ルドルフ・ブッフビンダー(ピアノ)ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 全曲演奏会 III を東京文化会館小ホールにて。

 

ベートーヴェン:

 ピアノ・ソナタ 第3番 ハ長調 op.2-3

 ピアノ・ソナタ 第19番 ト短調 op.49-1

 ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 op.81a《告別》

 ピアノ・ソナタ 第7番 ニ長調 op.10-3

 ピアノ・ソナタ 第28番 イ長調 op.101

(アンコール)

 ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13《悲愴》 より 第3楽章 Rondo: Allegro

 

ブッフビンダーのベートーヴェン ピアノ・ソナタ全曲演奏会の3日目。

 

1日目、2日目と、曲によるムラ、出来不出来が少なかったのだが、この3日目に来て少し出来不出来が大きくなってきた。もともと、ブッフビンダーはいいときと悪いときの差が大きいというのが私の認識で、2016年すみだトリフォニーホールにおけるリサイタルはかなり散漫な印象であった。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12135740068.html

今回の3日目、3番の終楽章で大きなキズがあったのはともかく、後期の26番とか28番で粗さが目立ったのは残念。26、28番はせかせかと急いでいるようなところがあったのと、音の濁りが気になった。1日目、2日目はあまり感じられなかったことである。まさか、ベートーヴェンの達人であるブッフビンダーのペダリングに問題があるとは思えないのだが。

 

一方で19番や7番は比較的安定していた。ブッフビンダーのウィーンらしいタッチと柔らかい音色は、初期。中期の作品に特に適性を示しているようだ。実際、アンコールで演奏された悲愴の第3楽章は素晴らしいものであった。

個人的に32曲のなかで最も好きな後期の28番がちょっと不満足な出来だったのは残念。

 

素人の私は、ベートーヴェンのソナタは初期ですらかなり技術的に難しいものが多いと思っているのだが、やはり評価が最も高い後期のソナタは、技術的にもさらに深化しているし、単に技術だけでは片付けられない難しさがあるということだろう。

77歳という高齢で3日連続の演奏会ということで、巨匠もだいぶお疲れだったと思うが、1日空けての4日目からの復調を期待したい。

 

総合評価:★★★☆☆