チェコ・フィルハーモニー管弦楽団来日公演を、横浜みなとみらいホールにて。

指揮:セミヨン・ビシュコフ

 

ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調Op.88 B.163

ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調Op.95 B.178「新世界より」

(アンコール)

ドヴォルザーク:スラヴ舞曲集 第2集 Op. 72, B. 147〜第2番ホ短調

ブラームス:ハンガリー舞曲第1番ト短調

 

他の来日公演が目白押しのため、チェコ・フィルは来日最終公演を聴く。

2019年以来4年振りの来日。今回はオール・ドヴォルザーク・プロということで、「なんでまたそういうベタな企画をするかね?」と思ったものだが、実はチェコ・フィルの実演で新世界を聴くのは、なんと今回が初めてであった。

 

昔のチェコ・フィルのイメージといえば、土臭い響き、いい意味で野暮ったくて素朴、というものであったが、ロシア生まれながらアメリカに亡命し、フランス人ピアニストの妻を持つセミヨン・ビシュコフが2018年にシェフになり、だいぶ垢抜けた音のオーケストラになってきた。彼らにとって朝飯前であろうドヴォルザークの交響曲が、今回は予想以上にモダンな響きに聞こえたのだった。

私の座席からは全体が見えなかったが、弦の編成は16型だと思う(ただしチェロは何度数えても9人しかいなかった)。

 

前半は8番。自分の好みが、カラヤンの流麗で颯爽とした演奏なのだが、カラヤンに心酔しているというビシュコフの演奏は、カラヤンの演奏のイメージからは遠い。特に第3楽章、第4楽章はテンポが遅め。第3楽章は遅めでじっくりと旋律を歌わせようとしているのだが、かえって作為的に聞こえてしまう。第4楽章は遅めのテンポなので、立派で壮麗な響きがした。この曲では、特にトランペットの音色が素晴らしかった。

ちなみにこの曲、ウィーン・フィルも来日公演で採り上げる予定である。

 

後半に演奏された新世界、前の日にコンセルトヘボウ管の演奏を聴いたばかりで偶然、聴き比べをすることになった。当然ながらコンセルトヘボウ管の音色の方が洗練度合いは高かったのだが、こういう曲をやったときのチェコ・フィルのしみじみとした味わいはやはり格別。第2楽章のイングリッシュ・ホルンは実に上手く心に染みる。ホルンも安定して壮麗でいい音がする。もっとも、ノイマン時代以前のチェコ・フィルの演奏で聴くことができた、太い音でヴィブラートをかけるホルンは、もう今日では聴くことができなくなってしまった。

第4楽章の最後の音がなくなってからしばらく静寂が続いたのは実によかった。

 

余談だが、ドヴォルザークの音楽は我々日本人にすら郷愁を覚えさせるところがある。今回の2つの交響曲にも日本の歌に似たところがあって、8番の4楽章の旋律は「こがね虫」に似ているし、新世界の3楽章中間部は「雨降りお月さん」に似ている。

 

アンコール1曲目は予想通りだったが、これがまたいい演奏だった。2曲目は絶対にスラヴ舞曲第8番で元気に終わるだろうと思いきや、なんとブラームスのハンガリー舞曲第1番。これは完全に予想が外れた。次回の来日公演はブラームス・チクルス?それは深読みしすぎか。

 

総合評価:★★★★☆