NHK交響楽団第2010回 定期公演 Aプログラム1日目を、NHKホールにて。

 

指揮:ファビオ・ルイージ

 

パンフィリ/戦いに生きて[日本初演]

レスピーギ/交響詩「ローマの松」

レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」

レスピーギ/交響詩「ローマの祭り」

 

N響首席指揮者、イタリア人ルイージによるレスピーギのローマ三部作と、その前に現代イタリアの作曲家、パンフィリの日本初演曲。

 

冒頭に演奏されたパンフィリ、てっきりレスピーギと同時代だと思っていたのだが、普通に意欲的な現代作品。ルイージが初演したそうだ。ただ、開始直前にプロントでビールを飲んだのが災いし意識がもうろうとしよく覚えていないのが残念。なんとこの曲のために作曲者が会場に来ていた。

 

2曲目はローマの松。個人的には祭りよりも松を最後に演奏して欲しかったところではあるが。N響の輝かしい音色とアンサンブルにより、地味なNHKホールが陽光降り注ぐ夏のローマの気配となった。休憩を挟んで演奏されたローマの噴水、ローマの祭りとも、ルイージの熱く推進力あふれる指揮によって迫力満点の演奏に仕上がっていたと言える。

ルイージはイタリアのジェノヴァ出身ながら独墺系のレパートリーが主であり、イタリアの作曲家の作品を振ることは少ない。レスピーギも、今まで演奏する機会はあまりなかったのではあるまいか。N響では2004年に「ローマの噴水」を振ったのを聴いたことがあるだけだし、録音を探してみても2012年にスカラ・フィルを振った「ローマの祭り」のライヴ映像があるくらいだ。ルイージも65歳、自身のルーツであるイタリア音楽に立ち返り始めたのだろうか。2022年9月の就任記念演奏会におけるヴェルディのレクイエムも素晴らしかった。

パイプオルガンを間近に聴くことができる席だったのだが、ローマ三部作は噴水を含む全ての作品にオルガンが登場するのである。実に壮大で気持ちいい。「アッピア街道の松」におけるバンダは、そのオルガンがあるバルコニーと、その反対側のカメラが置いてあるバルコニーでの吹奏。オルガンと反対側のバルコニーでは、奏者2名が出てくるとカメラが引っ込んでしまった。チルチェンセスにおけるバンダも同様、オルガンのあるバルコニーに配置。

こういう色彩感豊かな曲を演奏したときのN響の底力は半端ではない。オーボエ首席は見知らぬ顔だったが、ネットで拾うと、フランクフルト・ブランデンブルク州立管弦楽団の首席である中村周平氏とのこと。派手さはなく、実直なスタイルの演奏である。オーボエとともに目立っていたチェロの首席、こちらも客演ながらどっかで見た顔だと思っていたら、札幌交響楽団の首席、石川祐支氏とのこと。

 

まあ、レスピーギのローマ三部作は誰が指揮してどのオケが演奏してもそれなりに盛り上がる超名曲ではあるが、ルイージとN響という超一流のコンビで聴けるのは幸せである。

会場はかなり埋まっていて、休憩中のトイレは男女とも長蛇の列、そして若者が非常に多かった。吹奏楽系の学生ということか?

 

総合評価:★★★★☆