〈コンポージアム2024〉マーク=アンソニー・ターネジの音楽を、東京オペラシティコンサートホールにて。
ポール・ダニエル(指揮)
東京都交響楽団
ストラヴィンスキー:管楽器のサンフォニー(1920年版)
シベリウス(ストラヴィンスキー編):カンツォネッタ op.62a
ターネジ:ラスト・ソング・フォー・オリー(2018)[日本初演]
ターネジ:ビーコンズ(2023)[日本初演]
ターネジ:リメンバリング(2014-15)[日本初演]
英国の作曲家、マーク=アンソニー・ターネジ(1960〜)の名前は知っていたが、実際に曲をじっくり聴くのは初めてである。この人の名前を知っていたのは、ラトルと親しく、彼がよく演奏していたからかもしれない。この日演奏されたラスト・ソング・フォー・オリー、リメンバリングはラトル指揮ロンドン響により初演されているし、リメンバリングの作曲にあたって編成からヴァイオリンをなくしたら、と提案したのはラトルだそうだ。
前半に演奏されたストラヴィンスキーとシベリウス(ストラヴィンスキー編曲)は管楽器の使い方が独特であるが、これがターネジに影響を与えているということのようだ。管楽器のサンフォニーは比較的よく演奏されるが、1920年版と1947年版の違いはよくわからない。
今回演奏されたターネジ作品を聴いて感じるのは、ジャズやポップスからの影響、というかそれらが普通に取り入れられている点。作曲者自身、芸術音楽が特定の階級の選ばれた人たちのものではないという考えがあるらしい。1曲目のストラヴィンスキー作品に通じるような管楽器のダイナミックな使用法は独特であり、「ビーコンズ」などはまるでジャズのビッグ・バンドを聴いているようである。
「ラスト・ソング・フォー・オリー」の「オリー」は英国の作曲家・指揮者であったオリバー・ナッセン(1952〜2018)のことである。ナッセンが来日して自作や武満を指揮したのを聴いたことがあるが、熊のような巨漢で杖をついていたのを覚えている。そのナッセンへの追悼作品、速すぎない適度なテンポなのだが、ターネジの作品はアップテンポでぐんぐん進んで行くものは少ないのだろうか。どこかほのぼのとしたところがあり、また聴いてみたいと思わせる音楽である。
最後に演奏された「リメンバリング」も、ジャズ・ギタリストであるジョン・スコフィールドの早世した息子を追悼するために書かれた作品で、4楽章から成り30分ぐらいかかるそれなりの大作。第2楽章がゆったりしていて、第3楽章がスケルツォと、まるで交響曲のようだ。第4楽章はもともとピアノで書かれたということで、確かにピアノで演奏されるテイストの作品だ。
ターネジの曲はいずれもわかりやすく、現代音楽にありがちな、人を寄せ付けないような冷たさがないのがよい。
指揮は英国のポール・ダニエル。録音で聴くラトルの演奏に比べると、キレキレ感は薄めだ。都響は普段定期演奏会などで見る顔が少ないような気がした。ターネジ作品は弦14型、リメンバリングはヴァイオリンを欠きヴィオラ12、チェロ10、コントラバス8。会場は3階席が売られておらず、やはりそれほどは入っていない。
作曲者が臨席していたが、ブルーのスーツにハットを被り、いかにも英国人という出で立ちだ。
総合評価:★★★☆☆