アスミク・グリゴリアン ソプラノ・コンサートを、東京文化会館大ホールにて。

 

指揮:カレン・ドゥルガリャン

東京フィルハーモニー交響楽団

 

ドラマティック・アリアの夕べ

【第一部】

アントニン・ドヴォルザーク作曲

―歌劇「ルサルカ」

序曲

“月に寄せる歌”

ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲

―弦楽のためのエレジー「イワン・サマーリンの思い出」

―歌劇「エフゲニー・オネーギン」

タチアーナの手紙の場 “私は死んでも良いのです”

ポロネーズ

―歌劇「スペードの女王」

“もうかれこれ真夜中...ああ、悲しみで疲れ切ってしまった”

アルメン・ティグラニアン作曲

―歌劇「アヌッシュ」

“かつて柳の木があった”

 

【第二部】

アラム・ハチャトゥリアン作曲

―「スパルタクス」

スパルタクスとフリーギアのアダージオ

リヒャルト・シュトラウス作曲

―楽劇「エレクトラ」

クリソテミスのモノローグ “私は座っていることもできないし、飲んでいることもできない”

―楽劇「サロメ」

七つのヴェールの踊り

サロメのモノローグ “ああ! ヨカナーン、お前の唇に口づけをしたわ”

 

後半をプッチーニで固めた1日目(ロマンティック・アリアの夕べ)に続く2日目は、後半がR・シュトラウス。グリゴリアンが一昨年鮮烈な日本デビューを飾ったサロメで締めくくられた。2日間通して聴いた結果、やはり最後のサロメが圧巻であったと思う。

 

前半は前回と同じプログラムでドヴォルザーク、チャイコフスキー、そしてアルメニアの作曲家ティグラニアン。どれも見事なのだが、彼女が十八番としているタチアーナの歌う手紙の場は、幅広い音域にわたって声がまんべんなく出ていて安定感が抜群である。

 

後半のエレクトラではクリソテミスのモノローグが披露されたが、グリゴリアンはこの役を2020年のザルツブルク音楽祭で歌っているのだ(ヴェルザー・メスト指揮ウィーン・フィル)。ただ、つい先日東京春音楽祭であのすごいエレクトラを聴いたばかりなので、そこまでのインパクトが感じられなかった。これは、オケが12型と薄めなのと、指揮が四角四面で躍動感が感じられなかったことによるだろう。

やっぱり一番インパクトがあったのはサロメで、歌っている表情はコケティッシュで、声は強靱で揺らぎが全くないのはさすがである。一昨年のノット指揮東響のあのサロメの感動が思い起こされた。

 

アルメニアの指揮者、カレン・ドゥルガリャンは1日目に続いて病的な感じである。前半のロシア、東欧系の作品や、後半1曲目、アルメニアの作曲家ハチャトゥリアンの曲は大味ながらもダイナミックな音楽作りでそれなりに聴かせたのだが、R・シュトラウスはやや違和感あり。前述の通りエレクトラはゆとりがないし、サロメの7つのヴェールの踊りもちょっと重いし、サロメのファイナルシーンももう少し官能性が欲しいところだ。

 

1日目のロマンティック・ナイトもそうだったが、2階以上の席にかなり空席が目立つ。

 

総合評価:★★★☆☆