キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団来日公演を、ミューザ川崎シンフォニーホールにて(21日)。
モーツァルト:交響曲第29 番 イ長調 K.201
ベルク:オーケストラのための3つの小品 Op.6
ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 Op.98
ベルリン・フィル来日公演のAプログラム。これぞベルリン・フィル!という壮絶な名演であった!
1曲目のモーツァルト。ベルリン・フィルのモーツァルトというと、毎度言及して申し訳ないがあのヘルベルト・フォン・カラヤンのレガートを多用したしなやかな演奏が記憶に残っている。それに対しペトレンコの表現は、しなやかさは保ちつつ、尖ったという表現を使うと強すぎるかもしれないうが、予想以上にエッジが効いていて、そして陰影が深い表現であった。もちろん、芯がしっかりした弦の音色はこのオケならではのもの。前日の「英雄の生涯」で聴かせた、あの鋼のような強靱な音も出せるかと思えば、モーツァルトではこうしたしなやかな音も出せるというのが、このオーケストラのフレキシブルなところである。弦は10-10-6-5-3対向配置。
2曲目はベルク。やはり、現代曲(といってもこれは100年前の作品だが)は実演で、そしてベルリン・フィルのようなスーパーオーケストラで聴くと全然印象が違うというものだ。録音だと、所詮は2チャンネルの音になってしまうが、実演だと不協和音もホール全体に拡がって素晴らしい効果を生む。
ベルリン・フィルの精妙で繊細な響きが世紀末の退廃的雰囲気を醸し出している。第3楽章の行進曲の推進力と高揚感はなかなかのもの。ハンマーは予想したよりも小ぶりなものであった。金管の重量感が実に心地よい。弦は16型対向配置。
後半のブラームス4番、この演奏には完全にノックアウトされた。第2楽章あたりで涙目になっていたかもしれない…
ベルリン・フィルが演奏するブラームス4番、2008年にラトルとの来日公演でも聴いているが、今回の方が圧倒的によい。ベルリン・フィルがこの曲を演奏すると、国際色が豊かだとはいえ、やはりこのオーケストラはドイツのオーケストラだということを痛感する。音色がシックで暗めの表情。そのうえで、充実した弦セクションが豊麗に鳴っているのである。
第1楽章冒頭のふわーっとした開始音はまさにため息。第2楽章の繊細極まりない表現が素晴らしく、ホルンのヴィブラートをかけた、「かそけき」弱音には本当にぞくぞくしてしまう。第3楽章はかなり速めのテンポで緊密な表現、ほぼパウゼなしで続けて演奏された第4楽章も第3楽章からの連続性を感じさせるやや速めのテンポだ。ジャコーのフルートのほの暗い音色が、北ドイツの曇天を思わせるような音!確か木製の楽器だったと思う。
弦は14型対向配置。14型でこれだけ濃厚で強力な音が出せるとは、いったいどういうことなのだろうか。それにしても、ステージで見ていると、ベルリン・フィルのメンバーの演奏姿勢は、コンセルトヘボウやウィーンのそれとは違うのがよくわかる。熱が入ってくるとほとんど全てのメンバーが前傾姿勢で、大きく身体を揺らして「音楽する」のがベルリン・フィルの特徴。これは、カラヤン時代の映像を見ても同じだ。
第1Vnフォルクナー、バルグリー、第2Vnティム、Vlaメイ、Vcドゥルプレール、Cb忘れました(確かサクサラ)、Flジャコー、Obケリー、Cl不明、Fgシュヴァイゲルト、Hrドール、Tpジェル、Tbラムジー、Timたぶんフォーゲル。
総合評価:★★★★★