エリアフ・インバル指揮東京都交響楽団プロムナードコンサートNo.406を、サントリーホールにて。

 

ブラームス:大学祝典序曲 op.80   

ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 op.93           

ドヴォルザーク:交響曲第8番 ト長調 op.88

 

88歳の巨匠、都響桂冠指揮者エリアフ・インバルが2022年12月の第九以来都響に客演。超名曲プログラムであるということもあって完売である。

 

ステージで出てくるときは今でも小走りだし、指揮姿も非常に元気で腕も上がっているし、88歳という年齢を考えると驚異的である。つい先日亡くなった小澤さんは享年88歳だったわけだが、もし彼が晩年健康だったなら、最近まで指揮をしていたかもしれなかったな、などと考えるとつくづく残念である。どんな職業でもそうだが、やはり健康というのは本当に大事だ。

 

前半はインバルが都響でたびたび取り上げて来たブラームスとベートーヴェン、ドイツ音楽の王道である。

考えてみれば、インバルはかつてフランクフルト放送響、ベルリン・コンツェルトハウス管などのドイツのオーケスラのシェフを務めていたわけだからドイツ音楽は当然に上手いわけであるが、今回も実にフォルムが明確で重厚、鳴りっぷりのよいブラームスとベートーヴェンであった。ともに16型という編成、都響の密度の濃い弦セクションを豪快に鳴らして、確固たる自信に満ちあふれた音楽を作り上げている。

インバルはどこのオーケストラともベートーヴェンの交響曲全集を録音していないのだが、私が知る限り都響とはすでに3番から9番の交響曲を演奏している。8番を16型という大編成で演奏するのは最近の潮流とは別の路線であり、こういう演奏も悪くない。というより、個人的にはそろそろこういうスタイルが懐かしく感じられるようになってきた。インバルのベートーヴェン、演奏スタイル予想通りであったが、テンポは予想よりは遅めであった。

 

後半はドヴォルザーク8番。旋律をしっかりと歌わせているものの過度にはならず、前半のドイツ音楽の延長にある、非常に重厚感ある太い響きがするドヴォルザークである。第1楽章終わり近くでタクトが飛んでしまったために、第1楽章終わって少しだけパウゼが入ったものの、第2楽章以降は楽章間のパウゼはなくアタッカで演奏されていた。インバルは交響曲を演奏する際に、流れをよくするためなのか、よくこのやり方をする。

第2楽章冒頭の弦のふわっとした表情、とことん音量を抑えた繊細な響き、第3楽章の哀愁を帯びた旋律の甘過ぎない歌わせ方など、それなりに細かいところまで指示が行き届いていたように思われる。後半も16型。

 

どういうわけか、どの曲でもかなり早い拍手をする聴衆がいたが、いったいなんなんだろうか。

 

総合評価:★★★★☆