読売日本交響楽団第633回定期演奏会をサントリーホールにて。

 

指揮=シルヴァン・カンブルラン

ピアノ=ピエール=ロラン・エマール

 

ヤナーチェク:バラード「ヴァイオリン弾きの子供」

リゲティ:ピアノ協奏曲〈生誕100年記念〉

(ソリスト・アンコール)

リゲティ:『ムジカ・リチェルカータ』より 第7、8曲

 

ヤナーチェク:序曲「嫉妬」

ルトスワフスキ:管弦楽のための協奏曲

 

読響前常任指揮者にして桂冠指揮者のシルヴァン・カンブルラン(1948〜)による東欧音楽を集めたプログラム。リゲティ生誕100年ということもあるが、ソリストにエマールを連れてくるとはさすがカンブルランである。

 

前半と後半の1曲目にヤナーチェクのあまり知られていない作品が演奏されたのだが、これが実にいい曲で驚き。「ヴァイオリン弾きの子供」は死んだ父親を表す独奏ソロをコンサートマスターの日下紗矢子が弾いたのだが、暗めでしっかりとしたその音色はいかにもドイツのオーケストラの音なのであった(日下はベルリン・コンツェルトハウス管のコンサートマスター)。「嫉妬」は歌劇「イェヌーファ」の序曲として作曲されたそうだが、実際にイェヌーファで聴くことができる、ヤナーチェク独特の音楽話法、そして艶のある個性的な響きのする作品だ。どちらも読響の表現力の高さがわかる演奏で、繊細さと機能性が共存。

 

2曲目に演奏されたリゲティのピアノ協奏曲、この日の自分の目当てだったわけだが、実にいい!リゲティの多くの作品同様、この曲も非常に面白くて、聴いていてわくわくするような作品である。聴いていても、非常に演奏が難しいだろうと素人でもわかるのだが、例えば第1楽章は2拍子と3拍子の同時進行。

この曲を2回録音しているエマール、卓越したテクニックと精緻な表現力はさすが。8-6-6-4-3という小編成のオーケストラと室内楽的で緊密な音楽を展開した。ただ、クラリネット奏者が持ち替えで吹くオカリナの音があまりオカリナっぽく聞こえてこなかったのは残念。打楽器が見事で特にシロフォンはすごい技術であった。

それにしても、曲目と会場が違うとはいえ、前の週にエマールのリサイタルで聴いたヤマハのピアノに比べると、今回のスタインウェイの音はやはり豊かな拡がりが感じられる。この曲で、エマールは譜めくりを伴い終始譜面を見ながらの演奏だった。

アンコールは当然リゲティ!ということで大好きなムジカ・リチェルカータを弾いてくれた。

 

最後に演奏されたのは、ルトスワフスキの「管弦楽のための協奏曲」。かっこいい曲だ。カンブルランの前の読響常任指揮者であったスタニスラフ・スクロヴァチェフスキもよく演奏した曲である。

第1楽章が始まって思ったのだが、遅い…全曲を通じて割と遅めのテンポで、正確に測っていないのだが、35分ぐらいかかっていたのではなかろうか。第3楽章はかなり長く感じられた。参考までに、小澤征爾指揮シカゴ響の録音はなんと23分!まあこれは、当時の小澤征爾の卓越したバトン・テクニックと、世界一のスーパーオケだからこそできる技なのかもしれないが。通常は30分弱ぐらいの演奏時間である。

普段聴いているテンポよりもじっくりとしたテンポ設定で演奏されたがゆえに、キレッキレ感は後退していたのだが、その分いろいろな音が聞こえていたし、新たなこの曲の良さがわかったのであった。指揮棒を使わないカンブルランの指揮によって、音楽がだいぶ柔らかく聞こえたと思う。終盤の金管群はもう少し膨らみというか、輝かしさが欲しかったところ。とはいえ、非常に満足感の高い演奏であった。

 

リゲティ以外の弦の編成は16型。

客席は後ろの方にだいぶ空きがあったようだ。もったいない。

 

総合評価:★★★★☆