東京都交響楽団第994回定期演奏会Bシリーズを、サントリーホールにて。

 

指揮/エリアフ・インバル

語り/ジェイ・レディモア*

ソプラノ/冨平安希子*

合唱/新国立劇場合唱団*

児童合唱/東京少年少女合唱隊*

 

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番 変ホ長調 op.70 

バーンスタイン:交響曲第3番《カディッシュ》*(日本語字幕付き)

 

インバルが全集を録音しているショスタコーヴィチの交響曲のなかでも、最も軽い9番と、後半はユダヤ人であるインバルのアイデンティティを確認するかのような、バーンスタインの作品。

 

前半のショスタコーヴィチの9番、これが超絶的名演であった!交響曲第9番は壮大な大作になるだろうという大方の予想を裏切って作曲者が書いた諧謔的で軽めの作品なわけだが、今回の演奏は非常に重厚感があり、圧倒的な推進力を持っていて、誰もが納得せざるを得ない、有無を言わせぬ迫力があったのだ。もちろん、この曲が持つコミカルな要素も維持しつつ、である。

都響の密度の濃い響きが、インバルの解釈にまさに合致している。トロンボーンの音がまた心地よい。16型。

この曲、インバルはウィーン響と録音しているのだが、ウィーン響よりも都響の方が格段にレベルが上であり、今回の都響との実演の方がずっとよい。

 

後半はバーンスタインのカディッシュ。8年前にも、インバルは都響でこの曲を取り上げているが、そのときのナレーションはピサール版。もとのナレーションはバーンスタイン自身によるものだが、バーンスタインはそのテキストに満足していなかったらしく、ピサールにテキストを依頼したとのことだ。8年前はピサール版で、ナレーションはピサールの妻と娘。正直、ほぼ何も覚えていない。

https://ameblo.jp/takemitsu189/entry-12143184069.html

今回の公演、もともとピサール版が予定されていたが、妻と娘が来日できないとかで、バーンスタインのオリジナルのテキストになった。正直、あまり政治的なテキストを芸術作品に織り込むのはどうかと思っているので(それを言い出すと、「バビ・ヤール」などかなり政治的ではあるのだが)、バーンスタインのオリジナルのテキストの方が個人的にはよいと思っている。

さて今回の演奏。前半に比べるとちょっと残念な演奏だった。この曲は自作自演が結局のところ一番説得力があると思うのだが、今回の演奏はリズムが重くバーンスタインらしさがちと弱い。そして、新国立劇場合唱団がいつもに比べると粗い…そして、レディモアのナレーションがあまり心に響かなかった。ときとしてヒステリックに聞こえたというのもある。ナレーションにPAを使用するのは当然なのだが、そのせいかオーケストラまで残響過多に聞こえる結果に…

ただ、そうは言っても都響はいい仕事をしていたと思う。16型。Pブロックに合唱団がかなりの人数配置されていた。

 

この日はインバルさんの88歳のお誕生日ということで、楽団から花束が贈呈された。

 

総合評価:★★★☆☆