東京春祭プッチーニ・シリーズ vol.5《ラ・ボエーム》(演奏会形式/字幕付)(14日公演)を東京文化会館大ホールにて。
指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
ロドルフォ(テノール):ステファン・ポップ
ミミ(ソプラノ):セレーネ・ザネッティ
マルチェッロ(バリトン):マルコ・カリア
ムゼッタ(ソプラノ):マリアム・バッティステッリ
ショナール(バリトン):リヴュー・ホレンダー
コッリーネ(バス): ボグダン・タロシュ
べノア(バス・バリトン):畠山 茂
アルチンドロ(バリトン):イオアン・ホレンダー
パルピニョール(テノール):安保克則
管弦楽:東京交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
児童合唱:東京少年少女合唱隊
合唱指揮:仲田淳也
児童合唱指揮:長谷川久恵
舞台監督:金坂淳台
プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》(全4幕)
正直あまり期待していなかった公演ながら、ふたを開けてみれば東京・春・音楽祭2024年のなかでも出色の出来。いや、実に素晴らしい公演。感動した!
歌手たちが無名だし、指揮者もそこまで著名ではないし、2回公演があったということもあり、客席の入りはちょっと残念で6割強といったところだろうか?
若い独唱者たちのレベルが高い。ほんとに素晴らしい歌手たちである。
私の一番のお気に入りはムゼッタ役の黒人歌手、マリアム・バッティステッリ。エチオピア出身イタリア国籍の歌手で、細身の美人である。声に若干の硬さがあるものの、ぽーんと突き抜けるようなインパクトの強い発声で、こんなにはっきりとした声のムゼッタを聴いたのは初めてだと思う。
ロドルフォを歌ったのはステファン・ポップ、ルーマニア出身のテノールである。やや荒削りではあるが能天気なくらいの明るい声は快感。ミミ役セレーネ・ザネッティは2年前の東京春祭のトゥーランドットでリューを歌っている人で、深く温かみのある声が魅力。
ムゼッタのパトロンであるアルチンドロ役はなんとイオアン・ホレンダー御年88歳!ウィーン国立歌劇場元総裁、東京春祭のアドバイザーである。直前までこの人が出演することは発表されておらず、直前の発表はサプライズであった。さすがに声は他の歌手に比べると弱く、彼だけが譜面台を見て歌っていたのだが。ショナール役のリヴュー・ホレンダーは名前からわかるとおり、彼の息子である。
オーケストラは東京交響楽団。こういう曲をやると、その音色が艶やかで美しいことがよくわかる。実にファンタスティックな音色だが、14型(Cb7)のサイズでステージ上での演奏なので、非常にシンフォニックで鳴りっぷりが素晴らしかったのだ。指揮のモランディがまた切れ味よく情感あふれる指揮で聴き応え抜群。第2幕は最高だ。東京オペラシンガーズの力強く生き生きとした合唱、東京少年少女合唱隊の統制が取れた合唱により音楽がこれ以上ないぐらいに引き締まっていた。東京少年少女合唱隊の子どもたちはぬいぐるみなどおもちゃを持って登場し、最後は音楽に合わせて旗を振っていた。
今回は演奏会形式とはいえ、ちゃんと振り付けがあったので場面の想像が容易であった。屋根裏部屋のシーンではステージ前方にテーブルと椅子が用意されていた。イオアン・ホレンダーを除き歌手たちは全て暗譜での歌唱。
東京文化会館にしては少しエコーがかかっていたように思われたが、PAが使用されていたのだろうか?
東京・春・音楽祭のオペラ公演はやはり非常にレベルが高い。ムーティ指揮のアイーダやヴァイグレ指揮のエレクトラも楽しみである。
総合評価:★★★★★