ローマ歌劇場来日公演、プッチーニ「トスカ」を東京文化会館大ホールにて(24日)。

 

指揮:ミケーレ・マリオッティ

演出・美術:フランコ・ゼッフィレッリ

合唱監督:チーロ・ヴィスコ

衣裳:アンナ・ビアジョッティ

照明:マルコ・フィリベック

再演演出:マルコ・ガンディーニ

舞台美術補:カルロ・チェントラヴィーニャ

 

フローリア・トスカ:ソニア・ヨンチェヴァ

マリオ・カヴァラドッシ:ヴィットリオ・グリゴーロ

スカルピア男爵:ロマン・ブルデンコ

堂守:ドメニコ・コライアンニ

チェーザレ・アンジェロッティ:ルチアーノ・レオーニ

スポレッタ:サヴェリオ・フィオーレ

シャルローネ:リオ・ポール・シャロット

看守:ファビオ・ティナッリ

牧童:高瀬久遠

 

ローマ歌劇場管弦楽団、ローマ歌劇場合唱団

NHK東京児童合唱団

 

素晴らしい!やはり歌手がいいとここまで違うのか。そのうえ、オーケストラの濃厚かつエキサイティングな表現が実に見事であった!まあトスカはオペラとしての出来は最高峰なので、どんな公演でもそれなりに感激するのではあるが…

トスカはまさにこの歌劇場があるローマを舞台にした、24時間以内に起こった事件をストーリーとしていて、最後のシーンであるカステル・サンタンジェロの屋上には私も登ったことがある。

 

演出はフランコ・ゼッフィレッリ(1923〜2019)による極めて保守的なものであり、読み替えなど一切ない。さすがルキノ・ヴィスコンティの系譜だけあってそのステージは豪華絢爛。第1幕のサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、第2幕のファルネーゼ宮殿、第3幕のカステル・サンタンジェロ、どれも本物を観ているのではないかというくらい精緻かつ豪華に作り込まれていて、大理石などそばに行って触ってみたいくらいだ。

 

歌手について、タイトルのヨンチェヴァ、カヴァラドッシのグリゴーロについてはもう何も言うことはあるまい。

超能天気系イタリア人テノールのグリゴーロ、声量はあるし、声に色気があるし、感情過多ではないかというぐらいの演技(まあこれは鼻につくという人もいるようだが)、どれも素晴らしい。

ヨンチェヴァは昨年のリサイタル以来で、オペラのステージで聴くのは初めて。この人も結構声量はある。歌はもちろんだが、舞台姿もやはり存在感があるのはさすが大物の証か。第1幕の嫉妬深い女性のイメージ、第2幕の殺人シーンの迫真の演技、第3幕で能天気にカヴァラドッシに演技指導するときのかわいらしさ、どれも見事に演じていた。この人のサイン会があったのだが、8,000円のヨンチェヴァ写真集を買った人のみ参加権があるということだった。まあ、買わないわな…

この2人に比べるとスカルピア役のブルデンコは声量が落ちるので印象が少し弱いのだが、悪役としての存在感と演技はなかなかである。この人以前、ゲルギエフとマリインスキー・オペラで来日したときはエウゲニ・オネーギンでタイトルを歌っていた。

 

そしてこの日、オーケストラの鳴りがとてもよかったのも満足度が高い理由である。新国立劇場だと、(予算の関係からか)どうしてもオーケストラの薄さが気になってしまうのだが、極めて濃厚でこってりとした音でそのうえシンフォニック、切れ味の良さも抜群だ。「星は光りぬ」におけるクラリネットの音色も濃厚で深みがある。このオケ、割とレベルが高いと思った。

 

というわけでやはりイタリアの歌劇場のトスカはすさがだと痛感した次第。大入り袋の札が出ていたので完売だったようだ。15時開演、18時10分ごろ終演。

案の定カーテンコールで、グリゴーロは牧童役の少年、高瀬久遠君と一緒にポーズを決めたり、ファンから扇子やタオルを受け取ったりでおおはしゃぎであった。

 

総合評価:★★★★★