札幌交響楽団 第658回定期演奏会2日目を、札幌コンサートホールkitaraにて。

 

指揮 / マティアス・バーメルト(首席指揮者)

テノール / イアン・ボストリッジ

ホルン / アレッシオ・アレグリーニ

 

ブリテン:セレナード~テノール、ホルンと弦楽のための

ブルックナー:交響曲第6番

 

この3月に退任する札響首席指揮者、マティアス・バーメルトによる任期中最後の定期演奏会。このあと同一プログラムが東京のサントリーホールにて披露されるが、kitaraでの定期はこれが最後である。

スイスの指揮者・作曲家であるマティアス・バーメルトは現在81歳。作曲をピエール・ブーレーズとカールハインツ・シュトックハウゼンに、指揮をジョージ・セル、レオポルト・ストコフスキに学んでいる。1992年〜1998年にはルツェルン音楽祭の音楽監督を務めていた人だ。

 

さて前半は先日トッパンホールにて素晴らしいリサイタルを聴かせたイアン・ボストリッジとアレッシオ・アレグリーニが登場。実に豪華だ。傑作ながら、編成のせいかなかなか演奏機会が少ないブリテンのセレナード。

素晴らしい…アレグリーニの変幻自在のホルン、かすかな音からホールを揺るがす音量まで完璧に操る。テノールとのかけ合いも、決して邪魔をしないのだが存在感は抜群だ。

そしてボストリッジの声…頭のてっぺんからすうっと出てくるかのような彼のしなやかな声は、本当にブリテンの曲にぴったりだ。ブリテンは生涯の伴侶であったテノール歌手ピーター・ピアーズのあの素晴らしい声を想定して曲を書いているはずなのだが、そのピアーズの声とも全然違う素晴らしさなのだ。参考までに、ピアーズの声は録音で聴くことができる(デニス・ブレインのホルン、ユージン・グーセンス指揮ロンドン新響/バリー・タックウェルのホルン、作曲者指揮ロンドン響)。

そのボストリッジの声、第2曲「パストラル」の冒頭からもうぞくぞくするわけだが、そうした繊細な歌唱も素晴らしいし、第6曲「賛歌」における躍動感、そして歌唱技術がすごい。ボストリッジは曲間で咳をしていたし、やや高域で苦しげなところもあったのだが、全体としてはほぼ完璧な歌唱だった。

オーケストラは10型(Cb3)。ブリテンの音楽の濃密さよりも、やや軽やかな感が強かっただろうか。

 

後半はブルックナー6番。バーメルトのブルックナーといえば、2021年の定期で聴いた7番の名演が記憶に新しい。今回の6番はあの演奏には匹敵しないが、バーメルトの手堅いアプローチによる佳演であった。

この曲としてはテンポがやや遅めで、推進力はまずまず。メリハリよりも、ゆったりとした流れを重視した演奏である。木管の響きが美しい。第2楽章はことのほか遅く、第2主題もかなりゆったりと歌わせており、間延びする一歩手前か。第4楽章はだいぶ力強さが増し、テンポも速めになったが、エンディングに向けて高揚する感覚はなかった。

弦は14型(Cb7)。

終演後、最後の定期ということだろう、次席コンサートマスターを務めていた会田莉凡さんから花束が渡された。

最後の定期ではあったが、客席の入りはそれほどよくはなく7割程度か?初日はどうだったのかわからないのだが。後半は1階客席にアレグリーニとボストリッジの姿あり。

 

総合評価:★★★☆☆