チャイコフスキー「エウゲニ・オネーギン」を新国立劇場オペラパレスにて(2月3日千秋楽)。

【演 出】ドミトリー・ベルトマン

【指 揮】ヴァレンティン・ウリューピン

【合唱指揮】冨平恭平

【合 唱】新国立劇場合唱団

【管弦楽】東京交響楽団

【タチヤーナ】エカテリーナ・シウリーナ

【オネーギン】ユーリ・ユルチュク

【レンスキー】ヴィクトル・アンティペンコ

【オリガ】アンナ・ゴリャチョーワ

【グレーミン公爵】アレクサンドル・ツィムバリュク

【ラーリナ】郷家暁子

【フィリッピエヴナ】橋爪ゆか

【ザレツキー】ヴィタリ・ユシュマノフ

【トリケ】升島唯博

【隊 長】成田眞

 

なんと個人的には8ヶ月振りとなる新国立劇場。かつては新国立劇場のほぼ全てのオペラを観ていたのだが、最近どうも以前ほどの感動がなくなって足が遠のいてしまっていた。

今回の演目は「エウゲニ・オネーギン」。新国立劇場2019年の新制作であったが、2019年は観ていなかったので自分にとっては今回が初となる演出だ。

 

最終日でこなれていたということもあるのだろうが、非常に満足度が高い公演であった!

 

よくぞここまでたくさんロシア人歌手を呼んだものである。西側で活動している歌手が多いのかもしれないが。ずば抜けた存在感がある歌手はいなかったとはいえ、割とレベルが高い。

私が一番気に入ったのはレンスキー役ヴィクトル・アンティペンコで、ドラマティックな表現に長けておりこの役にふさわしい。タイトルロールのユーリ・ユルチュクは長身で貴族的な雰囲気を醸しており、歌唱も落ち着いていて、シニカルでちょっといやな奴というこの役に合っている。なんでもこの人、アメリカで金融機関に勤務していたそうな。タチヤーナ役エカテリーナ・シウリーナ、悪くはないが少女時代の清新さと公爵夫人の高貴さの描き分けがもう少し欲しかった。オリガ役アンナ・ゴリャチョーワはかなり低音が効いた独特な声。そして、グレーミン公爵アレクサンドル・ツィムバリュクの深くおおらかな声が素晴らしかった。このオペラを観たときいつも思うが、本当にこのグレーミン公爵は役得。年をとってから若い嫁をもらった喜びを歌ったこのアリアのみが出番だが、観客の関心と感動を一気にかっさらう美味しいアリアである。ちなみにこのアレクサンドル・ツィムバリュク、パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響「ドン・ジョヴァンニ」の騎士長役。

 

新国立劇場らしい極めてオーソドックスなステージで、演出も奇抜なところはない。なんでもこのベルトマンの演出は、コンスタンチン・スタニスラフスキーの演出を元にしているそうだ。興味深いのは、タチヤーナだけでなく、レンスキーとオネーギンにも手紙を書くシーンが用意されていた点だろうか。

 

そして、今回素晴らしかったのはオーケストラ(東京交響楽団)。冒頭から気品がありしっとりとした音で、新国立劇場のピットで聴ける音としてはかなりのハイレベルであり、豊麗に鳴る弦の艶のある音が非常に心地よく、管楽器の伸びやかな響きも絶品だ。ピットの床はやや低めに設定されていたように見えた。

指揮はロシアのヴァレンティン・ウリューピン。非常にバランスがよい指揮である。第2幕第1場のワルツと、第3幕第1場のポロネーズ。管弦楽曲単体としては優雅に演奏されることが多いこの2つの曲だが、ウリューピンはしっかりと描き分けをしていて、前者は田舎の地主たちの踊りゆえどこか垢抜けない安っぽい雰囲気を醸し出し、後者はサンクト・ペテルブルクの貴族の舞踏会ゆえの高貴さと華やかさを表現していたといえる。

 

最終日ということもあるのだろうか会場は満席に近い。14時開演で、17時5分終了予定が、17時15分ごろの終了。休憩は第2幕第2場(決闘シーン)の前に20分。

 

総合評価:★★★★☆