東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.11 ブルックナー《ミサ曲第3番》生誕200年に寄せて

を、東京文化会館大ホールにて。

 

指揮:ローター・ケーニヒス

ソプラノ:ハンナ=エリーザベト・ミュラー

メゾ・ソプラノ:オッカ・フォン・デア・ダメラウ

テノール:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー

バス:アイン・アンガー

管弦楽:東京都交響楽団

合唱:東京オペラシンガーズ

合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩

 

曲目

ワーグナー:ジークフリート牧歌

ブルックナー:ミサ曲 第3番 ヘ短調 WAB28

 

東京・春・音楽祭のプログラムが公表されたとき、この公演と坂本姉妹のデュオが同時刻であることが判明し、どっちに行くべきか迷ってしまった。数名のクラオタ友人にその話をしたところ、「そんなんブルックナー一択じゃね?」と言われて本公演を購入したのだが…正しい判断だったか正直わからないところ。

地味なプログラムとあって、東京春祭にしては客の入りが少なく、大ホールは半分程度の入りだろうか。ブルオタが多いのだろうと思っていたのだが、真のブルオタは同時刻、下野指揮日本フィルの交響曲第3番(サントリーホール)の方に集結していたようだ。

今年はブルックナー生誕200年。わが国では年がら年中ブルックナーが演奏されているが、ミサ曲はなかなか演奏されないので、その点ではいい企画である。

 

前半のジークフリート牧歌は弦が8-6-4-4-2。この曲をワーグナーがトリプシェンで初演奏したときはもっと少なかったはずである。文化会館の明晰でややデッドなサウンドで聴いても、この曲は感動的だ。

後半のブルックナーのミサ曲第3番。1時間近いブルックナー作品としては、交響曲に比べて演奏頻度が少ないのは編成の問題もあるだろうが、生真面目なブルックナーの性格がそのまま出たような、曲の地味な印象もあるかと思う。私自身、実演で聴くのはこれが初めて。いい曲ではあるが、そこまで没入できなかったというのが正直な感想だ。ミサ曲はもう少しアコースティックな豊かなホールの方がいい。

とはいえ歌手陣はなかなかの人たちがそろっていて、ハンナ=エリーザベト・ミュラーやアイン・アンガーの東京春祭の出演は本公演のみという贅沢さである。合唱は力強いが、ミサ曲としてはやや強すぎる気もしないではない。

弦は16型ということで合唱まで入れると相当な人数でかなりの音圧であった。

 

総合評価:★★★☆☆