。

 

後半はニールセンの交響曲第2番。毎度のことながらなじみの薄い曲ゆえ何回か予習して臨んだのだが、そこまでは耳に残らない曲である。N響では2019年にパーヴォ・ヤルヴィがこの曲を演奏している。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12478651063.html

この曲がそこまでの名曲だとは思わないのであるが…今回の演奏のレベルは間違いなく超一級である。曲の細部に至るまでニュアンスの指示が徹底していて、解像度の高さが抜群。よくここまできっちりとメリハリを付けられるものだと感心してしまう。ルイージはシェフを務めるデンマーク放送響とニールセンの交響曲全集を録音しているが、今回のN響との演奏はあの録音を上回っているのではないか?オーケストラのレベルはN響の方が上だろうし。音色が深く濃く、ヴィヴィッドでエキサイティングな音楽に仕上がっていたのは、コンサートマスターを務めた川崎洋介氏のリードもあるのかもしれない。

 

ルイージは現在、デンマーク放送響、米国のダラス響、そしてN響のシェフを務めるという多忙さであるが、オペラからは少し遠ざかっているということになる。余談だが、ダラス響のシェフは全米でもトップクラスの報酬のはず。

 

総合評価:★★★☆☆