第2000回 定期公演 Aプログラム1日目を、NHKホールにて。

マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」(ファン投票選出曲)

 

指揮 : ファビオ・ルイージ

ソプラノ : ジャクリン・ワーグナー

ソプラノ : ヴァレンティーナ・ファルカシュ

ソプラノ : 三宅理恵

アルト : オレシア・ペトロヴァ

アルト : カトリオーナ・モリソン

テノール : ミヒャエル・シャーデ

バリトン : ルーク・ストリフ

バス : ダーヴィッド・シュテフェンス

合唱 : 新国立劇場合唱団

児童合唱 : NHK東京児童合唱団

 

第2000回の定期公演を記念して行われたファン投票で第1位となったマーラー「一千人の交響曲」。期待通りの感動的な名演となった。コロナ渦でなかなか上演されなくなったこの曲を久々に聴けたのは感激である。

16型オーケストラの後ろに独唱陣、そしてその後ろに150名を超える合唱と児童合唱、ということでステージは後方に拡張されていたようだ。なぜか、ステージサイドの壁が大きく開けられていた(私の座席からだと左手しか見えなかった)のだが、換気のためだろうか?第一部、第二部最後に登場するバンダは2階R側にいたようだ(これも、私の座席からは全く見えなかったのだが)。

 

いつもながら指揮棒を持たなくなったルイージ、さすがにこれだけの人数だと後方の独唱・合唱に見えるようにということだろう、振りがかなり大きかったように見える。予想通り、やや速めのテンポで非常にメリハリが効いた表現で、第一部後半からテンポを急激に上げて緊張感を出していたし、第二部冒頭のオーケストラのみで進行する部分も、かなりの陰影が施されている。これだけの大人数でも安全運転にならないところはさすがだ。

 

独唱陣は特に女声のレベルが非常に高い。アルトのオレシア・ペトロヴァはルイージの就任記念演奏会(ヴェルディ「レクイエム」)にも登場していたが、あの位置で低音がはっきりと聞き取れる深みある声が見事。女声歌手はみな、安定した音程と明瞭な発声が素晴らしい。問題は重要な「マリア崇敬の博士」を歌ったミヒャエル・シャーデ。この日一番のビッグ・ネームであり、かつてブーレーズ指揮ウィーン・フィル「大地の歌」の録音などで名唱を聴かせた彼も、すでに盛りを過ぎているのは明らかで、もともときついパートであるとはいえ、高域が苦しそうで音程も不安定。彼の歌唱のときに、女性歌手たちがやや心配そうに伺っていたのが見えた…バリトン、バスは特段インパクトがないが、まずまず安定していたか。

 

100名は超えていたであろう新国立劇場合唱団、あれだけの人数でも、第二部最後「神秘の合唱」のピアニッシシモがきちんと抑えられていたのはさすが。市民合唱だとああはいかないだろう。NHK東京児童合唱団も毎度のことながら清冽かつ精確な歌唱を披露してくれた。

 

オーケストラ、コンサートマスターは篠崎史紀氏、その隣に郷古廉氏のツートップ。弦は16型。金管にもう少し輝きと奥行きが欲しかったが、木管は巨大編成の割に面白いくらいに細かい動きが手に取るように聞こえて、これは面白かった。

 

いやな予感はしていたが、最後の音が終わったあとに品のないブラボーが3階L側あたりから聞こえてきて興ざめ。未だにああいうのがいるのは残念。満員のNHKホール、終演後の拍手喝采はすごく、合唱団がいなくなったあとまでカーテンコールが続いた。

12月もすでに16日であるにもかかわらず日中は暑いぐらいの気温。それでも、終演後のホール前けやき並木のイルミネーション(青の洞窟)は冬を感じさせる。

 

総合評価:★★★★☆